名古屋のU29若手起業家やスタートアップ人材が集結。”Midland Incubators”のキックオフイベントをレポート!

投稿者: | 2017-10-08


29歳以下の名古屋の起業家やスタートアップ界隈プレーヤー向けのコミュニティ”Midland Incubators”が9月30日(土)、名城大学内MU GARDEN TERRACEにてキックオフミートアップイベントを開催しました。

名古屋で活躍する経営者や若手スタートアップ起業家を登壇者に迎えたトークセッションや、参加者によるピッチ大会などが行われました。起業やスタートアップに関心を持った参加者50名近くが集ったイベントの様子をレポートします。

Midland Incubatorsとは?


Midland Incubatorsは、U29の名古屋の起業家エコシステムを形成させることを目的としたスタートアップコミュニティです。コミュニティ発起人は名古屋でクラウド請求管理サービスを提供する株式会社Misoca代表の豊吉隆一郎氏と、同社執行役員の奥村健太氏です。29歳以下の名古屋の起業家やスタートアップ界隈のプレーヤーを対象にした人材育成やマッチングの機会を定期的に提供しています。

第一部:JBR榊原氏とMisoca豊吉氏によるトークセッション”名古屋発上場企業JBRはどのようにして生まれたのか?”

名古屋の上場企業ジャパンベストレスキューシステム株式会社(JBR)の榊原氏と株式会社Misoca代表の豊吉氏が”名古屋発上場企業JBRはどのようにして生まれたのか?”というテーマでトークセッションを行いました。創業のきっかけや上場に至るまでの経緯、仕事に対する思いなどを語りました。

榊原 暢宏

1967年生まれ、名古屋市出身。 ジャパンベストレスキューシステム株式会社代表取締役。大阪経済法科大学経済学部卒業後、パルコ系列の会社に入社しマーケティング・販売業務に携わる。 1994年、バイクのロードサービスを目的とした有限会社ノアを設立。その後、1997年に現在のジャパンベストレスキューシステム株式会社の前身となる日本二輪車ロードサービス株式会社を設立し、代表取締役に就任。 事業内容も拡大し、『生活救急車』の名称で生活のあらゆるトラブルへのトータルサービスを手掛ける。 2005年には東証マザーズ、2007年に東証一部市場変更、同年11月に名証一部に市場を果たす。

豊吉 隆一郎

1981年生まれ、岐阜県出身。岐阜工業高等専門学校 電気工学科を卒業。卒業後Webのシステム開発で独立。個人事業としてWebサービスの開発や売却の実績を積み、2011年6月に株式会社 Misoca (旧:スタンドファーム株式会社)を設立。クラウド請求管理サービス『Misoca(ミソカ)』の開発・運営を行う。

以下はセッションのダイジェストです。

1+1は10000にできる


榊原:小さい頃から祖父母に「1+1の答えは2じゃなくてもいい。好きな数字を入れてごらん」と言われていました。1+1は10000と答えたとしたら、10000にするための方法を見つけなければならないということです。柔軟な発想の育て方でした。

JBRはJAFのオートバイ版のようなことをしていました。初めは自分一人で経営していて売り上げも全然集まらなかったから上手くいくかわからなかったけど、「1+1は10000」の発想で動き続けました。全国どこでもオートバイについて困っている人を助けられるように、1000近くのネットワークを全国に作りました。

豊吉:2005年頃、JBRがマザーズに上場する直前くらいのときに榊原さんに初めて会いました。僕が24歳くらいでフリーランスだった頃です。

榊原:豊吉くんは学校を卒業したけど就職してなかったから、なんだか変わった人だなと思ってました。でもすごく感じの良い人だったし、私ができなかったITの仕事が専門だったのでお仕事をお願いしたんです。その頃から「いつか絶対起業して社長になってね」と声をかけていたよね。

豊吉:僕がすごく覚えているのは、初めて会う時に履歴書を持っていったのにあまり見てもらえず「SEOできるの?」と聞かれたこと。「できます!」と答えたら「じゃあ明日から来てね」って言われてその場で採用されたんですよね。

榊原:僕はネットが全然できなかったので、ネットができると聞いてすごく尊敬したんですよ。

豊吉:もう一つ覚えていることで、僕がJBRをSEO検索で一番上に表示されるようにして問い合わせの電話も来るようになったから、褒めてもらえるだろうと思って榊原さんに見せにいったんです。そしたら「がんばったね。でも2位から9位はうちのページじゃないね。」って言われてしまって(笑)経営者ってそういう発想をするんだなと、驚きました。まさに「1+1は10000」のようなフラットな発想を持っていると感じました。

若い頃自分が受けた投資を、今度は次世代に還元する


豊吉:榊原さんと仕事を始めてそれから約半年くらいでJBRがマザーズに上場しました。僕も社長になりたいとはずっと思っていたんですが、どうすればいいのかはよくわかっていなくて。でもJBRが上場を目指す中で資金調達だったり売り上げをあげていったりというところを近くで見られたので、会社としての上場へ向かう盛り上がりを知ることができました。僕もいつかこんな組織を作りたい、必ず会社を作ろうと思えました。

僕は榊原さんや周りの方にたくさん助けてもらったり人を紹介してもらったりと、みなさんに押し上げてもらった。それをただ「ありがとうございました」で終わったりお金を返すだけじゃ全然喜ばれないですね。次の世代に自分の経験や知っていることを教えたり、お手伝いしたりできたらなと思って、このMidland Incubatorsというコミュニティをやっています。

榊原さんは次の世代に投資したりしていますか?

