複数のカフェを定額でまとめて楽しめる「CAFE PASS(カフェパス)」。近年、個人経営のカフェ・喫茶店が減少している中で、もっと気軽にカフェ・喫茶店を楽しんでもらいたいという想いから生まれたサービスです。今回、その「CAFE PASS」のサービス内容と今後の事業展開について、株式会社Same Skyの代表である二方氏にインタビューをしました。
二方 隼人|プロフィール
1991年生まれ、愛知県出身。愛知淑徳大学ビジネス学部卒業後、エキサイト株式会社に入社し、新規事業のグロースやブロードバンド・SIM系のサービス立ち上げに参画。2017年7月に株式会社Same Skyを設立して代表取締役に就任。複数のカフェを定額でまとめて楽しめるカフェ・喫茶店のポータルサイト「CAFE PASS」を運営している。
CAFE PASSはオンライン版のコーヒーチケット
水元:まず、CAFE PASSはどのようなサービスなのか教えてください。
二方:水元さんはカフェや喫茶店で複数枚綴りで売られているコーヒーチケットをご存知ですか?
水元:はい。喫茶店などで販売しているコーヒーの前売り回数券のことですよね。店によっては、10杯分の値段で11杯分のドリンクが飲めたりする常連に嬉しいサービスです。
二方:CAFE PASSはオンライン版のコーヒーチケットで、リアルのコーヒーチケットと違う点は加盟店ならどこでもチケットを利用することができる点です。定額プランは2つあり、月額4,860円のプランに登録すると、月に30杯までコーヒーやカフェラテなど、お店が登録しているドリンクが飲めます。カフェ・喫茶店に行くのは週1程度という方向けに、月額900円で月に3杯までドリンクが飲めるプランもあります。
また、CAFE PASSはオンライン上で登録できて、対象メニューも事前に見ることができます。そのためお店やメニュー選びもスムーズに行うことができ、お店で代金を支払う必要がありません。
水元:現在、加盟店はどれくらいあるんですか?
二方:2018年12月時点で、全国52店舗。そのうち名古屋市内の加盟店は15店舗です。
水元:東海地域や京都、沖縄にも加盟店があるんですね。なぜCAFE PASSというサービスをつくろうと思ったんですか?
二方:愛知県はモーニングサービスが充実していることから、カフェ・喫茶店は人気がありますよね。私も元々カフェや喫茶店が大好きです。しかし、就職して東京に行ってから帰省する度に、自分のお気に入りだったカフェや喫茶店がいつの間にかなくなっているということが何度かあって。
個人のカフェは回転率や単価が低いので、あまり販促に割けるお金がありません。そのため、企業が介入して集客などの課題を解決しようと思っても、お店からなかなか報酬がもらえないので事業として成り立ちにくい背景があります。そこで、誰もやらないなら私たちがやろうと思い立ち、CAFE PASSのサービス開発に踏み切りました。
個人カフェの多い名古屋を注力拠点に
水元:私もカフェにはよく行くので、とても嬉しいサービスです。先日、CAFE PASSと名古屋情報通さんの連携が開始しました。今回、2社が連携することになった経緯を教えてください。
二方:弊社のセールス担当者が名古屋情報通さんのスタッフの方とお店でたまたまお会いしたことがきっかけです。そこで、お互いの事業について話す機会がありました。その後、名古屋情報通さんからぜひ連携しましょうとご連絡をいただきました。
水元:2社の連携後は、名古屋情報通さんの公式サイトにCAFE PASSの対応店まとめページの開設、加盟店の取材記事とCAFE PASS店舗ページ間で相互リンクの付加、SNS上での告知連携が行われるようですね。このような連携の決め手を教えてください。
二方:連携を決めたのは、CAFE PASSの加盟店となっていただいているお店の掲載基準やコンセプトなどを理解いただいた上で、具体的な連携内容のご提案をいただけたからです。また、今後、CAFE PASSの加盟店になっていただく店舗と、名古屋情報通さんが取材する店舗が重なっていくことが想定できました。
名古屋情報通さんの読者層は、だいたい30代くらいの主婦の方も多いと思います。CAFE PASSは、主婦の方がママ友とカフェに行くときなどにも使えますよね。ターゲットもマッチして、名古屋情報通さんの読者に私たちのサービスを使っていただける可能性が高いのではないかと考えました。
水元:連携を開始して、相乗効果は出ているのでしょうか?
