クリエイティブな学生が交流できるハブを名古屋にも。学生団体”OthloTech”創設者の酒井氏にインタビュー

投稿者: | 2017-10-11


エンジニア・デザイナーを目指す方やITに興味のある方は、ITやWeb系の勉強会やイベント、ハッカソンなどに参加したことがあるかもしれません。仕事では習得できないスキルをつけるため、その界隈の人々とのネットワーキングのため、純粋に楽しむためと、参加の目的は様々でしょう。

ところが学生にとって、社会人が開催する勉強会やイベントへの参加は少しハードルが高く感じることもあるようです。「まだ知識の少ない自分が行ってもいいのだろうか」「社会人ばかりの中で自分だけ学生だったら」そんな気持ちを抱えながら、これまでなかなか参加に踏み切れなかった学生は少なからずいたでしょう。


みなさんは“OthloTech(オスロテック)”という団体を耳にしたことはあるでしょうか。OthloTechは「名古屋にクリエイティブな学生のコミュニティを作ろう」という思いから2016年5月に立ち上げられた”学生クリエイティブ集団”です。エンジニアやデザイナー、ITに興味のある学生向けに勉強会やイベントを名古屋のIT企業やベンチャーを巻き込みながら開催しています。

OthloTech設立から1年6ヶ月。創設者であり初代代表を務めてきた酒井英伸さんがOthloTechを引退し次代に引き継ぐことを耳にしました。そこで今回は酒井さんに、団体創設の思いやエピソード、今後のOthloTechや名古屋のクリエイティブ学生への期待をお話していただきました。

プロフィール

酒井英伸

名古屋市出身。名古屋大学工学部電気電子情報工学科4年生。名古屋や東京で大手IT系ベンチャーインターンを複数経験。U-22プログラミング・コンテスト2016では自身が開発したウェブサービス「ついまな」が2部門で受賞。その他さまざまなコンテストやハッカソンでも受賞を果たす。2016年5月、エンジニア仲間とともに学生クリエイティブ集団OthloTechを創設、代表として団体の運営活動に従事する。

大学に入ってから初めて触れたプログラミング


ー OthloTech創設者の酒井さんがこの度引退し、団体を後代に引き継ぐということで… これまでの活動本当にお疲れ様でした。今回のインタビューでは団体創設から今まで活動してきた中で思ったことなどを伺いたいと思います!

ありがとうございます。なんだか緊張しちゃいますね。よろしくお願いします!

ー まずはOthloTechをまだよく知らない読者の方のために、酒井さんのプロフィールから聞いていきましょう。2016年5月にOthloTechを設立する以前から何か活動をしていたのでしょうか?

いえ。大学に入学したばかりの頃は、実は「プログラミング」という言葉さえも知らなかったんですよ。

ー えっ、本当ですか?

そうなんです。プログラミング言語の一つである「C言語」という言葉も初めて耳にして、「じゃあB言語やA言語もあるの?」というくらいエンジニアとしては素人でした。大学2年生の頃にプログラミングを学ぶコースに配属されてからだんだんと面白さに気付いていきました。それからは独学でサーバーサイドに関しても学ぶようになりましたね。


ー エンジニア向けのイベントを多く開催しているOthloTechの代表なので、昔からプログラミングに興味がある人だと思ってました。

ええ、でもそういう訳ではなかったのです(笑)

大学3年になったころから、学校の授業だけでは物足りなさを感じ始めました。学校の勉強だけでなく外部のIT系勉強会やイベントにも参加しようかなと考え始めて。そこでたまたま初めて参加したのが、名古屋のベンチャー株式会社Misocaの会社設立3周年イベントだったのです。周年イベントだったので勉強会とは言えないですが、一応それが僕にとって初めて参加したイベントでしたね。楽しかったのですが、学生が全然いなくてちょっと心細かったことを覚えています。

そのイベントを通じて参加したStartup Weekendでは高専出身の学生2人とチームを組んだのですが、とにかく彼らの専門性はすごかった。彼らのうち1人は名古屋で学生ハッカソンを開催していて、たった1人で協賛企業を集めててすごいなと思って。僕は彼の開催したハッカソンにも参加しましたが、2日間でたったの2行しかコードが書けなかったくらい全然何もできなかった。同世代にすごい技術を持つ学生がたくさんいることを初めて知った瞬間でした。

ー 初めて参加した外部のイベントで出会った学生をきっかけに、酒井さんの活動や視野が広がったのですね。

はい。その後、僕は企業インターンでもっと力をつけようと思い、大学3年生の後期を休学しました。休学中の期間は自分でウェブサービス「ついまな」を開発したり、Misocaで3ヶ月間の開発インターンに参加したり。OthloTechはちょうどその時期に立ち上げました。

東京とのギャップから”名古屋にもクリエイティブ学生向けのコミュニティを”


ー OthloTech創設の背景を聞かせていただけますか?

