愛知から世界で活躍するロボット技術者をー「次世代ロボット研究所」小林准教授にインタビュー

投稿者: | 2017-02-20


「2050年にサッカーの世界チャンピオンチームに勝てる、自律型ロボットのチームを作る」———ロボットによるサッカー競技の国際大会「ロボカップ」が掲げる目標です。この「ロボカップ」ジャパンオープン2014年~2015年2連覇、2016年準優勝、チーム創立当初から世界大会3年連続出場の成績を収めた「カメリアドラゴンズ」、実は愛知県立大学のチームだということは皆さん知ってましたか?

今回はわたくし岩渕と編集長のワカメダが、昨年春に愛知県立大学で設立したばかりの「次世代ロボット研究所」へお伺いし、同研究所で研究をされている小林先生に研究内容やロボットの未来についてお話を伺いました。

小林 邦和 氏

愛知県立大学情報科学部情報科学科准教授。知能情報学や知能ロボティクスなどの人工知能分野の研究を専門とし、山口大学で教員経験を経て、2012年に愛知県立大学情報科学部の教員となる。2016年4月から新設された愛知県立大学「次世代ロボット研究所」にて、人工知能技術をロボットへ応用させる研究を開始。RoboCupジャパンオープンSPL実行委員。著作に『Reinforcement Learning, Theory and Application』(2008)などがある。

時代とともに進化するロボット技術。「次世代ロボット研究所」ではどんな研究をしているのか?

ワカメダ:まずは小林先生ご自身の研究分野についてお伺いしてもよろしいですか?

小林:現在は、わかりやすい言葉でいうと人工知能の分野の研究で、人間の脳の神経細胞をモデル化して繋げた「ニューラルネットワーク」というモデルの研究をやっています。山口大学から5年前に愛知県立大学に来たのですが、こちらに移ってきてから人工知能をロボットに応用する研究にシフトしました。

ワカメダ:それを踏まえてですが、次世代ロボット研究所ではどのような研究をされているのでしょうか?

小林:研究は大きく分けて3つあります。1つ目の研究は、例えばロボットのPepperが各家庭に1台ずついるようなイメージをしてもらうと分かりやすいかと思います。

ロボットって普通は誰に対しても同じ対応をするじゃないですか。でも人間は人によって対応が変わりますよね。友達に対してはタメ語で話すし、目上の人や上司に対しては敬語を使う。これをロボットでも実現したいなと思っています。

ロボットのPepperが並ぶ研究所の室内

ワカメダ:なるほど。残り2つの研究も教えて下さい。

小林:2つ目の研究は、1体のロボットが獲得した知識や動作を他のロボットに移植するというものです。例えば人間がスポーツをするときは筋力をつけたり、ひとりひとり個別にトレーニングしたりしなければいけません。

でもロボットは1台が知識や動作を獲得すれば他のロボットにもそれを移して応用させることができます。コンピュータのソフトも、何台にもインストールできますよね。同じようなことをロボットでもやりたいんです。

ロボットにもOSはあるのですが、ロボットが獲得した知識や動作を他のロボットでも共通で使えるように、クラウドを通して使える技術の研究をしています。ロボットが同じタイプでなくても、例えばPepperやNAOのように、形状や大きさが変わっても、共通に使えるようにする研究ということです。

3つ目の研究は、サッカーの試合などの状況で、ロボット同士が協調できるようにするというものです。例えば人間の子供がサッカーをすると、「自分がゴールを決めたい」と考えて、全員がボールを追いかけがちですよね。

それだと全然強いチームにならないので、フォワード、ミドルフィールダー、ディフェンダー、キーパーと全員が役割分担をして、協調しながらシュートを決めるというチーム全体の目標を達成しなければなりません。

チームが協調してひとつの目標に向かっていく、そのための仕組みを作るというのが3つ目の研究です。

ロボカップ2017名古屋世界大会半年前イベントで注目を集めた愛知県立大学のロボット

ワカメダ:先日、ロボカップ2017名古屋世界大会半年前イベントにブースを出展されていましたが、それも研究の一環なんですか?

小林:そうですね。ロボカップのプロジェクトはどちらかというと学生主体のプロジェクトです。研究のモチベーションにも繋がりますし、積極的に取り組んでいます。

日本全体でも需要が高まるロボット産業。「次世代ロボット研究所」で愛知から優れた人材を育成する!

2016年4月に設立されたばかりのまだ新しい研究所

ワカメダ:ありがとうございます。ちなみに、こちらの次世代ロボット研究所ができた経緯というのはどういったものだったんですか?4月にできたばかりとお伺いしましたが。

小林:県立大学ですので、時代の流れと、県の流れにも沿って作られたというのがもともとの経緯ですね。愛知県は長年にわたって自動車産業と航空産業に力を入れており、3年前からは第三の柱としてロボット産業にも力を入れているんです。

ロボット産業に従事する人材が必要になって来るので、人材育成のためにこちらの大学で研究所を作った方がいいのではないか、ということで設立されました。

ワカメダ:そうだったんですね。では、県からの支援にも力が入っているのでは?