二方:新規の店舗様にCAFE PASSのご提案へ伺うと、すでに名古屋情報通さんのサイトを見て私たちのサービスを知っているお店が多かったです。名古屋情報通さんを通して、事前に弊社のサービスを知っていただけているおかげで話がスムーズに進み、提携が決まるというケースもありました。
水元:ところで、名古屋のカフェ・喫茶店の市場規模はかなり大きいみたいですね。1世帯当たりの「喫茶代」の支出金額は名古屋市が14,301円で、全国平均 5,770 円を大きく上回り全国1位だったそうです。
二方:個人カフェの数も、東京よりも名古屋の方が実は多いのですよ。CAFE PASSの対象店舗は個人カフェなので、愛知県はこのサービスを広める上で非常に良い場所だと考えています。
水元:CAFE PASSのサービスを展開する上で、プロダクトマーケットフィット(PMF)の基準はどのように設けていますか?
二方:加盟店が1,000店舗くらいになったフェーズをPMFと見ています。
加盟店は愛知・東京に集中して広げていくつもりで、1,000店舗というのは愛知・東京の合計で考えています。まず目標として、愛知・東京でサービスの対象となる個人のカフェ・喫茶店の内10%、すなわち1,000店舗を基準にしています。また、KPIは店舗数と会員のアクティブ率(月間の利用総杯数)の2点を最重視しています。
CAFE PASSでより気軽にカフェを楽しんでほしい
水元:今後の事業展開を教えてください。
二方:現時点で弊社のサービスはCAFE PASSのみです。まずここに注力して、加盟店舗数とユーザー数を増やしていきます。春には100店舗くらいまで加盟店を増やしたいと考えています。
水元:その先に考えている大きな目標はありますか?
二方:CAFEPASSは、お店とカフェ好きなユーザーがつながるプラットフォームだと考えています。そのプラットフォームの中でできる事業プランとして、各店舗で取り扱うコーヒー豆をオンライン上で閲覧でき、ユーザー好みの豆を学習しておすすめしてくれるサービスを考えています。
水元:Amazonなどのオンラインショップで、ユーザーが閲覧した商品に合わせて、関連商品が出てくるサービスの、コーヒー豆特化版というイメージですね。
二方:その他には、海外の農園と直接取り引きでオリジナルブランドのコーヒー豆をつくり加盟店に普及させていくなど、農園やお店とタッグを組んで新しいことをやるのも面白そうだなと思います。
水元:二方さんのCAFE PASSにかける想いをお聞きしたいです。
二方:私たちはCAFE PASSを通して、個人のカフェ・喫茶店が大手チェーンと対等に戦っていける土壌をつくり、日常の中にカフェが当たり前の様に存在する世界をつくりたいです。このサービスを始めたきっかけが、個人のお店が減っていることに対して何かしたいという想いからだったので。
また、入店する前に「値段が高かったらどうしよう」「コーヒーに詳しくないから場違いかな」と考えて、個人のカフェに行くことをためらわれる人もいると思います。そのようなハードルをCAFE PASSが解消し、より気軽に立ち寄る人が増えたら嬉しいです。そして、たくさんの人に自分の行きつけのカフェや喫茶店ができる、そんな世界をつくりたいと思います。
まだまだ加盟店が少ないのでこれから増やしていく予定です。名古屋の方々がカフェ・喫茶店を日常的に使えるように私たちも努力しますので、どうか長い目で見守っていただければ幸いです。
編集部コメント
名古屋におけるベンチャー・スタートアップは、東京の市場で事業が軌道に乗った後に、名古屋の市場へ参入するというケースが少なくありません。「CAFE PASS」はそういったケースとは異なり、サービス開始から愛知を東京と並ぶターゲットに設定しているのが印象的でした。名古屋を盛り上げるきっかけになるCAFE PASSに期待が高まります。
(取材/水元陸大、文/中原愛海、編集/Nagoya Startup News編集部)