榊原:私もさまざまな企業に投資しています。自分一人では24時間しか生きられないけど、100人に投資したら2400時間生きられるんじゃないかなと思って。投資すると、その仕事の楽しみは少し共有できると考えています。時間は平等だけど、たくさんの人に投資することでその人たちの時間も生きられる気がしています。

若手起業家へメッセージ


豊吉:今日は、起業した人やこれから起業したいと考えてる人もいると思うのですが、榊原さんはどういう人だったら応援したいなと思いますか?次の世代へ伝えたいことはなんでしょうか。

榊原:自分のいる環境の良し悪しはあると思うのですが、自分が良いと思ったことがきちんと言えることがいいですね。それも自分の都合で言うのではなく、「この会社にとって良い」「この組織にとって良い」「この人にとって良い」ということを信念を持って言っていくことが大事だと思います。

アルバイトでもいいんです。「もし自分が社長だったらこうするだろうな」というのを常に考え続けることで、勝手にスキルが上がっていきます。口で言うだけじゃなくて、「こうしたらいいね」というフローまでしっかりもっていく努力をすれば、すごくいい人生になると思います。アルバイトでも何でもいいので、ぜひ今のうちからそういった考え方を心がけているといいですよ。

第二部:Q&Aセッション

写真中央から右端へ順に三野氏、有村氏、柘植氏

名古屋で活躍する3名の若手起業家から榊原氏と豊吉氏に対して、スタートアップの経営に関する質問を行うQ&Aセッションが行われました。質問をした3名は、株式会社KYSMO代表の三野稜太氏、株式会社PREVENT CTOの有村琢磨氏、Lawin株式会社代表の柘植千佳氏です。

以下はセッションのダイジェストです。

1. 得意分野を伸ばすか、苦手なこともやった方がいいか?


三野:スタッフのスキルを十分に発揮するには、得意なことを伸ばした方がいいのか、それとも出来ないこともやらせて失敗しながら成長させた方がいいのでしょうか?

たとえば、技術が専門ではない営業担当に技術を勉強させ、一人でいろいろなことを説明できるようにさせた方がいいのかというシチュエーションがあったりします。苦手なことも無理矢理やってもらった方がいいのか、それとも得意な部分だけ伸ばした方がいいのか迷います。

豊吉:Misocaの話にはなりますが、弊社では苦手なことはやらせていません。うちは人数が少ないので、苦手なことをやるくらいなら他の会社でやった方が幸せかなと思います。得意なことががやりたくて会社に入ってもらっていると思うので、苦手なことはやらせてないし、期待もしてないです。僕は、やりたくないことはできないと思うので、苦手なことをやっていると時間がもったいない気がしてしまいます。

榊原:三野さんが教育が好きなら他の能力を伸ばす手助けもしたらいいと思いますし、そうでなかったら一つの能力を伸ばしてあげればいいのではないでしょうか。でも教育は時間とコストがかかるので、会社のフェーズによっても変わるかもしれませんね。

2. 採用するときに気をつけることは?


有村:採用する上で決め手となるポイントは何でしょうか?採用する際にどんなところに注意して面接したらいいのか、経験を重ねていく上で得たナレッジがあれば教えていただきたいです。

豊吉:弊社でも採用は結構力を入れていて、僕の時間の使い方でも3分の1くらいは採用に使っているほどです。

会社で大事にしていることは、新しく入る人が会社の文化に合うか合わないかです。スキル面はもちろんですが、それ以上に今のメンバーと合うかどうかを重視しています。もし一人でも合わない人がいると、全員のモチベーションが下がったり、その人だけのためにやり方を変えなければならなくて、効率が下がってしまいます。

弊社で工夫していることは、最終面接で会社に1日来てもらって午前中はエンジニアとペアでプログラミングをしてもらい、午後はMisocaの課題に取り組んでもらうという採用方法。現場のスタッフと文化や雰囲気が合うかを見られます。新しく入りたい人がいくら代表の僕と相性が良くても、現場がNOと言えば僕は現場の意見を尊重しています。

3. ビジネス成功のための仕事の優先順位はどのように決める?


柘植:会社を経営していると、毎日膨大な量の仕事に追われてしまうと思います。ビジネス成功のために必要な優先順位の決め方について教えてください。

豊吉:優先順位といってもできることは限られてくるとは思います。僕がやっていたこととして、自分が半年後にいたとしたら何を考えるかを逆算して想像していました。「半年前にあれをやっていればよかった」と思うことが何かを考えてみると、今やるべき大切なことが見えてくるのではないでしょうか。

榊原:私は、社長は売り上げと利益を最優先するべきだと思います。ただ、赤字でもいいからユーザーをたくさん集めたいという場合だったら資金調達が必要かもしれないし、状況によって変わるかもしれないので、目指すゴールが見えていると優先順位が見えるかもしれませんね。

交流タイム


トークセッション、Q&Aセッションのあとは、立食形式の交流会が行われました。集まった参加者は高校生や学生起業家、まさにこれから起業をしようと準備している人など、エネルギーの溢れる若者が多く集まりました。互いに情報交換を行い、新たなネットワークが生まれていました。

また参加者による1分間のピッチ大会も開かれ、自分の経営する会社の事業やニュース、メンバーの募集や起業にあたってのアピールなど、およそ10組がピッチを行い会場を盛り上げました。


Midland Incubaotrsは今後もイベントを開催予定です。これから起業したいと考えている方や名古屋のスタートアップやベンチャー企業に興味のある方にとって、役に立つ情報やネットワークがあるかもしれません。今後のMidland Incubatorsの動きにぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

編集部コメント

U29限定イベントということで、今後の活躍が期待されるスタートアップ・ベンチャー界隈の若者が多く集まりました。Q&Aセッションでは、経営者やスタートアップで働く人にとって参考になるヒントがたくさんありました。参加者の中にはまさにこれから起業するという方もいて、今回のイベントで得たネットワークが今後の役に立つといいなと思いました。