未来を起点に考えて、自らコトを起こす|NAGOYA CONNÉCT #17 イベントレポート

投稿者: | 2021-12-15


イノベーションの促進と交流の機会として名古屋市が主催している「NAGOYA CONNÉCT(ナゴヤコネクト)」(運営:Venture Café Tokyo) が11月26日(金)に、旧那古野小学校をリノベーションしたインキュベーション施設「なごのキャンパス」に会場を開き、リアルとオンラインのハイブリッド形式で実施されました。

文:羽根
写真:齋藤

スタートアップ支援と事業構想


NAGOYA CONNÉCTは「ちょっとした繋がりからイノベーションを生むことができる」をキーワードに、昨年の7月から毎月第4金曜日にリアルとオンラインで開催される定期イベントで、毎回多くの参加者が集まっています。

学びと繋がりの両方を叶えるプログラムとなっており、イノベーションに興味や関心がある方なら、誰でも無料で参加することができます。

前半は今年の2月に名古屋市とMoUを締結した、公共投資銀行「BpiFrance」からゲストをお招きし、スタートアップや中小企業に対する支援や取り組みの紹介をしていただきました。後半のプログラムでは、2012年に文科省認可を受けて設立された専門職大学院「事業構想大学院大学」から教授と現役生、修了生を招いたトークセッション、事業構想ピッチが行われました。

政府的金融機関「BpiFrance」の多角的な支援が支えるフランスのエコシステム

前半では、愛知県とMoUを締結したフランスの政府的金融機関、「Bpifrance」より、中小企業やスタートアップへの支援についてお聞きすることができました。
また、終盤ではスタートアップ9社によるピッチもあり、非常に熱量を感じるひと時となりました。

まず最初に、15年に渡り、Bpifranceの第一線で国際業務や輸出業務に従事してきたイザベル・ルボ氏より、Bpifranceの業務内容や、目指すビジョンについてお話がありました。

「Bpifranceはスタートアップや中小企業へ向けて、支援や投資を行う政府系投資銀行です。我々の支援によって企業にグローバルな展開をしていただきたいと思っています。また、金融支援だけでなく、世界に展開していく上での保険、保証も担っています。」

そうお話しされたイザベル氏。公的な金融機関であるBpifranceが多角的で盤石なサポートをすることにより、よりスマートなエコシステムの構築が実現した先進的な社会のビジョンが垣間見えるようでした。

イザベル氏は、「革新的な企業に対してプロジェクトを熟知し理解を深め、”近い存在でいる” ことが非常に重要である。」と、スタートアップや中小企業への親身な姿勢の必要性を強調されました。

また、BpiFranceで国外展開を目指す企業へ向けて、支援と融資のサポートをしているノルウェン・シモノ氏は、「我々は、世界中のパートナーと様々な形で連携して、イノベーションを通じ国際化していくことを目指しています。もちろん、日本とも関係を持ってプログラムを構築していくことができると思います。」と国外へ向けたポジティブなビジョンを話されました。

愛知県は2018年から積極的にスタートアップ推進事業を進めており、最近では世界各国のスタートアップとの連携を強化していく考えを示しています。
2020年にBipFranceとのMoUを締結したことにより、双方のビジョンがより強固なものになっているように感じました。

その後、フランソワ・グザヴィエ・ドゥ・テュロイ 氏より、インダストリー4.0への移行を試みる中小企業に対するコンサルティング経験を中心にお話がありました。


フランソワ氏は、

「例え、先進的なプランがない企業であったとしても、積極的に関わり、アイディアを提供する必要性を感じた。」

と言います。また、国内の小さなマーケットで収まることなく、海外へのアイディアの輸出が重要である、ともお話しされました。

また、国内からは山本有里 氏が登壇され、名古屋市 「We Work」内にある、スタートアップへの多角的支援を行う拠点施設 PRE-STATION Aiについて、統括マネージャーの目線からお話を伺うことができました。


「ビジョンはスタートアップファースト。愛知から世界で戦うことができる起業家を輩出するというミッションを掲げています。また、日本中、世界中から起業家が集まるようなハブにしてきたい