OthloTechは、僕ともう2人の学生の合計3人で立ち上げた団体です。

東京でIT系の勉強会やイベントに参加していると、名古屋の学生が本当に少ないと感じます。東京の企業の人事の方にも「名古屋ってエンジニアいないよね」と言われてしまったり… でも僕の周りにはすごいエンジニアはいたし、名古屋にもエンジニアが全然いない訳ではない。でもいないと思われてしまっているということは、名古屋出身者として悔しいなと思っていました。

そんな時、名古屋で開催された勉強会を通じて2人の学生に出会いました。その勉強会の後に「やっぱり名古屋にもこういう学生向けの勉強会やコミュニティをつくりたいよね」と話している中で誕生したのがOthloTechでした。


ー 名古屋でも学生のためのコミュニティが必要だと感じ、創設したのですね。何もない状態から設立するのはやはり難しかったのでは?

はい。僕は学生団体なんて立ち上げたことも所属したこともなかったから、ノウハウなんて全くない状態からのスタート。むしろ「ITに関する既存の団体があれば入ろう」くらいに考えていたのですが… 探してみても全然見つからなかったので自分たちで作ろうということになり、大学にとらわれない学生のコミュニティであるOthloTechを作りました。

最初はツテも何もないですから、学生のLT会(= Lightning Talksの略。5分程度の短いプレゼンテーションのこと)や謎解きイベントなんかを開催していました。それはそれで楽しかったのですが、やはり協賛企業と一緒に何かやってみたいなと感じていました。

いろいろなベンチャー企業に声をかけているうちに、次第に企業からも「がんばってるね」と声をかけてもらえるようになって。だんだんと僕たちのイベントへの協力・協賛もしていただけるようになっていきました。企業の協力のおかげでOthloTech主催のハッカソンも開催することができました。

ー 企業側から声をかけてもらえるほどになったということは、それだけ珍しくて目に留まる活動だったということではないですか?

それだけ名古屋で僕たちのような活動をする団体が全くなかったということでしょうね。

学生ならではの視点や工夫を施したOthloTechの活動


ー 読者の方の中にはOthloTechが開催するイベントに興味を持っているけど、まだ参加したことのない学生もいると思います。普段はどのようなイベントを開催しているのでしょうか?

学生エンジニア・デザイナー、それからITに興味のある人向けの勉強会やイベントを開催していて、その分野に興味のある学生なら誰でも参加を歓迎しています。

イベントを運営する僕らが心がけていることが一つあります。それは、毎回勉強会の内容は違えど、必ず最後には懇親会を開くようにしています。
OthloTechのイベントを通じて知り合った人にまた会いにきたり、「同じ趣味を持つ人と久々に話したいな」という気持ちで来てもらいたいから、僕たちとしては懇親会を目的に来てもらっても全然OKなのです。

もちろん、知識をつけるために勉強会に来てもらい、懇親会で新しいコミュニティも広げてもらうのもいいですよね。

ー OthloTechイベントの参加者は学生限定にこだわっていますよね。

はい。OthloTechのイベントを学生限定にしている理由は、学生の参加障壁を低くしたかったことが一番の理由です。名古屋は勉強会が全くないわけではありません。社会人主催の勉強会はたくさんあります。

でも、実際に僕が初めて参加したイベントに学生が非常に少なかったこともあり、学生が一般の勉強会に参加するハードルの高さは僕自身とても理解していました。学生にとっての参加障壁を低くすることで、次の機会にも繋げられると思うのです。毎回イベントレポートを公開することも、僕たちの活動を学生に知ってもらい、安心して参加してもらうために工夫していることの一つです。


ー これまでさまざまな企業とイベントを開催してきたと思いますが、印象に残っている出来事はありますか?

