名古屋大学発ベンチャーの社長3名が登壇。情報処理学会・第79回全国大会に参加してきました

投稿者: | 2017-03-19

名古屋大学で3月16日(木)から18日(土)まで開催の、情報処理学会・第79回全国大会に参加してきました。


今大会のテーマは「オープン・イノベーションと情報処理」。約1,450件の一般セッションや学生セッション発表に加えて、特別講演・招待講演企画、イベント企画セッションや展示会が行われました。その中から、今回は日本学術振興会の推進事業「博士課程教育リーディングプログラム」を履修する大学院生の講演を聴講して来ました。

企業展示ブースもありました

「博士課程教育リーディングプログラム」とは、優秀な学生を産官学にわたりグローバルに活躍するリーダーとして養成する、博士課程前期・後期一貫の学位プログラム。博士課程を設置する大学の、世界に通用する高い質が保証された学位プログラムを支援するものです。厳しい審査を通過したプログラムのみが「博士課程教育リーディングプログラム」として認められます。さらにはプログラム自体の質だけでなく、学生自身にも高い能力が求められます。

そんな優秀な学生8名による「博士課程教育リーディングプログラム」の紹介や研究内容、それらがもたらす経済的価値などについて言及した講演内容の一部をご紹介します。

中学生でも簡単にアプリが作れる『Siv3D』

早稲田大学・鈴木 寮遼氏の講演では、プログラミングを楽しく簡単にする、インタラクションのためのプログラミングツール『Siv3D』が紹介されました。『Siv3D』は、KinectLeap Motion、カメラやマイクなど、さまざまなデバイスを使うアプリケーションを、「短く簡単な」コードで作れるC++ライブラリ。鈴木氏が、大学入学前より開発してきたものです。

『Siv3D』を活用すれば、MIDI・画像処理・3Dグラフィックスでも長く複雑なコードを要しません。そのため、どんな人でも自分や社会に新しい価値を創出するソフトウェアを、手軽に開発できます。

お絵かきアプリ『HamSketch』は、選んだ画像を参考に絵を描いてくれるアプリ

公開されている『Siv3D』を活用してユーザーが作成したアプリの事例も紹介されました。

『タイピング練習ソフトTYPL』は、歌詞を打ち込むことで曲の再生が進むアプリ

これまでに1万人以上が『Siv3D』をダウンロードしているそう。これからどんなアプリが誕生するのか、楽しみですね。鈴木氏は、「教育現場でのデジタル教材のアプリにも応用できる」と述べていました。近い将来、「板書のうまい先生」ではなく、「良い教材アプリを作った先生」の方が人気者になるかも、とも。

 名古屋大学発のスタートアップ

名古屋大学の「実世界データ循環学リーダー人材育成プログラム」からは、長江 祐樹氏・橘川 雄樹氏・松下 健氏が登壇しました。この3名の方々は、プログラムで得た知見を土台に、学生ベンチャーを起業されているそうです。

「実世界データ循環」とは、実世界に存在するデータを社会活動に還元・利活用できる仕組みとしての「データ循環」を構築するという考え方。この「データ循環」を可能にするには、まず実世界で活用してもらうことが必要であり、そのためにはスタートアップの立ち上げが必要だと考えたことで、起業に至ったそうです。

長江氏は株式会社Tryetingの代表取締役CEO。自身の専攻した材料工学をもとに、ガン・発作予測センサーの具現化に向けて、スタートアップを立ち上げ。これまでに、AIを土台にした人材分析・マッチングサービスなどの事業を展開してきました。

今後の事業展開に関しては、「ものづくりのまちである愛知県で、AI+αで新しいものづくりに取り組み、さらには異分野との融合で今までにないようなイノベーションを起こせたら」と述べていました。

橘川氏は株式会社マップフォーの代表取締役。オープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発を進めており、市街地での実証実験にも取り組んでいます。「Autoware」は、車の自動運転には欠かせない、3Dマップ。MMS(モービルマッピングシステム)を搭載した車両から回収したデータを元に基盤地図をつくり、自動運転車両から取得するデータで、リアルタイムで3Dマップを更新・配信する仕組みです。

「将来的には、ドローンを使って3Dマップを作ることも可能だと思います」とのこと。

松下氏は、合同会社オプティマインドの代表。教育・講演会向けシステムの販売や、新サービスの開発に取り組んでいます。講義する側・受ける側の“双方向型講義”を実現するアプリ『Re:act』は、ベンチャーグランプリでの受賞歴もあるそう。起業した先輩や企業メンター、教授からは手厚いサポートを受けており、精神的な支えにもなっているのだとか。

今後の展開としては、「蓄積された実世界でのデータを元に解析をし、その結果を元に現場の改善にいきるアルゴリズムを構築する」そうです。

リーダーを養成するプログラム=全員リーダー?

「博士課程教育リーディングプログラム」は、グローバルに活躍するリーダーを養成するプログラム。ということは、プログラムを履修する学生は、個人であると同時に全員がリーダーでもあります。そこで得られる成果とは何でしょうか?

最後の質疑応答で、こんな質問が出ました。これに対して、登壇者の方から以下のような答えが述べられました。

  • リーダーシップがあり、優秀な学生が集まるだけあって、やはりそれぞれ“我”が強い。しかし、リーダーとはこうあるべきということは常に考えている。だから、ゴール達成に向けてそれぞれの分野ごとに仕事を振ることができる。そこで異分野への共感が生まれる。(名古屋大学・長江氏)
  • 「1人がリーダーとなり、それをサポートする」と考えるため、全員がリーダーになることはない。(早稲田大学・金井 太郎氏)
  • 自分からの視点しか持っていなかったが、他の分野からの視点を得られた。(豊橋技術科学大学・田村 秀希氏)
  • 競争意識が研究の良い刺激となった。(筑波大学・西田 惇氏)

「産官学」が連携することで新しいものが生み出されることもありますが、異分野を専攻する学生が集まることでもまた、同じようなことが起こるようです。

編集部コメント

筆者は「情報処理」に関しては全くの素人です。内容を理解できるか、とても不安でした。しかし、「選ばれし学生」の皆さんはやはり優秀なだけあって、「見せ方」「話し方」は一流でした。最先端の研究内容も聞けるので、スタートアップの“タネ”を探している方にとっては良い機会になるのではないでしょうか。
この大会は、毎年春に行われる学会最大のイベントです。今年行けなかった方は、ぜひ来年足を運んでみてください。