弁護士・社労士への相談が無料でできる?愛知県雇用労働センターに行ってみた

投稿者: | 2018-09-07
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創業時の社内整備ができていない状況下では、とにかくトラブルが頻発することを、起業家の読者の皆さんはご存知かと思います。その中でも雇用に関するトラブルは多く、1回目の起業ではその知識や経験も乏しいのが現状です。今回は国家戦略特区法に基づいて設置される「愛知県雇用労働相談センター」を訪問し、会社経営者でもあるNagoya Startup News 設立者の若目田が、実際に雇用に関する相談を体験してみました。

経営者の相談を受けてもらえる雇用労働相談センター

若目田:今回は、愛知県雇用労働相談センターで実際に相談員をされている社労士の伊東さんにインタビューをしていきたいと思います。

それでは早速、簡単な自己紹介をお願いいたします。

伊東:社会保険労務士をしている、伊東と申します。前職は、飲食店で10年ほど仕事をしていました。そのあと転機があり、社会保険労務士の資格を知り、修得し独立して今にいたります。

若目田:独立されているんですね。

続いて、愛知県雇用労働相談センターについて簡単に教えて下さい。

伊東:愛知県雇用労働相談センターは、その名のとおり、雇用や労働についての悩みや相談を受ける場所です。企業を経営したり、あるいは企業で働く中では、様々な悩みや問題に直面します。

中でも特に、起業を予定している方や開業直後のベンチャー企業、海外からの進出企業などに向けて、日本の雇用ルールを理解し、スムーズに事業展開できるよう支援しています。もちろん、相談はすべて無料となっています。

一般的に、働いている方に向けた相談センターはたくさんあると思います。インターネットで検索をすれば、各都道府県ごとに行政の相談窓口がたくさん出てきます。

若目田:ハローワークや労働基準監督署などですね。

伊東:それらも相談窓口の一つです。しかし、経営をされている方が相談をする場所は、意外と限られています。経営者に向けた相談窓口は、思っているほど多くはないんですね。そういった方々でも、当センターでは相談を受け付けています。悩みや問題が発生したときに、お気軽に相談ができる場所です。

また、そもそも何が問題なのか分からない、という方のために、月に1度セミナーを開催して、そこで法律やルールについて知ってもらう機会を提供しています。もちろんこちらも参加無料です。毎月たくさんの方々に参加してもらっています。

若目田:実際に愛知県雇用労働相談センターで相談を受けている方は、どういった方なのでしょうか?

伊東:毎週月曜日~金曜日は社会保険労務士が朝の9時から夜の20時半まで、毎週木・金曜日は弁護士が14時~17時まで常駐し、相談にのっています。相談員は全員、雇用や労働の問題に精通したプロフェッショナルです。

実際に質問をしてみた

若目田:ありがとうございます。愛知県雇用労働相談センターについて知ることができました。ここからさっそく私自身の相談をしていきたいと思います。

若目田:私の自己紹介をさせてもらいますね。若目田 大貴(ワカメダ マサキ)と申します。名古屋スタートアップ株式会社を2016年8月から経営していて、ちょうど3期目に入りました。大学3回生のときに学生起業をしたのですが、従業員の雇用について色々と分からない点が出てきましたので、今回相談させてもらおうと思いました。

質問①

若目田:ベンチャー企業ですと、アルバイトとは別にインターン生を受け入れる文化があるんです。雇用形態をどういう扱いにしたらよいのか、そもそも契約を結んだ方が良いのかが気になっています。

伊東:はい。インターンは、一般論を申し上げると、直接生産活動に従事することがない場合は、原則インターン生と企業の間に雇用契約は存在しません。インターン生は、会社の中で仕事の体験をします。逆に会社は、インターン生に体験を提供する。

インターン生側のメリットとしては、もしその会社で働くことになれば、どういったことをやっているのかを、書面だけでなく、実際に見ることができます。よって仕事を手伝ってもらった、1時間現場にいてもらった、だからお給料を支払う、という約束のものではありません。但し、実際に他の労働者と同じように仕事をしてもらった場合は、労働者という扱いになる場合もありますので、ご注意ください。
 

若目田:なるほど。実際に払うとなった場合は、どうしたらいいのでしょうか?

伊東:お仕事をしてもらうとなった場合は、その時点で、労働基準法という法律の中で働いてもらう必要があります。その条件として、いくつか明示しないといけないものが出てきます。一例を挙げると、場所、勤務時間、給料、報酬の支払日等です。

よって、希望者と受け入れる企業との間で、事前に意識を擦り合わせておくことが重要です。単にインターンシップとして職業体験の場を提供するものなのか、あるいは実際に働いてもらうことを職業体験の場とするものなのか、双方が明確に理解し、納得する必要があります。

若目田:ありがとうございます。インターンシップなのか、あるいは実際に働いてもらうのか、お互いの事前確認が重要なのですね。

質問②

若目田:次の質問をさせてください。これから規模を大きくしていこうと思っていて、そろそろ1人目の社員を雇おうと思っているのですが、何から始めたら良いのか全くわからなくて…。そういった抽象的なことも相談できるのですか?

