自分たちにしかない技術で、社会問題の解決に挑む — トビラシステムズ株式会社の明田篤氏にインタビュー

投稿者: | 2017-06-17

電話番号のデータベースに関して国内トップレベルを誇る企業が名古屋にあります。それが、トビラシステムズ株式会社です。自社製品の迷惑電話ブロックサービス「トビラフォン」や、パソコンが苦手な方も簡単にホームページが作れるシステム「HP4U」などの商品を展開しています。先日は社員の方が開発した位置情報共有型SNS「wellhash」のアプリリリースも話題となりました。今回はトビラシステムズ株式会社の代表取締役、明田篤氏にお話を伺います。

明田篤氏


トビラシステムズ株式会社代表取締役。愛知県豊田市出身。岐阜県大垣市にて起業し、2006年に株式会社エーアンドエーテクノロジアを設立。2010年に社名をトビラシステムズ株式会社に変更し、その5年後に拠点を名古屋に移す。自社製品の迷惑電話ブロックサービス「トビラフォン」が注目され、これまでに多数のメディアで取り上げられている。

— まずは、明田さんのプロフィールをお伺いしたいと思います。大学時代は音楽活動に尽力していたそうですね。


はい。私は名城大学の理工学部に入学しましたが、実は大学では音楽をやりたかったのです。高校の同級生とバンドを組んでかなり熱中していましたから、実質大学にはほとんど行かないまま中退してしまいました。しかし、音楽活動を成功させることは難しく、その後音楽の道は諦めて仕事を探し始めました。

私は幼い頃から機械が好きだったので、コンピュータ系の仕事をしたいと考えていました。数社の面接を受けたのち、なんとかコンピュータ系の仕事ができる企業に辿り着きました。技術に関しては自分で勉強していたので、アルバイトでの入社だったら、ということですぐに採用されました。しかし、入社した会社の業績が傾き始め、その会社の共同創業者が別に会社を立ち上げたので、私もそちらの会社へと移り正社員になりました。今から15年ほど前のこと、私が21歳くらいの頃でしょうか。

その当時は、岐阜県大垣市のソフトピアジャパン(IT企業が多く集まるインキュベーションエリア)が最盛の頃でした。ソフトピアに入居しているNTTコミュニケーションズの下請け企業として、私もNTTコミュニケーションズに常駐していました。1年間程そこで働いていましたが、自分の能力に対する現場の環境や待遇に満足していませんでした。このまま会社にいても成長できないと感じ、アメリカに会社を持っている方を通じて留学を兼ねた渡米も考えましたが、NTTの方とも相談して日本にとどまり、その後当時暮らしていた大垣市の自宅を事務所にして起業しました。

— トビラシステムズ株式会社として事業展開するまでに、どのような経緯があったのでしょうか?

2年ほどは個人で事業を行っていましたが、一人では限界があったので、2006年に株式会社エーアンドエーテクノロジアを立ち上げました。私の名前と共同創業者の名前が「アツシ」だったので、その頭文字のAを使った社名です。当初は受託開発を主に行っていましたが、リーマンショックが起こり受託事業が不安定になってきて、リスクを感じていました。受託事業はやり始めると安定しますが、受託に依存してしまい抜けられなくなる面もあります。その状況を抜け出せるかが重要なポイントだと思います。

その後2010年にトビラシステムズ株式会社に社名を変更しました。初めて作った自社製品は、美容院向けに開発したCTI顧客システム「PlatinumConcierge(プラチナムコンシェルジュ)」でした。しかし、この商品では営業がしにくく、もっと売りやすくて、ITの知識が少ないお客様にも使っていただける商品があればと考え、「HP4U」や「トビラフォン」が生まれました。「トビラフォン」はデータベースからフィルタリングした迷惑電話をブロックするシステムで、現在の主軸サービスとして提供させていただいています。

