どんぐりピット合同会社
同社は2020年にトヨタ系メーカーの若手エンジニア4人が中心となって立ち上げたベンチャー企業。拠点を日進市に置き、地域に密着して活動しながら、同じ街に住む生産者や消費者をより強く結びつけることで、地元生産物の地産地消から地域の活性化までも目指しています。
日本におけるフードロスの現状
農林水産省の推計によると、日本のフードロスは事業系廃棄物と家庭系廃棄物を合わせて平成30年度時点で600万トン。その内、家庭系のフードロスは全体の46%(276万トン)を占めています。これを個人のスケールに置き直すと、年間で一人当たり約47キロもの食材が捨てられていることになります。日本における食品ロス全体の量としては近年減少傾向にあるものの、未だに多くの食材が廃棄されている現状から問題視されています。
シェア冷蔵庫
どんぐりピットはフードロス削減のためのプロジェクトを進めています。同社が準備した農具や肥料を用いて気軽に始められ、自分で一から作物を育てる体験ができる畑シェアサービス「どんぐりファーム」。またフードロスを無くす取り組みとして野菜販売など、様々なイベントも継続的に開催しています。
どれも地域に根ざした魅力的なプロジェクトですが、今回注目したいのは同社が提案する「シェア冷蔵庫」です。シェア冷蔵庫は、公民館やマンションのエントランスなどに設置し、地域で食材をシェアすることで地域内での食材消費を最適化します。例えば、農家で出た規格外の商品や、家庭で余ってしまった食材などが出品可能。大きな利点として、以下2点が挙げられます。
- 必要な時に必要なだけ食材を手に入れられること
- 余った食材を気軽にシェアできること
同社はこのシェア冷蔵庫の実証実験を、7月25日まで名古屋商科大学大学院の集中講義に合わせて実施していました。まず、事前に登録した利用者がマイQRコードを冷蔵庫に設置されたカメラで読み取ります。そこから商品情報が表示されたモニターのメニューから選び、ロックを外して商品を取り出す仕組み。マイQRコードで支払いまでも完結することができます。今回の実証実験では、食堂で余ったランチをお弁当にし、シェア冷蔵庫で販売する試みとして注目を集めました。
また同社はシェア冷蔵庫のアプリを開発するためのクラウドファウンディングも実施。これには合計200人が支援し、目標の250万円を超えた268万3000円で終了しています。これらの数字からも、フードロス削減に資する食べ物のシェアプラットフォームとしてシェア冷蔵庫への期待の高さが伺えます。
食品ロスという日本社会が抱える問題に立ち向かうだけではなく、地域の活性化実現にも取り組む。そんな「課題解決」と「豊かな社会作り」の両面を1社で担うどんぐりピットから、これからも目が離せません。