独自トークン発行でホルダーがサービスを盛り上げる仕組みを作る ー Bitcoinショッピングサービス「Avacus」を手がける起業家まつかぶ氏のスタートアップ思想とは

投稿者: | 2018-02-21

昨年12月末にローンチしたBitcoinショッピングサービス「Avacus」は、独自のトークン「VACUS」を発行し、リリース直後に多くのユーザーを集め注目を集めました。そんなAvacusを運営するのが、仮想通貨起業家のまつかぶ氏(@matsukabu)です。今回はNagoya Startup News 編集部よりまつかぶ氏に取材の依頼をし、Avacusの構想について伺ってきました。

まつかぶ氏|プロフィール

1990年生まれ、東京都出身・愛知県育ち。南山大学法学部卒業後に起業し、Bitcoin関連サービスや海外インバウンドメディアを複数立ち上げる。2017年12月末にBitcoinショッピングサービス「Avacus」をローンチ。

大学卒業後、いち早く仮想通貨事業に注目

若目田:「Avacusの創業者について知りたい」とTwitterで話題のまつかぶ氏ですが、まずはその正体について明かして行きたいと思います。よろしくお願いします。

まつかぶ:わかりました(笑)

若目田:ではまず、自己紹介も踏まえて、Avacusを作る前の経歴を教えて頂いてもいいですか?

まつかぶ:実は、僕は根からの起業家ではありません。20歳のころにFXを始めたのがスタートで、今に至るまで複数の商品に触れて起業家自体に投資をしたりと、起業家よりも個人投資家としての活動が原点にあります。Bitcoinに注目し始めたのが2014年、ここで初めて起業家としての側面を持ちました。

大学卒業後、すぐ会社を設立し、まず最初にBitcoinを使ったオークションサイトやフリマサイトなどのサービス作りを試行錯誤しつつ取り組んでいました。その頃は、Zaifやbitflyerのような取引所がまだ無い時代で、Bitcoinがどこかの決済手段に追加されたニュースで界隈が大騒ぎになるような、今よりももっと投機商品(利益を狙って売買される商品)として扱われている頃でした。

そこから一旦仮想通貨から離れて、東京オリンピックに向けて日本文化を伝える海外インバウンドメディアをやっていました。その後、Avacusプロジェクトを立ち上げ今に至っています。

AvacusはBitcoinを使って買い物をしたい人とBitcoinをこれから持ちたい人を繋ぐサービス

若目田:Avacusについて分かりやすく説明して頂いても良いですか?

まつかぶ:一言で言うと、AvacusはBitcoinを使ってAmazonでお得に買い物ができるサービスです。

Bitcoinを使って買い物をしたい人と Bitcoinをこれから持ちたい人。僕らは前者を「Shopper」、後者を「Buyer」と呼んでいるのですが、この両者をマッチングさせるサービスになっています。

Shopperが買いたいと言っている商品をBuyerが代わりに買ってあげる。ShopperからBuyerに支払われる報酬がBitcoinで、渡すBitcoinの額を調整することで、実質的に割引で商品を購入することができます。

若目田:そのマーケットプレイスにAmazonがあるということですか?

まつかぶ:その通りです。BuyerはAmazonギフトやポイントなど、Amazonの決済手段ならすべて使うことができます。シンプルな仕組みです。

トークンのホルダーがAvacusの事業を成長させる

若目田:昨年12月26日にローンチして、今はどのくらいのユーザー数なんですか?

まつかぶ:リリースして半月で1000人を突破しました。想像以上に伸びたなと。

若目田:SNSでも話題になっていましたよね。創業時から仮想通貨に注目していたまつかぶ氏が、Avacusの構想を思いついたきっかけは何だったのでしょうか?

