中部電力アクセラレータプログラム最終審査会レポート|全9社のピッチ内容を紹介

投稿者: | 2018-02-16

「中電」の略称でお馴染みの中部電力が実施するアクセラレータプログラム「COE(声)Business factory 2017 -中部電力 Accelerator Program-」の最終審査会が、名古屋市東区の東桜会館にて2018年1月18日に開催されました。

※この記事は、中部電力が実施する「COE Business Factory 2017 -中部電力 Accelerator Program-」及び「スマートポールプロジェクト」、「COE 技術・ソリューション」の3プロジェクトのPRを目的とした記事です。なお、広告記事の詳細に関してはこちらをご覧下さい。

会場には多くの報道陣が集まり、6人の審査員とともに、2017年7月の募集開始から2度に渡る審査を勝ち抜いた9社の企業が行う最終ピッチに耳を傾けました。その中から、最優秀賞を1社、優秀賞を2社が受賞。本記事では、全9社のピッチ内容と受賞企業の代表者コメントをレポートします。

同プログラムの背景や目的、2次審査会レポートは以下の記事をご覧ください。

株式会社eWeLL「医療×IT×情報 手書き書類からデジタルへの移行 国内発の医療情報ビッグデータ化の実現」

株式会社eWeLL(本社:大阪府大阪市)の提供する『iBow』は、看護記録やレセプトの電子化により、業務の生産性を向上し、訪問看護をトータルにサポートするサービス。クラウドベースの訪問看護専門の電子カルテシステムを軸に、訪問看護師の看護記録や地域医療ヘルスケア領域の連携をITでシステム化している。現在は400の訪問看護ステーションが顧客で、その中で3600名の訪問看護師がiBowを利用し7万回の訪問看護を行っている。この療養ケアビッグデータと、スマートメーター(※)による電気使用量をビッグデータ化し、AIで解析することで宅内の異常検知を行う「見守りサポートサービス」、オプションとして「緊急駆けつけサービス」を提供していきたい。

※スマートメーター…30分ごとの電気ご使用量を計測する機能や通信機能を備えた新しい電気メーター

加藤電機株式会社「SANフラワーを利活用した人・モノの動態管理および捜索、発見システム」

 

セキュリティ機器開発を行う加藤電機株式会社(本社:半田市)が提供する『SANフラワー見守りシステム』は、小型の発信器を使用して人やモノの居場所を動的に管理するシステム。電柱に設置された受信機の『SANアンテナ』が、『SANタグ』の発信する電波をとらえて、ある程度の居場所を探索することができる。さらに『SANレーダー』を活用することでSANタグの距離と方向を感知し、捜索発見が可能。その位置検索誤差は約50cmで、既存のGPSを用いた他社位置情報システム(誤差10m~数100m)よりも優れている。さらに、インターネットで300ヶ所までの立ち寄り先履歴も確認できる。通信が遮断された場合でもSANレーダーによるローカルエリアでの検索も可能。『SANフラワー見守りシステム』を活用し、社会問題化している認知症徘徊行方不明者の捜索や子どもの見守りなど、中部地域の安全安心に貢献したい。

株式会社キスモ「“画像認識AI”を用いた、街づくりアナリティクスツールの提供」

AI関連事業を展開する名古屋大学発ベンチャー企業の株式会社キスモ(本社:名古屋市中区)は、“街づくりアナリティクスツール”を提案。これは、中部電力の電柱に設置したカメラで人や車の流れを補足し、その画像をAI技術で解析し、結果を数値で提供するもの。土地の価値の評価や行政にデータを提供しているリサーチ事業者や、商業施設(不動産)、小売業者に対して、既存の交通量調査を画像認識に置き換えて解析し提供することで、マーケティングのコストダウンにもつながる。また解析したデータは、商店街全体の人や車の流れをもとにした街づくりや観光投資、タクシー事業者の配車計画、バス・電車の運行計画にも活用できる。中部地域の、データに基づいた新しい街づくりと地域経済を支援したい。

グリーンコンチネンタル株式会社「GREEN TREK PROJECT-植物産業の6次化P/J-」

 

土、花、植物の生産・販売・レンタル・空間演出事業・メンテナンス・植物IoT事業を手がけるグリーンコンチネンタル株式会社(本社:大阪府住之江区)は、新規就農インフラと、愛知県でも増加している耕作放棄地の解消を提案。中電が耕作放棄地に生産オアシス(IoTを導入したハイテク温室)を建て、新規就農を希望する個人や法人を呼び込み、中電は月額定額制の就農インフラを提供。生産した花きは、グリーンコンチネンタルが買い上げ、高感度マーケット(美容・住宅・オフィス)に販売・レンタルする。3大都市圏に近い東海地方で、新しい6次元の“グリーンテック産業”を中電と協業し、創出したい。

タイムカプセル株式会社「地域ポイント導入支援事業~IT×スポーツで地域活性化~」

マイナンバーカードのログインアプリを開発しているタイムカプセル株式会社(本社:岐阜県岐阜市)は、「地域ポイント(自治体ポイント※)導入支援事業」を提案。これは、個人が保有するさまざまなポイントを、マイナンバーカードを利用して自治体ポイントに交換し、地域で利用できるようなシステム構築や導入をワンストップでサポートするもの。自治体ポイントを普及させることで、地域活性化を目指す。中部電力の「カテエネ」と連携し、決済代行サービスを行ってもらうことで、中部地区の自治体ポイントの普及促進を推進したい。