伊東:はい、もちろんできます。1番やってはいけないのが、人を雇ってから準備することです。人を雇うための準備は絶対に必要なことになります。人を雇うと、給料が発生することになります。給料の支払いは、実は1番最後の過程であって、それまでの間に、払うための単価はいくらなのか、働く場所や時間はどうするのか等決めることがあり、その条件が雇用契約書として明記されていないといけません。

例えば、コンビニで商品に値札が無かったら困りますよね。いくらなのか見定めた上で買い物をすると思います。仕事をする上でも、この人がここで働いたら、いくらお給料をもらえるのかを明示する義務があります。

また、人を雇うためには保険に入らないといけません。個人で加入する任意の生命保険などと違って、会社には必ず2つの保険に入る義務があります。よく耳にする労働保険や社会保険です。

伊東:まず必要になるのは、労働保険です。もし従業員が仕事中にトラブルに遭った場合、手助けするものが必要になります。労災保険や雇用保険などが労働保険ですね。社会保険も、病院で必要な保険証を発行したり、年金をもらったりをするために必要になってきます。この2つは必須です。

たまに、本人が望まなかったから会社が保険に加入しないケースがあります。それは許される話ではありません。会社としての義務になるので、本人が望まなくても加入は必要です。

若目田:なるほど。仮に、月に20万円給料を払うとなった場合、1人あたり年間どれくらいの費用がかかりますか?

伊東:細かい計算は省略しますが、社会保険は1人当たりおおよそ給料の30%となっています。なので月20万円の給料だと、毎月約6万円かかることとなります。ただし、この内半分は本人(給料から引かれる分)が負担するので、残りの約3万円が会社負担のおおよその目安となります。労働保険はもっと低くなりますが、業種にもよるので一概には言えません。

若目田:そうなると今回の月20万円給料を払う場合ですと、年間で計算すると給料が240万円、社会保険料が36万円で年間300万円近くはかかってくるんですね。

伊東:はい、賞与やその他の経費を考えなければそうなります。但し、ケースによって一概には言えないので、そういった点も含め、当センターに相談して頂ければと思います。

若目田:今まで全く知りませんでした。これは勉強になりました。

質問③

若目田:次の質問なのですが、社員を採用する際に気になる点として、社員の休日をどう設定しようかと思っていて。どうやって決めたらよいですか?

伊東:労働基準法でいえば、休みは週に1回なのですが、労働時間は1日8時間・1週間で40時間と上限が決まっています。そうすると、1日8時間平日5日間フルで働いてもらった時は、土日は休みにしないといけないので、週休2日にしている会社が多いです。

土曜日でも日曜日でも仕事が発生した場合、きちんと残業代を支払っていれば法律的には問題ありません。但し、残業をさせる場合は、36協定と呼ばれる協定で残業時間の上限をあらかじめ定めた上で、労働基準監督署に届出をする必要があります。その範囲内であれば残業をさせることができます。日数ベースというより時間ベースですね。

働き方改革の中で休みの日や就業時間も会社によって多様化してきているので、労働基準法に沿った形でカスタマイズできるといいですね。

質問④

若目田:なるほど、ありがとうございます。最後の質問なのですが、社労士の方に相談する場合、会社がどれぐらいの段階で雇ったらよいのかを知りたいです。

伊東:私の個人的な考えですが、知識があれば社労士に相談する必要はないと考える方もいますが、万が一労働に関する法律を守らなかったときの罰則は重く、その点では社労士の方に常に相談できる体制があるに越したことはありません。

独自ルールでやっていることが法律に適している場合は何も問題は無いのですが、例えば時給1000円という契約なのに、500円しか実際に払っていなかったとなると問題です。

伊東:他にも、従業員に健康診断を受けさせなくてはいけないケースで、診断を受けさせていないようなケースはよくあります。

労働に関するルールを熟知している経営者や従業員がいる場合は必要ないのですが、まずもって多くないと思います。その場合、社労士がいると安心感が得られると思います。なので、会社の規模や段階で決めるわけではないと思いますね。

若目田:「どう経営をしていきたいか」で決めるんですね。

伊東:そうですね。自分が管理できない部分の穴埋めをしてくれる、経営の一部を担ってくれる、という視点で見れば、その価値は会社によって大きく違ってくると思います。

若目田:社労士のイメージが変わりました。なんとなく、遠い存在だったんです。

伊東:そうですよね。何をやってくれるのか分かりにくい部分も多いので、そういった面でも気軽に相談してもらえると嬉しいです。
創業期の経営者に一言!

若目田:とても勉強になりました。

この読者の方の中には創業期の経営者も多いので、なにかメッセージがあればお願いします。

伊東:愛知県雇用労働相談センターで相談できる1番のメリットは、専門家である社会保険労務士と弁護士が、雇用や労働に関するお悩みや問題に無料でお答えできることです。

会社経営ではリスクを取りに行く機会や気を付けていかないといけない機会が多くあると思います。夢を追うと同時に現実の部分の問題点を解決していけば、見れる夢はもっと幅広くなるのではないか思います。ぜひそういった意味でも、愛知県雇用労働相談センターをご活用いただけたらと思います。

若目田:ありがとうございました。

編集部あとがき

何かと悩みの多い創業期こそ、経営者がこういった施設を無料に利用できることは大切だと感じました。愛知県内で雇用や労働に関する相談がある方には、事業に集中することも踏まえてぜひ足を運んでもらえればと思います。

愛知県雇用労働相談センターの公式HPはこちらから

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Masaki Wakameda について

1994年生まれ、栃木県出身。名古屋・タイ・東京のベンチャー3社を経て2015年4月にフリーランス(ライター&編集者)へ。名古屋のスタートアップの情報格差を解消すべく、5月よりNagoya Startup Newsを配信開始。8月に名古屋スタートアップ株式会社を設立し、国内外の複数のWebメディアを運営しています。Twitter: @wakamesun2