#クリエイション・コア・名古屋特集 人々が暮らしやすい環境を実現する|株式会社トラステック愛知

投稿者: | 2022-01-19


日本は世界から見ても停電が少なく、電力供給が非常に安定していますが、昨今の異常気象によりゲリラ豪雨や大型台風などで想像を超える有事に備えて電力監視が必要です。便利で快適な電力社会を守るための電源監視装置の製造・販売を出がけるのが株式会社トラステック愛知(以下、トラステック愛知)。同社は現在、二酸化塩素を使った小型の除菌装置の開発も手がけ、ソフトウェア、回路、センサー設計など装置開発の技術力を生かし、クラウドファウンディングを利用してコロナ対策として求められる二酸化炭素濃度計「CO2KeeperNeo」の開発にも乗り出しました。

今回は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構「クリエイション・コア・名古屋」の入居・卒業企業特集として、人々のより良い暮らしを守る新製品の開発に取り組む株式会社トラステック愛知 顧問の辻武彦さん(写真真ん中)と、社員の堀田良さん(写真左)、グエン ドック フンさん(写真右)にお話を伺いました。

HP:http://tri-n.co.jp/

プロフィール

辻 武彦(つじたけひこ)(写真真ん中)
株式会社トラステック愛知
顧問

堀田良(ほったりょう)(写真左)
株式会社トラステック愛知

グエン ドック フン(写真右)
株式会社トラステック愛知

インタビュアー
齋藤 剛
東海エイチアール株式会社
ディレクター

日本全国で納入実績を持つ「電源監視装置」が主力商品

齋藤:まずは自己紹介と貴社の紹介をお願いいたします。

辻:私は大阪生まれで、父親の仕事の都合で愛知に来ました。始めはトヨタ系の会社を相手に電子計測器や検査装置の製品をつくる企業に就職して、営業兼技術職として働いていました。41歳の時に独立し、株式会社マックシステムズという会社を創業しました。その後株式会社TRマックエンジニアリングを創業しているのですが今はどちらも退任し、2015年にトラステック愛知の社長に就任させていただきました。現在は同社の顧問をしています。

堀田:私はこの会社に来て3年目になります。主な仕事は二酸化塩素ガス除染システムの設計や組み立てをしています。この会社に来ることになったのは、元々私の父が顧問の辻さんと仕事をしていたことがあり、辻さんに「うちで働かないか」とお声をいただき入社する運びとなりました。今は仕事を通して父が取り組んでいた二酸化塩素ガス除染システムを引き継いでおり、とても深い縁を感じながら働かせていただいております。

(*当記事の「除染」は製薬・医療関連で扱う用語であり、一般的な「除菌」と同様の意味。)

フン:私はベトナム出身です。ベトナムの大学では電子関係を専攻しており、大学卒業後に来日して株式会社TRマックエンジニアでエンジニアをしていました。5年ほど働いた後一旦帰国したのですが、辻さんとはメールのやりとりが続きました。「次はトラステック愛知で働かないか?」と声を掛けていただき、2016年に再来日し入社しました。今は生産管理部に所属し、生産管理システムのプログラムの更新、在庫管理を担当しています。

齋藤:貴社の主力商品は何ですか。

辻:「電源監視装置」です。工場やビル、メガソーラー施設で漏電やショートをすると地域全体が停電してしまうことがあります。それら電力系インフラを監視し、大規模な停電を防ぐ製品が「電源監視装置」です。大きな電圧を使う施設のシステムが正常に動いているかを監視し、トラブルが起きた時に、事故系統や事故設備を電力系統から迅速に切り離し、トラブルの拡大を防ぐことができます。

齋藤:「電源監視装置」はどのような地域に納入されているのでしょうか。

辻:日本全国で納入実績があります。駅や生産工場、商業施設や地下街など電気がたくさん使われる施設に使っていただくことが多いです。最近は太陽光発電と一般の電気設備とのハイブリッドで使われることも増え、電気の切り替えでトラブルが起きないように監視する必要性がますます高まっていると感じています。

