経済産業省が2018年に発表した『DXレポート』によると、「企業はDXの必要性を理解しているものの、既存システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化やIT人材不足によって、2025年~30年の間に最大12兆円の経済損失が生じる“2025年の壁”を迎える」と指摘しています。そのため、地域単位でのAI人材やIoT人材の発見や育成が急務となっています。
名古屋市でもスタートアップ支援施策と合わせて、AI・IoT人材BOOSTプログラムが開催されており、第3回目の開催が2020年9月上旬から始まります。
AI・IoT人材BOOSTプログラムとはどんな内容でどんな成果が得られるのか、今回は昨年度のプログラムに参加した3名にインタビューしました。
AI・IoT人材BOOSTプログラムとは
AI・IoT人材BOOSTプログラムは、AI・IoTの技術や事業開発に必要なさまざまなスキルや知識を数ヶ月かけて学ぶ、名古屋市主催の体験型プログラム。学習のみで終わることなく、インプットとアウトプットを繰り返しながら、アウトプットに対するユーザー評価を通じて、短期間でアウトプットの精度を上げていく「OUTPUT型 新規事業創出・学習プログラム」です。
同プログラムは、名古屋市がイノベーター10,000人を輩出するための「NAGOYA BOOST10000(ナゴヤブーストテンサウザンド)」を構成するプログラムの1つとして運営されており、AI・IoT人材BOOSTプログラムの中で作った成果を、令和3年2月に開催予定のNAGOYA BOOST DAYにて発表します。
インタビュー|株式会社TOWING COO&CTO 西田 亮也氏
1人目のインタビューは、株式会社TOWINGのCOO&CTOである西田 亮也氏。同社は、宇宙農業ビジネスを研究開発中。前回のNAGOYA BOOST DAYでは最優秀賞を受賞しました。
—どのような事業をされているのか教えてください。
西田:循環型栽培システムの研究開発を行っています。よくある植物工場は、化学肥料ベースで作物を栽培しています。そこで使用される化学肥料は、製造する際に化石燃料を使用するため、環境負荷をかけることが問題になっているんです。
そこで、植物の食べない部分や都市から出るゴミを肥料や土にかえて、都市の中での「循環」をデザインすることで環境負荷を抑えた、栽培システムを開発しています。
ーAI・IoT人材BOOSTプログラムをどのようなきっかけで知りましたか?
西田:「NAGOYA HACKATHON」に出たときに、紹介してもらったことがきっかけです。
—参加してみて、いかがでしたか?
西田:すごい技術を持った方、会社を立ち上げた方、ちょっとトガった方からいろんな刺激を受けました。いいつながりができたと思います。私のビジョンに共感してプロボノ的に関わってくれる方もいますし、私自身も他の方のやりたいことを手伝ったりもしていますよ。イベントとしてはハードですが、その分、まわりに向けて一つ突き抜けるための一歩を踏み出すためにも、いい機会になると思います。
インタビュー|東朋テクノロジー株式会社 エレクトロニクスIoTソリューション事業部 取締役事業部長 富田 剛史氏
2人目のインタビューは、東朋テクノロジー株式会社の富田 剛史氏です。同社は2020年に創業190周年を迎える老舗企業で、メカトロニクス・エレクトロニクスのテクノロジーを駆使した自社オリジナル製品から、日立グループをはじめとした各有力メーカーの商品の販売、空調やクリーンルームの工事施工、産業機器・空調機器のメンテナンス業務など、多岐にわたる商品・サービスを展開しています。
—普段は社内でどのようなお仕事をされていますか?
富田:営業や開発のプロマネを行っています。
—AI・IoT人材BOOSTプログラムをどのようなきっかけで知りましたか?
富田:弊社はTongaliプロジェクトのサポーター企業で、事務局の方から紹介していただいたのがきっかけです。
技術が陳腐化していく中で、新しい技術をどう取り込んでいくかが課題でした。それで、ベンチャーや大学発ベンチャーと一緒に、新しいことにチャレンジしていきたいと思っていたんです。
—参加してみて、何かメリットはありましたか?