団体を立ち上げてまだ数ヶ月だったとき、ある人に「学生団体の行うイベントは、企業にとっては”マスト”でなく”ベター”でしかない。それを意識しておいた方がいいよ」と言われたことがあり、印象に残ってますね。

僕たちは学生団体として企業に対し「イベントやりませんか?」と提案します。でも、企業にとって勉強会って必ずしもやらなければならないことではないですよね。きっと「やったほうがいいかな」くらいのものだと思います。”マスト”ではないから「イベントやりませんか?」だけでは何も企画は進まないのです。

極端に言えば企業に鬱陶しがられてしまうくらいに積極的にアプローチしないと、学生団体と企業の共同イベントは実現しないのです。これは今までの活動の中で学びました。

「そこに行けば同じ趣味や志の仲間がいる」空間になって欲しい


ー 酒井さんは、「OthloTechが今後こんなふうになって欲しいな」という思いはありますか?

OthloTechを始めたときから、OthloTechで使うためのスペースが欲しいとは思っていました。

そもそも創設時から僕らがやりたかったのは「そこに行けば同じ趣味の人がいる」「そこに行けばエンジニアやデザイナー、ITに興味がある人がいる」と思える”空間づくり”でした。現在は月一回のイベントと懇親会という形でしか実現できていないけど、いつかはOthloTechとして場所を設けて、「そこに行けば誰かがいる」という場づくりの実現が叶ったらいいなと思います。

関西には学生が運営するそのようなスペースがすでにあるんですよ。今までは技術を持った人たちが触れ合う場所はなかったけど、それが常にできるコミュニティやスペースがあればいい連鎖が生まれると思います、たとえばOthloTechの勉強会に参加した人が今度は自分で勉強会を開くとか。

オスロテックのイベントに参加してくれるのはもちろん嬉しいですが、参加してくれた人自身が勉強会を主催してくれたらもっと嬉しいです。小さなイベントからでもいいので広めていってくれたら、勉強会の数も増えてコミュニティも広くなるでしょう。OthloTechイベント出身者みたいな人がたくさん増えたらいいですね。


ー 1年間OthloTechで活動してきて、今どんなことを感じますか?

いまだにOthloTechの勉強会への参加者は増えています。設立から通算600人くらいに参加してもらい、ユニーク数も250人は超えています。毎回の勉強会の平均参加者も20,30人とどんどん増えています。

それだけ名古屋には学生が参加できる勉強会やイベントがなかったんだなとすごく感じますね。勉強会を運営する僕たちは、勉強会の内容を考えたり、協賛企業を探したり、開催場所を探したりと、最初からノウハウがあるわけではないので大変なこともありますが、参加者が増えているということはやはり需要があるのだなと感じています。

名古屋はまだまだ内気なところもあるとは思います。それでも、参加者数やユニーク数は以前より増えてるし、最近は東京から「OthloTechいいよね」と言ってもらえることも。今後どうやってOthloTechを後代に残していこうか一緒になって真剣に考えてくれる企業さんもいて、やっとOthloTechが地元名古屋にも愛され始めているのかなと感じます。

OthloTech主催のハッカソン”OthloHack 2017″には約60名の学生が参加した

ー 地元で応援してくれる人がいるのは、今後の活動にとってとても心強いことですよね。今後もOthloTechの勉強会に参加する学生やコラボしたい企業が増えていくといいですね!

そうですね。需要はあるので、あとは供給の運営側が追いつくかどうかです(笑)参加だけでなく、僕たちと一緒に勉強会やイベントを運営するメンバーも募集していますよ。運営メンバー自身も運営を通して楽しめるポイントを見つけてもらえたらいいですね、たとえばOthloTechの名前を使って好きな勉強会を開けるのはメリットだと思いますよ。実際に大手IT企業と共同でイベントを開いたOthloTechメンバーもいますよ!学生エンジニアやデザイナー、ITに興味のある学生は、ぜひOthloTechに関わってもらえると嬉しいです。

ー OthloTechの活動や規模のさらなる拡大に期待ですね。酒井さん、今日はありがとうございました!

編集部コメント

酒井さんは私と同世代であり、日頃から彼の活躍は多方面から耳にしていました。学生や企業を巻き込むその影響力と同時に「学生に気軽に参加して欲しい」と語る彼の親しみやすさにも感心しました。この記事を読んで少しでもOthloTechに興味を持った学生の方、そしてクリエイティブな学生を発掘したい企業の方は、ぜひOthloTechのイベントに注目してみてはいかがでしょうか。