深紫外技術の商用化に挑む ~ 旭化成×名大の共同研究からULTECが誕生 ~

投稿者: | 2025-09-04

左から張梓懿、天野浩(名古屋大学 名誉教授 兼 ULTEC技術顧問)、久志本真希(名古屋大学 准教授 兼 ULTEC技術顧問)、吉川陽:プレリリースより引用


旭化成株式会社(本社:東京都、社長:工藤 幸四郎氏)は、同社のスピンアウトベンチャーとして、ウルトラワイドギャップ半導体技術を基盤とするULTEC株式会社(在地:名古屋市千種区、CEO:吉川 陽氏、以下:ULTEC)を設立したと発表しました。ULTECは、窒化アルミニウム(AlN)を用いた深紫外線レーザーダイオード(UV-C LD)などの開発を進め、先端技術の社会実装と市場開拓を目指します。

ULTECは、旭化成と名古屋大学 天野・本田研究室が2017年より共同で取り組んできたUV-C LDの研究成果を基に設立されました。2019年には世界初の室温パルス発振、2022年には同じく室温連続発振を達成し、2024年6月には世界的なレーザー技術賞「Berthold Leibinger Innovationspreis」にて第3位を受賞するなど、国際的にも高く評価されています。

しかし、技術の先進性とは裏腹に、UV-C LDは未だ確立された市場が存在しない分野でもあり、従来の社内事業化手法では対応が難しい状況にありました。これを受け、旭化成は非連結のスピンアウトスタートアップとしてULTECを立ち上げ、ライセンス供与によりスピーディーな意思決定と外部資源の活用を可能にしました。また、名古屋大学の研究設備を活用したファブレス体制により、アセットライトな事業構築を進めています。

プレリリースより引用

出向起業制度が後押し 未成熟市場への社会実装を加速

ULTECは、経済産業省が推進する「大企業等人材による新規事業促進事業(出向起業)」の支援を受け、旭化成の従業員である吉川陽氏と張梓懿氏が役員として出向し、事業の立ち上げを担っています。今後は、深紫外レーザー技術を活用した工業、医療、環境分野への応用を見据え、パートナー企業とのPoC(概念実証)や製品開発を進めていく方針です。

旭化成では、コア技術や人材といった無形資産を活用し、オープンイノベーションの推進によって新たな価値創出に取り組んでおり、ULTEC設立はその象徴的なプロジェクトの一つと位置づけられています。先進技術による持続可能な社会の実現に向けて、今後の動向が注目されます。

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