小林:県だけでなく国もロボット産業に従事する人材を育てるという方針になっています。そのような人材が愛知県内だけではなく全国で不足するということは、もう何年も前から言われていることなんです。

人材はすぐには育てられないので、早めに手を打って育てる必要があります。愛知県立大学の情報科学部では、ハードウェアそのものというよりも、ロボットの中身のIT技術を使って賢く動かす仕組みというものを研究しています。

「次世代ロボット研究所」の注力分野とは?


ワカメダ:現在、次世代ロボット研究所で最も注力している技術はどんなものですか?

小林:私の研究室では、例えばロボットサッカーの分野だと、先ほど言った「協調」ですね。複数のロボットが協調して、自分の役割をその場の状況に応じて決めるということです。

人間のサッカーだと、フォワードが怪我したら別のリザーブのフォワードが出場しますが、ロボットだと台数が決まっていてリザーブはいないので、一台フォワードのロボットがいなくなれば、攻撃力は落ちますよね。

攻撃的に行こうと思ったら、ディフェンダーをフォワードに持ってくるというような役割分担を臨機応変にできるようにするんです。

ワカメダ:将棋じゃないですけど、いろいろな動きがデータ化されたものを応用させていくんですか?

小林:基本的な動きや、どういった要素が必要なのかはあらかじめ獲得させておかなければいけないのですが、あるロボットがいなくなったときにどのロボットがいなくなったのか、どんな攻撃をしているロボットがいなくなったのか、フィールドに残されたロボットの中で自分が果たすべき役割は何か、どのようにすればチーム全体が協調して一つの目標に向かっていけるかなど、難しいんですけどその知能を作っています。

ここに入っている研究室は3つあり、私の研究室と、画像処理系の研究室と、車輪型のロボットをはじめとするハードウェアの研究をしている研究室があります。

ワカメダ:3つの研究室を合わせて、次世代ロボット研究所になっているんですね。新しくできたばかりの研究所ですし、結構人気なのでは?

小林:そうですね。ここで何かやってみたいという学生は多いと思います。

「ロボットは怖くない」—— 小林准教授が語る、私たちが知っておくべきロボットの未来


ワカメダ:今後、技術がどんどん発展していき、ロボットが生活に身近になっていくと思います。今後の技術発展に対して私たちが知っておくべきことはありますか。

小林:ロボットに対してあまり恐怖を持って頂きたくないと思っています。まだまだロボットに触れたことのない人や、あまり直に見たことがない人は、ロボットが怖いというイメージを持っている人は多いはず。Pepperなどは可愛らしいフォルムや顔で親近感が湧くかもしれませんが、それ以外の産業ロボット、例えばアーム型のロボットを見ると怖いと感じる人も多いのではないでしょうか。

ワカメダ:僕もそうですが、イメージとしてはターミネーターのような、「人工知能を持ったロボットが世界を征服するかもしれない」みたいなイメージがついつい先行してしまいます。

小林:そのような世界が来るのは相当先のことなんですよ。囲碁や将棋の世界では人間に勝った例もありますが、あれは囲碁や将棋の世界だけなんです。人間だと、囲碁も打てれば、別のことも出来ます。囲碁のロボットの人工知能だと本当に囲碁しかできないので、料理を作ってと言ってもできないし、物を持ち上げることもできない。

特定の課題に特化した人工知能の開発は現在盛り上がっているのですが、全般的な能力を持った人工知能というのは、お掃除ロボット・ルンバを開発したロボット研究者のロドニー・ブルックスによると、500年先にならないとできないと言われています。

ワカメダ:500年先とはほぼ不可能に近いですね。

小林:そうなんです。なので、ロボットは怖くない。ロボットを作る側でも、しっかりと安全基準を守っていますからね。おそらく、自動車がはじめて現れた頃って、「怖い」と思った人はたくさんいたと思います。運転して人にぶつかったりしたら大変だと思ったり…。今はその当時と似ているかなと思います。

ロボットが出始めて、人間に危害を加えるのではないか、人間を支配するのではないかと思っている人がいると思うのですが、それはSFの世界だけなんです。

ワカメダ:よかったです(笑)

小林:ロボットに対する恐怖を少しでも取り除くために、松坂屋やモリコロパークでイベントを毎年やっています。イベントでは子供たちに、「ロボットは怖くなくて、人間の役に立つ」ということをお伝えしています。

私個人の意見にはなりますが、5年後、10年後でも、「各家庭にロボット一台」という時代はまだまだ先のことだと思います。しかし、街中でロボットを目にする機会は今よりも増えると思います。

そのときに、今の意味でのロボットではなく、寂しい時に会話の相手になってくれたり、知らないことを教えてくれたりする、同じ人間のようなパートナー的存在になっていたらいいなと思っています。

編集部コメント

難しい研究分野ではありますが、小林先生が私たちにも分かりやすいように丁寧に説明をして頂けたおかげで理解を深めることができました。企業の方も、次世代ロボット研究所の見学ができるとのことなので、興味のある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材にご協力して頂いた小林先生、本当にありがとうございました。

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Rumi Iwabuchi

Rumi Iwabuchi について

1994生まれ、名古屋市出身。Nagoya Startup Newsライター。在学中に学生団体AIESECに所属し、外国人学生のインターン斡旋業務や支援事業に携わる。2016年よりスペインのバルセロナへ語学留学を経験。南山大学外国語学部在学中。