—「トビラフォン」は会社の看板商品として多方面から注目されていますね。しかし、現代では電話よりもインターネットを使う機会が増えて来たとも感じます。

画像引用元:トビラシステムズ株式会社 トビラフォン公式HP

たしかに、今の時代はスマートフォンやインターネットが一般化し、C-C間の通話機会は徐々に減ってきたかもしれません。しかし、B-C間の通話機会はまだまだ減ることはないと考えています。例えば、宅配ピザを注文する時や、企業に連絡をする時などは電話で通話しますよね。電話のニーズがある市場で、いかに事業を拡大できるかが私たちにとって重要なポイントだと考えています。

— ところで、先日トビラシステムズ株式会社の社員の方が位置情報共有型SNSアプリ「wellhash」を開発・リリースされましたね。どのような経緯でアプリが生まれたのでしょうか?

wellhash」を開発したエンジニアの佐々木さんは、家族思いで、真面目で、技術が本当に好きで、話も面白くて… 私はそんな佐々木さんが一人の人としてとても好きです。佐々木さんが良いアイデアを持っていることは以前から知っていたので、私は彼に賭けてみたいと思いました。「wellhash」ですぐに成果が出るとは考えていません。しかし彼なら、今後様々な過程を経て、違う形でもアプリをパワーアップさせてくれると考えています。今後は「wellhash」が持つ位置情報共有機能や匿名性を利用し、地図上に過去の犯罪・事件の事例や防犯に関する情報を載せて安全に繋げるなど、有効な活用法を見つけていきたいと考えています。

社内で良いアイデアを持っている方がいたら、実現できるチャンスを与えたいと感じています。何事も情熱がある方が取り組まなければ成功しないので、情熱を持った方は大切にしていかなければならないと考えています。そういった熱いスピリットがないと、泥臭いことには挑戦できませんからね。

— 今後、トビラシステムズ株式会社はどのような展開をしていくでしょうか?

左は6月からトビラシステムズの取締役に就任した後藤氏。温かい雰囲気のオフィスが魅力的です。

弊社はこれまで様々な変化を遂げながら現在に至りました。今考えていることも、きっと将来には変わっていると思います。弊社の電話番号のデータベースを使っていただいているお客様は、私たちの予想を遥かに上回るほど増え、日本中の方に「トビラフォン」をお使いいただいています。多くの方に使っていただけることで、日々電話番号に関する情報が集まってきます。蓄積したデータを解析して、さらに新しいことに活かしていきたいと思います。なおかつ、セキュリティの分野で伸ばして行きたいと考えています。

— 「トビラフォン」や「wellhash」のお話をされる中で、明田さんが特に防犯や安全の分野に力を注いでいる印象を感じます。

私が最も成し遂げたい根本的なことが、誰かが解決しなければならない社会問題をITで解決し、なおかつそれを広めていく手段としてしっかりと会社のキャッシュを回すことだからだと思います。私たちにしかできない領域で、社会的にも解決しなければならない分野に挑戦したいと考えています。すでに他社が取り組んでいる分野だったら事業化しやすいと思いますが、それは私たちが本当にやりたいことではありません。トビラシステムズにしかできないことと、社会的課題が重なった部分に挑戦し、会社としても利益を出しながら事業展開していきたいです。

— 現在、採用を強化しているようですが、どんな方と一緒に働きたいですか?

エンジニアの募集をしています。弊社の社員は、自らの努力やモチベーションでコツコツと成長してきた方々がほとんどです。名古屋には、優秀で技術力があるにも関わらず、大手企業に入って自分の実力をなかなか発揮しきれなかったり、楽しいと感じられる仕事に携われていない技術者がたくさんいる印象を受けます。そういった環境を抜け出して、社会貢献ができる弊社のサービスに関わりたい方、情熱を持った方と一緒に働きたいと思います。

編集部コメント

自分たちにしかできない技術で社会問題に取り組みたいという、明田さんの言葉がとても印象的でした。その言葉は、迷惑電話を撃退し、人々の生活上で防犯に役立っている「トビラフォン」が全国で拡大していくことでしっかりと実現されていると感じました。今後もトビラシステムズ株式会社の活躍に注目していきたいと思います。