齋藤:日本全国で納入実績を持つ貴社の製造に関する工夫がありましたら教えてください。

辻:納入で一番時間がかかる工程が製品出荷前の検査です。効率的に検査をするために、自動検査機を導入しています。例えば株式会社東光高岳さんのブランドで作らせていただいているデジタル形保護計測装置「PACGEAR」の場合、製品出荷前の検査がものすごく複雑でコストがかかっていました。そこで補助金をいただき3年ほど前に自社で自動検査機を作ったんです。その検査機を使うと昼夜稼働ができ一晩で16台の検査ができるようになりました。そんな工夫を重ねて生産効率を上げています。

社員が互いの技術力を認め合い、新規事業に挑戦しやすい環境が整っている

齋藤:最近では除菌装置など新製品の製作にも取り組まれていますよね。

辻:「電源監視装置」は10年も20年も前からやっている技術なのでそんなに新しいものではないんです。当社には3DCAD、制御設計やマイコンプログラミングといった様々な技術を持った社員がいますので「せっかくだから何か新しいことにも挑戦したいね」と作り始め出来上がった装置が、除菌装置や二酸化炭素濃度計の製作でした。

齋藤:除菌装置や二酸化炭素濃度計というと、やはり新型コロナウイルス対策ということを視野にいれていらっしゃったのですか。

辻:そうですね。元々堀田や堀田のお父様が取り組んでいたことが、二酸化塩素ガスを用いた製薬会社向けのクリーンルームを作るための除染装置作りだったんです。従来クリーンルームを実現するにはホルマリンという薬が使われていました。しかし、ホルマリンは発がん性もあり有害です。二酸化塩素ガスを用いればもう少し安全に有用な除菌ができるのではないかと考えたんです。

話を進めるうちに、新型コロナウイルス対策として病室を除菌する二酸化塩素ガスを使った小型装置の製品化を目指そうということになりました。研究を重ねた結果、クリーンルームの菌が最高99.999999%まで除菌する装置ができあがりました。

齋藤:それが2019年販売の「ESCOWillmaster」や2020年販売の空間除菌装置「奏」「計」という商品になるんですね。

辻:そうです。「ESCOWillmaster」は、ウイルスを除去する二酸化塩素ガス発生装置で、除染時間を大幅に短縮し作業の無人化を実現する機器です。さらにその機能を小型化して病院や飲食店、ホテル、介護施設でも使っていただけるようにしたのが「奏」や「計」になります。薬液は二酸化塩素水を使用し、濃度は10ppm(*1)程度、数分間で除菌が可能な装置となっています。使用するにあたり、しっかり除菌されたかを確認したり、人体への影響がない濃度に下げる制御しながら確認する必要があるので、測定濃度の精度を0.001ppmまで向上させました。人間に影響を及ぼさない濃度が0.1ppmとされていますので、かなり高精度の計測ができるようになっていると思います。

(*1)ppm=parts per million(パーツ・パー・ミリオン)のことで100万分の1を表す。

齋藤:高精度の計測が実現できたのは長年「電源監視装置」で培ってきた技術力の他にも新技術を次々と取り組む姿勢が貴社にはあるように思います。

辻:新しいものを作りたいと思っても、ソフトウェア、回路、センサーのことを熟知している人間がいないと実現することができません。幸い当社には様々な経験を持ったスタッフがいるので新製品の開発にも積極的になれたところがあると思っています。

堀田:弊社は人数が少ない分、新製品の開発をする時、私みたいな機構設計の人間とプログラマー達が同じ部屋で仕事ができるというのも大きいと思います。大きな企業であればそれぞれが別々のところで働いており、お互いに言いたい事だけ主張しあってなかなか開発が進まないこともあると思うのですが、弊社は風通しがよく改善点を見つけたらすぐ隣にいる人にお願いできるため商品開発ペースも早いと思います。

フン:技術力を持っている社員が多くて、今までに取り組んだことのない新案件を辻さん が持ってきても実現させてしまうところが素晴らしいと思っています。スタッフ同士の信頼が厚いのが当社のいいところですね。

