がだんだん株式会社(本社:名古屋市緑区。以下、がだんだん。)は注文、支払い、キッチンでの注文管理、受け渡しまでアプリケーションを使用して完結するシステム「eBENTO」を開発しました。
今年7月には名古屋市緑区鹿山に完全非対面非接触のテイクアウト専門弁当屋「GHOSTBENTO」をオープン。2020年の起業から店舗開店まで、非常に早いスピードで開発を進める背景には、名古屋市主催のイノベーター育成・ビジネス創出プログラムで集まった人材の活躍があります。新型コロナウイルス感染症の影響もあり注目が集まる「非接触」という分野の可能性、アフターコロナを見据えた同社の取り組みや展開について、がだんだん代表の福井佳亮さんにお話を伺いました。
プロフィール
福井 佳亮(ふくい よしあき)
がだんだん株式会社 CEO
インタビュアー
名古屋市経済局スタートアップ支援室主事:内藤
インターネットテクノロジーの力で世の中をもっと便利に
内藤:がだんだんは、シェアキッチン「GHOSTBENTO」を立ち上げられていますが、改めて具体的な業務内容を教えてください。
福井:システム開発がメインの仕事です。現在開発しているeBENTOは、クレジット決済など決済周りは一部外部のものを使っていますが、店舗運営システムの基本的な部分である受け渡しのシステムやロッカー、決済のシステム、キッチン側での在庫管理のシステム等々は、全部自分たちで一括して作っています。
我々はスタートアップでありまだ実績がないため、実際に自分たちで飲食店を経営して店舗の運営、管理を行い、システムが本当に使えるものなのか、実店舗での課題をもとにブラッシュアップしている最中です。また、シェアキッチンの貸し出し管理という業務も行っています。システムを作り、販売して、これから世の中に広めることが会社のミッションとしては一番大きいですね。
内藤:直接的な店舗運営だけでなく、システムを開発、拡充して、横展開していくというお考えなのですね。店舗をオープンし実証という形で走らせる中で、機能面の改善・改良はどのように行っていますか。
福井:エンジニアの方には請負、開発委託という形で参画いただいていますが、単純な委託ではなくチームとしてシステムを構築していますので、ほぼ内製化で作っているイメージです。メンバーとは、2019年9月から始まった「NAGOYA BOOST 10000」という名古屋市主催のプログラムに参加したことがきっかけで出会い、その時のメンバーと開発を続けています。
自分の人生を変えたい、という強い意志を持ってプログラムに参加していたエンジニアの方々がいて、プログラム終了後も定期的に会う中で、今のプロジェクトがスタートしました。
「Amazon Go」から着想
内藤:非接触型の飲食店はどのようなところから着想を得たのか、そのきっかけを教えてください。
福井:米国シアトルで体験した「Amazon Go」がすごく自分にフィットするサービスで、「テクノロジーの力はこういう形で困りごとを解決するためにある」というのを感じました。コロナの影響で、待ち時間を減らしたいという方向ではなく、非接触や無人で展開できる部分がフォーカスされ、今こういったサービスが伸びています。
2019年を思い返すと、飲食店が一番困っていたのは人手不足で、アルバイトが雇えないということだったと思います。今はコロナ禍のため人手不足の問題は落ち着いていますが、コロナ後に経済が戻れば、また人が集まらなくなるという未来を予想しています。コロナ禍に対応するためというよりも、自分たちのライフバリュー、生活の質の向上を目指して作っているシステムです。
内藤:がだんだんの強みはどんなところにありますか。
福井:新しくシェアキッチンでお店をオープンしたい方が、パソコンで商品を登録して予約の管理をすることで、すぐにお店がオープンできるスピード感、操作性のしやすさ、シンプルなことがすごく喜ばれています。原材料を入力すれば食品表示のラベルも印刷できるので、うちのシステムだけで全てが片付くのはすごくいいよね。という評価を頂いています。