富田:最新のツールやトレンドに対して前向きになれましたね。弊社の事業領域の産業界では、使うツールや技術が保守的なんです。プログラムの中で実際に使ってみることで、どれだけ効率が上がるのかということもわかって。まだ構築中ではありますが、これから実際にRaspberry Piを使ったシステムをお客さまに提案できるようになると思います。
—参加を検討している方にメッセージをお願いします。
富田:こういったプログラムに参加するには、起業家を目指していたり、かっこいいアイデアやビジョンを持っていたりすることが必要だと思われがちです。でも、まずは参加してみるのもありだと思います。ビジョンができてから…と思っていたらずっと参加できないままです。参加しながら考えていけるというのもあるし、まずは一歩踏み込んでみてほしいですね!
インタビュー|三菱電機株式会社 北村 裕氏
3人目のインタビューは、三菱電機株式会社の名古屋製作所で生産技術を担当している北村氏。プログラム終了後も、そこで出会った有志と活動を継続中です。
—普段は社内でどんなお仕事をされていますか?
北村:生産技術を担当しています。工場に生産設備を入れたり、カイゼンをしたり、主に社内に向けた仕事ですね。
—プログラム参加のきっかけを教えてください。
北村:会社の先輩に教えてもらったんです。前回のプログラムの半年前くらいから、先輩とAIについての社内勉強会をやっていたんですよ。そんな中で、社外のことに興味を持ち始めて。半年間勉強していましたが、独学での勉強にちょうど限界を感じていたころで。どこかで殻をやぶるようなきっかけがほしいと思っていたので、応募しました。
—プログラムに参加してみて、仕事・勉強面でいい効果は得られましたか?
北村:ありましたね。実際に何かを作るという「目的」ができたので、それに向けた学習量は以前と比べられないくらいになりました。いい意味で自分を追い込めたと思います。そこは、参加して一番良かったところですね。
—プログラム終了後も、活動を継続中だそうですね。
北村:AIでその人好みのコーヒーを提案するサービスを開発中です。最終ピッチに来ていただいた、ECをメインにコーヒーを販売されている加藤珈琲店さんとのコラボになります。8月中旬には公開予定ですよ。
—参加を検討している方へ、メッセージをお願いします。
北村:参加前と後では、プログラムに対するイメージが変わりました。参加してみないとわからないこともあるので、飛び込んでみないと何も変わらないし知れません。参加しても失うものはないので、挑戦しないメリットはないと思います。
編集部まとめ
3人のインタビューから、AI・IoT領域でゼロからイチをつくるフレームワークを体系的に学べることや、参加者同士のつながりの形成があることを知れました。新規事業創出・事業創造・起業・スタートアップにチャレンジしてみたい方はもちろんのこと、AI・IoTといった最新テクノロジーを使った新しい取り組みにチャレンジしてみたい方はぜひ参加してみてください。
イベント詳細
実施期間:2020年9月上旬〜2021年2月上旬
実施回数:20回〜25回程度(1回あたり平均2時間〜5時間程度)※実施回数、実施時間は変更となる場合あり
参加費:無料
定員:25名
参加方法:公式HPから応募
参加者募集期間:2020年7月6日(月)〜8月10日(月)
面接選考期間:2020年8月11日(火)〜8月28日(金)
選考方法:ウェブからの応募内容と面接審査をもとに選考※定員を超える応募があった場合、ウェブからの応募内容に基づき書類審査を実施した後、面接審査を実施
参加対象:新規事業創出・事業創造にチャレンジしてみたい方、起業・スタートアップにチャレンジしてみたい方、AI・IoTといった最新テクノロジーを使った新しい取り組みにチャレンジしてみたい方、本取り組みで学んだものをフル活用して夢を実現したい方、本取り組みで学んだものをフル活用して社会貢献したい方
場所:NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE※新型コロナウイルスの影響により一部オンライン開催の場合あり
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