「PRE-STATION Ai」は2024年に完成する「STATION Ai」の整備までの間に切れ目のないスタートアップ支援を行うために、開設された拠点です。愛知を中心に、世界へ向けたスタートアップ支援が充実し、イノベーティブな社会を創造していく、そんな未来を見せてくれました。

前半のプログラムの最後は、国内外のスタートアップ9社からのピッチがあり、先進的な挑戦を間近に感じることができる貴重な時間となりました。

以下、登壇者

清水 政行 氏(Masayuki SHIMIZU)
OnClouds株式会社 代表取締役
人とロボットが共創する社会を目指して、全てのロボットをつなげて高度なアルゴリズムや情報を提供するサービス”Robot as a service”を提供しています。

実川 大海 氏(Hiromi JITSUKAWA)
トランスミット株式会社 代表取締役
『伝える、届ける、変速する』をミッションとし、製造業工場のステップアップをITで支えるサービスmonitを月額制で提供しています。クラウドで発注書・図面から案件管理ができます。

美谷 広海 氏(Hiroumi MITANI)
FutuRocket株式会社 CEO&Founder
誰でも手軽に設置して使えるスモールビジネス向けのAIカメラ「ManaCam」を手頃な価格で提供しています。

田中 貴紘 氏(Takahiro TANAKA)
株式会社ポットスチル 取締役
高齢者にも分かり易いインタフェースで、運転中の見守りと運転後の振り返りを運転中/運転後に日常的に繰り返し、ドライバの自己認識を改め、より自分に合った安全な運転に変え、交通事故低減に貢献を目指しています。

和歌 汰樹 氏(Tsaiki Waka)
株式会社New Ordinary 取締役副社長CEO
「自らの意志でリアルな移動をする機会を増やす」を掲げ、移動を産み出すサービスを提供しています。PRE-STATION Aiに一期から参加する企業です。

ピエール・ナカシュ 氏(Pierre NACCACHE)
Asystom Founding President
予知保全のためのインテリジェントモニタリング装置を提供しています。


オクターヴ・ラピロニー 氏(Octave LAPEYRONIE)
Fabriq President-CEO
ユーザーが業務上の問題をより早く解決し、情報を自由に流し、業務データを活用して日々の意思決定を強化することで、現場チームの日々の業務効率を向上させるクラウドアプリケーションを提供しています。


マテュー・キュラ 氏(Mathieu CURA)
Optimistik CEO
工場でのデータ利用を一般化して生産プロセスのパフォーマンスを向上させ、競争力と収益性の課題に対応することを可能にする産業向けアプリケーションの提供しています。


アメリック・ドゥ・ポンブリヤン 氏(Americ DE PONTBRIAND)
Scortex CEO
生産ラインで不良品を自動的に検出・分析するプラットフォームを提供しています。品質管理の自動化を実現できます。


フランソワ・クルドン 氏(François COULLOUDON)
Teeptrak CEO
様々な生産現場で1時間以内に設置でき、多くの機器と互換性を持つ産業用パフォーマンス・モニタリング・ソリューションを提供しています。

事業構想大学院大学で学ぶ、事業構想とは

後半では、「社会人大学で学ぶということ」と題し、文部科学省から認可を受けた社会人大学、事業構想大学院大学名古屋校より、当大学教授と修了生に登壇していただきトークセッションが行われました。
事業構想大学院大学は現在、東京、大阪、名古屋、福岡の4校があり、2022年4月には仙台校も開校が予定されています。

まず、冒頭に、一期修了生である西郷 鎮廣さんより、事業構想=MPD (Master of Project Design)とはなんなのか、事業構想大学院大学で学んだことについて、プレゼンテーション形式でお話がありました。


「事業構想大学院大学では、 ”大人のしがらみ” と ”子どもの眼差し”の両方を学んできたな、と感じています。”大人のしがらみ” とは1から10の部分。生み出したものをどうやって伸ばすかというところです。 ”子どもの眼差し” はクリエイティブの0から1を産み出す部分。このふたつが合わさったのがMPD(事業構想)。ひとことで言うと、『自らコトを起こす力』だと思っています」