クラウドファウンディングを利用した新商品開発にも着手

齋藤:二酸化炭素濃度計はクラウドファウンディングを使って開発されたとお伺いしました。

辻:そうなんです。偶然クリエイション・コア名古屋のスタッフの方に教えていただいて、挑戦してみました。クラウドファウンディングで取り組んだのは二酸化炭素濃度計の「CO2KeeperNeo」という製品の資金募集です。これまで弊社はBtoBの製品が多かったのですが、初めてBtoCに取り組みました。

齋藤:どのような機能が搭載されているのでしょうか。

辻:主な使用用途は空気中の二酸化炭素濃度の測定です。1,000ppmに達すると「ピピピ」と音が鳴り換気を促す仕組みになっていて、さらには換気扇と連動させまして、基準値を超えると自動的に換気扇を回してくれる機能も付けています。

熱中症対策に必要な暑さ指数(WBGT)や絶対湿度といって空気中に含まれる水分量を示す値を表示できるようになっています。医師会によって絶対湿度が11g/㎥以下になるとインフルエンザのウィルスが流行しやすくなり、さらに7g/㎥以下になるとさらに流行が起こりやすくなるとされているので、冬の感染対策にも使える指数なのではないかと思います。

齋藤:コンパクトな機械の中にそんなにたくさんの機能が詰め込まれているとは驚きました。

辻:二酸化炭素濃度を測るだけの機械なら世の中にたくさん出ています。差別化を図るために複数の機能を付けさせていただきました。当初は幼稚園やジムなどで使っていただく想定だったのですが、クラウドファウンディングを始めると個人の方から買いたいというご要望をいただいたことが意外でした。今は、東急ハンズ名古屋店で展示販売していただいたり、ヤマダ電機さんのオンラインショップ「ヤマダモール」でも販売していただいています。また、2月の日経トレンディにも掲載させていただきます。

「空気」に着目した製品開発を広げていきたい


齋藤:トラステック愛知の今後の目標をお聞かせください。

辻:これまでは電源監視装置などを主力事業としていましたが、今後は「空気」に着目した事業に力をいれていきたいですね。新型コロナウイルスの流行で、きれいな空気が注目されるようになってきているので勝機はあると考えています。

今ご依頼をいただいているのは、オゾンガスを発生させる装置を作る会社様からの「オゾンガス濃度計」の作製です。オゾンガスは脱臭作用や殺菌作用から注目が集まっているものなので、そういった物質を上手にコントロールして使うことができる技術を提供したいと考えています。

齋藤:最後に、今後クリエイション・コア名古屋に入居を考えている方にメッセージをお願いします。

辻:クリエイション・コア名古屋は研究や実験をする設備の導入を念頭に置いたつくりになっているため、ものづくりに取り組みたい会社にはとてもいい場所ではないかと思います。

先日も大きな機械の購入をしたのですが、IM室の方がサポートくださりスムーズに搬入することができました。また、常駐のインキュベーションマネージャーの方にコンサルティングをしていただけるので、資金調達方法や補助金の支援、他の会社さんの紹介などありとあらゆるサポートをしていただけるのもありがたいポイントです。

クラウドファウンディングも私たちだけでは知りえることがなかったと思いますが、インキュベーションマネージャーの紹介で挑戦することができました。こちらに入居すればやりたいことの可能性を広げてもらえること間違いないと思います。

編集部コメント

トラステック愛知は会社内の技術力のみならず、生産性を上げる工夫、新技術に向けた積極的な姿勢をもち、新製品を開発している様子が伺えました。世の中の人々の暮らしを土台から支える製品を開発している同社には、時代のトレンドを汲み取り予測することが重要に感じました。
今後のトラステック愛知の活躍に期待が高まります。

入居検討者の方に向けて

クリエイション・コア名古屋では、入居企業を募集しています。ご興味のある方は、下記のリンクからぜひお問い合わせください。

▼クリエイション・コア名古屋 HP
https://www.smrj.go.jp/incubation/nagoya/index.html

▼お問い合わせフォーム
https://www.smrj.go.jp/incubation/nagoya/contact/index.html

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