※自治体ポイント…「1自治体ポイント=1円分」として、地域の商店街での商品購入、公共施設の利用料、オンラインでの物産購入などに利用できるポイント(マイナンバーカードの普及率向上のために、総務省が推進している事業)。

テラドローン株式会社「中部地域における空のプラットフォーマーへ」

ドローンを活用した土木測量、鉱山測量、橋梁をはじめとした施設点検、オイル&ガスの点検作業サービスを行うテラドローン株式会社(本社:東京都渋谷区)は、ドローンを安全に飛ばすためのプラットフォーム事業を提案。ドローンが送電線周りを目視外飛行(自動飛行)するためには、低空域の気象情報や位置情報、電波などのリアルタイムの情報が必要。さらに現在は電線の位置を把握できないため、送電線周りの飛行は不可能。中部電力と協業することで、送電線周りのIoTセンサデバイスから必要な情報を得ることでこの問題を解決し、ドローンの自動飛行を可能にしたい。

livepass株式会社「送配電設備×オムニチャンネルマーケティング=中部地方スマートシティ化」

動画制作サービスやマーケティングサービスの開発・提供を行うlivepass株式会社(本社:東京都港区)は、中部電力の送配電設備を利用したデジタルサイネージ広告を提案。サイネージ広告は、広告素材の制作、配信管理システム、ディスプレイの設置場所に課題がある。livepassが所有する技術を利用すれば、気温・天気・時間帯・場所・歩行者量などのリアルタイム状況に応じた動画広告を配信できる。既存のサイネージ広告枠を買い取り分割して広告主に提供する、地場企業の場所を借りる、路面ガラスを配信場所にする、まずはこの3案で設置コストに見合う媒体価値を確認する。将来的には中部電力の地上変圧器をデジタルサイネージ化し、ネットワーク化した地場のサイネージとともに広告配信サービスを提供したい。

ユカイ工学株式会社「高齢者声かけコミュニケーションサービス“ふぁみロボ”」

ロボットやハードウェアの開発・製造・販売を行うユカイ工学株式会社(本社:東京都新宿区)は、コミュニケーションロボット『BOCCO』を活用した高齢者向けコミュニケーションサービスを提案。『BOCCO』は、スマートフォンのアプリと連動し、家にいる家族と気軽なメッセージのやりとりができる。そこにチャット型の対話AIとオペレータ対応を組み合わせた対話システムを組み合わせることを想定。これにより、自由度の高い声かけサービスを提供し、高齢者の認知機能の維持やさりげない会話の相手となるようなコミュニケーションロボットを実現する。中部電力との協業で、高齢者向けコミュニケーションサービスの普及促進を目指したい。

レスク株式会社「カセット型バッテリー用プラットフォーム」

e-モビリティ(電動スクーター・電動バイクなどの小型EV)の提供を通じて再生可能エネルギーの普及を目指すレスク株式会社(本社:東京都港区)は、e-モビリティ本体と充電ロッカーを組み合わせたバッテリーシェアリングサービス『e-プラットフォーム』を提案。e-モビリティのバッテリーはスマートフォンとペアリングされており、スマートフォンで電池残量の確認や充電ロッカーの検索と交換予約が可能。充電ロッカーの設置場所は、バッテリーを非常用電源として利用できる。将来的には、回収されたe-モビリティの劣化バッテリーをメガロッカー(大型定置用蓄電池)に再利用し、ICTシステムで制御したスマートグリッド(※1)・VPP(※2)サービスを提供する。中部電力との協業で、中部地区でのバッテリーシェアリングサービスのプラットフォーム構築を推進したい。

※1 スマートグリッド…電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網
※2 VPP(バーチャルパワープラント)…各地に分散している太陽光や蓄電池のエネルギーを、IoTを活用して統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させること

受賞企業の代表者コメント

最優秀賞は、加藤電気株式会社が受賞しました。代表取締役社長の加藤 学氏は「電気に関わる多岐な事業で、多様な社会課題を解決していきたい」とコメント。また優秀賞を受賞したテラドローン株式会社の事業戦略本部長・金子 洋介氏は「電池やAIの話など自社にない知識を得られることができたし、楽しかった」とコメント。同じく優秀賞を受賞したレスク株式会社の代表取締役・鈴木 大介氏はプログラムを振り返り「メンターの方からいろんなアドバイスをいただき、参加してからもすごく勉強になった」と感想を述べました。

また記者会見では、中部電力の代表取締役・電力ネットワークカンパニー社長の松浦 昌則氏が「今後は事業化に向けて、できるだけ早い時期を目指して調整していく。受賞を逃した6社の提案内容も魅力的だったので、継続して話をしていきたい」と総評を述べました。

半年間にわたり行われてきた、中部電力のアクセラレータプログラム。中部電力も早い段階での事業化を目指しています。ここから生まれた新たな事業が、中部地域の活性化ひいては社会の発展に貢献することが期待されています。