まつかぶ:これから仮想通貨が世の中に普及して、個人投資家が増えていく時代になると思うのですけど、突然資産を持った個人投資家が増えても、どこに何を投資していいか分からないと思うのです。

個人投資家の方々が、世の中の面白いものに投資できる仕組みを考えた時に、事業者がトークンを発行し、協力してくれる保有者にインセンティブを与える新しい起業の形を作ろうと思い、今の事業に至りました。

誤解を恐れずに言うならば、本来は利益先行型の投資家とビジョン先行型の事業者の関係は、成り立たないときが多いと感じます。

若い起業家たちは面白いプロダクトのアイディアがあるのにも関わらず、資金調達できない状況が起きたり、方向転換せざるを得ない状況になることもあります。あるいは、生き延びるために受託をやって、その間にアイディアが腐ってしまう。そういう状況を僕は目の当たりにしてきました。

面白いプロダクトやサービスが日本から中々生まれない原因はまさにそこにあると思っていて、仮想通貨を使った新しい資金調達の手段やスタートアップの仕方を作りたいなと。個人投資家と事業者が新しい形で連携できないか、その媒体として僕らは「VACUS (バッカス)」というトークンを発行しています。

若目田:そのVACUSに連動するサービスが、Avacusなんですね。

まつかぶ:そうです。AvacusはCtoCのエスクロー付きマッチングサービスで、手数料ベースの収益モデルになっています。

手数料の一部をホルダーに還元される形のトークンを作る。VACUSを買ってくれた人にとって、どの行動をとることが一番利益が最大化できるかというのを突き詰めると、手数料が発生する機会が増えることなんですよ。要するに、Avacusが盛り上がることなのです。

だからVACUSのホルダーが利益を得るために一番合理的な方法は、Avacusを応援することなんですよ。

VACUSのホルダーである限り、Avacusが盛り上がるために行動することが一番良いのです。目線は違うかもしれないけど、事業者と個人投資家が横並びになり、同じ方向に向かってアクションを取ることができる。これが新しい個人投資家と事業者の連携の形だと思っています。

ビジョンを実証すべく、まずは自分たちがVACUSのホルダーに

若目田:お金の流れをデザインしているんですね。

まつかぶ:そこがこの事業の面白い部分でもあります。Avacusはそ取っ掛かりとしてのサービスとなっています。

まつかぶ:実際に僕もVACUSのホルダーですし、提携している開発会社もホルダーなんですよ。開発会社に相談して、「予算どのくらいですか?」と聞かれた時に、「円じゃなくてバッカスで払わせて下さい!ビジョンを実証するためにまず自分たちがホルダーとしてやるべきだと思うんです」と交渉しました。

若目田:(笑)

まつかぶ:無茶苦茶なこと言ったんですけど、最終的には受け入れてくれました。VACUSは0.2円で始まったんですけど、開発が受け取ったVACUSをいくらにするかは開発次第でもあります。実際、驚くくらい開発が頑張ってくれたお陰で、今は7円にまで跳ね上がっています。

若目田:それがモチベーションになっていると。

まつかぶ:そうですね。この構図は開発以外のホルダーの方のモチベーションにも繋がっていて、この前はアパレル系の事業をされている方がAvacusのパーカー作りましょうって提案してくれて、実際に作って送ってくれて、僕を含めた初期ホルダーに配りました。今着ているのが、そのパーカーです。中には非公式アプリを作ってくれた方もいるんですよ。

若目田:ホルダー同士がサービスを通してAvacusを成長させるためのコミュニティになっている。SNSでも多くシェアされていた要因はここにあったんですね。

まつかぶ:そうです。そして起業家はホルダーに対して、「VACUSのトークンを売るよりも所持していたほうが良い」と感じさせるインセンティブを与え続けなければならないと思っています。例えばAvacusが何もしないと明日にもVACUSは価値がなくなりますし、起業家は継続的な努力をしなければなりません。こういった起業家の努力も、個人投資家と起業家が連携するためには必要不可欠です。

インセンティブの設計を意識したスタートアップ支援も視野に

若目田:VACUSやAvacusの仕組みは多方向へ展開できると感じます。今後はAvacus以外のプロダクトのリリースも視野に入れているんですか?

まつかぶ:まずはAvacusを大きく成長させていく予定です。

また、面白いアイディアを持っている事業者の方がいたら、投資家の立場でVACUSのようなトークンを使った開発、スタートアップ支援も視野に入れてお話を聞いていきたいと思っています。インセンティブの設計とフェアネスというキーワードで皆が面白がって参加できるエコシステムを作っていきたいです。

この仕組みが、日本の若手起業家の救世主になればいいなと強く思います。

編集部コメント

投資家としての視点と起業家としての視点を活かし、仮想通貨を使って新たなスタートアップエコシステムをつくるまつかぶ氏。Avacus、VACUS以外の活動にも今後注目が集まります。

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