『事業構想』とひとことで言うと壮大に感じますが、”大人のしがらみ”と”子どもの眼差し”という言葉が分かりやすく、MPDは身近な物事への考え方にも繋がるのでは、と感じました。

また、下平 拓哉教授、修了生の丹治 大佑 さん、名古屋市スタートアップ支援室長の鷲見 敏雄さん、前述の西郷さん4人によるトークセッションではそれぞれの、事業構想大学での学びや事業構想を学ぶ中での発見に意見が飛び交う場面が見られました。

特に印象的だったのは、丹治さんの、

「バックキャスティング(未来の姿から逆算して現在の施策を考える)の発想ができるようになったのが大きいですね。10年後、20年後の未来を描いてそのギャップを埋めていく、そんな思考が持てるようになりました。最近はデザイン思考なんて言葉もよくきかれますが、バックキャスティングの発想とよく似ていますよね。」

という言葉でした。

理想の未来と現実のギャップを埋める、そんなクリエイティブで前向きな視点はこれからの社会において誰にとっても重要であると感じました。

その後、修了生と在校生3名による事業構想ピッチが行われ、たくさんのポジティブなエネルギーを感じることができました。
事業構想ってなんだろう、そんなぼんやりとした疑問を払拭してくれる、有意義で学びの多い時間となりました。

事業構想ピッチ登壇者(順不同 VENTURECAFÉ HPより抜粋)

濱谷 政士 氏(Masahito Hamaya)
事業構想大学院大学(名古屋校)修了生 –2021年3月|事業構想修士(MPD)
生ゴミから肥料を作るコンポストをもとに、新しいコンポストサービス「コンポスペット」の事業化を目指しています。

山田 一貴 氏(Kazutaka YAMADA)
事業構想大学院大学(名古屋校)2020年度入学 現役生
地元新聞社勤務する中で感じた人々の朝の活用方法をアイデアとして、新聞配達と朝食が一緒に届くサービスを構想しています。

嶋川 祥子 氏(Shoko Shimakawa) 
事業構想大学院大学(名古屋校)2020年度入学 現役生
PDでの学びを業務に応用することで、仕事の質を上げるよう日々努力中。産後うつの女性の子育てを支援する事業を構想しています。

岡田 鉄平 氏(Teppei Okada)
事業構想大学院大学(名古屋校)2021年度入学 現役生
現職の保育事業部ゼネラルマネージャーとして認可保育園を13園運営している経験から、子どもの自己肯定感の向上、親子のつながりの場づくりからの地方創生を構想しています。

編集部まとめ

今回のイベントでは、前半、後半、両方のプログラムでスタートアップ企業によるピッチと、事業構想大学院大学の在校生、修了生の事業構想ピッチを聞くことができました。
それぞれから、前向きでエネルギッシュなビジョンを聞くことができ、よりよい社会、よりスマートな未来、を想像できます。
また、前向きな視点を自分自身にも置き換えることで、社会全体が明るく輝いていくようなイメージで仕事に取り組んでいけそうです。

次回イベント告知

■日程
2021年12月24日(金)16:00-21:00

■開催場所
なごのキャンパス
オンライン(ZOOM)

■概要
12月24日(金)の当イベントでは、2025年に開催が予定されている大阪・関西万博を受けて、2005年に開催された愛・地球博と2025年大阪・関西万博に携わる豪華な方々が登壇されます。

登壇される方は愛・地球博にて利用されたハイブリット情報端末「愛・MATE」の実証実験をプロデュースされた稲垣氏、大阪・関西万博PLLクリエイターの齋藤氏、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の参事の羽端氏、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会広報戦略局戦略事業部の今村氏です。

また、後半にはクリスマス・イブにふさわしくカラフルで未来的なネットワーキング演出を行い、聖なる夜を前に奏でるNoël Liveも開催されます。

ぜひご参加ください。

■詳細
https://ng18.peatix.com/

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