また、キッチンは曜日ごとに営業日が選べるので、最近ですと、今までお店をやりたくても一歩踏み出せなかったというタイ出身の女性が、土曜日だけ営業していただいています。接客がないので日本語がそこまで流暢でなくても精神的なハードルがありません。お金のやりとりも全部システムで完結するので、金銭のやり取りに対してのハードルもありません。料理が終わったらキッチンを清掃して帰っていただくだけなので、レジの締め作業でお金が100円合わないといったトラブルも起こりません。
逆にデメリットとして、非対面のためお客さんが喜んでくれているのかどうかリアクションがわからないことに違和感がある、という方もいました。また、コロナ禍で休業を迫られた飲食店や居酒屋の経営者へインタビューをしたところ、「酒類の提供ができず、弁当屋として一食800円とか1,000円の商品を作って売るより、休業補償をもらう方が割に合うため、わざわざ働くモチベーションにならない」とはっきり言われる方もいました。
飲食店のオーナーは飛びつくだろうとイメージしていましたが、まだまだ市場調査が甘く、リアルな課題を掴んでいくことが今後の課題なのかなと思います。
がだんだんが目指すのは
内藤:在庫管理や現場の課題を解決するだけでなく、今まで参入してこられなかった障壁があった方にも、新しいチャレンジができる機会を提供するソリューションになっているということですね。今、非接触という部分が注目を集めていますが、今後の展開、ビジョンについて伺いたいです。
福井:我々のビジョンとしては「インターネットテクノロジーの力を使って、世の中をもっと便利にしたい」ということが一番思っていることです。GHOSTBENTOの仕組みをきちんと作り、これをフランチャイズ展開できる、システム販売できるような物にしていきたいです。一方で、エンジニアには、自分たちがやりたいことは何なのかを再定義して、GHOSTBENTOで使えなくてもいいので開発しましょうという話し合いもしています。
ロッカーの仕様も飲食店に限らず、別の展開がないかと考えています。テイクアウトを楽しませるという部分では、例えば持ってきた弁当箱をロッカーに入れ、厨房側が受け取り、商品を入れて渡すサービスにすると、ゴミも出ませんし、双方向のやり取りがある新しい感覚が生まれると思います。弊社が特注で作ったロッカーの一番の特徴は、厨房側と来店者側の両方のドアが開くようになっていることです。
今後、要望に合わせて提案できるようになるといいなと思っています。そのために「NAGOYA ICT INNOVATION LAB.」に参加し、11月10日~13日まで「メッセナゴヤ」というイベントに出展します。今のロッカーだと飲食店の受け渡しシステムに見られてしまうので、例えば「ロッカーの中に商品を置いたらリアルタイムで検知し、在庫管理に反映されるシステムです」と、もっと使い方を固定しない、発展性のあるソリューションとして技術を噛み砕いて見せたいと思っています。
内藤:最後に起業や新たな挑戦をしようと考えている人に向けてメッセージをお願いします。
福井:今の世の中は大変挑戦をしやすい環境が整ってきていると思います。インターネットテクノロジーの発達もありますし、事業の出口戦略を考えてみても選択肢が数多くあるありがたい時代です。クラウドソーシングで仕事を発注したり、出資を受けたり、イグジットで誰かに買ってもらったりできます。
これだけ色々なことが整っている時代なので、チャレンジしないのはもったいない、ということを伝えたいです。その一歩を超えるのはすごく大変ですし、難しいというのは理解しているので、そういう方はがだんだんまで来てご相談いただければと思います。私たちも悩んで不安な中ここまできました。一緒に問題を解決する方法を考えさせていただきたいです。そういう相談しやすい環境が本当のオープンイノベーションを育むのだと私たちは信じています。
また、名古屋市が無料で行う人材育成事業には内容の濃いプログラムがたくさんあり、一人一人のステージに合わせたものが名古屋市で住んでいるというだけで、無料で受けられます。その良さをぜひ理解して、自分で情報収集して、行動に移さないと絶対もったいないと思います。
内藤:今日はありがとうございました。
編集部コメント
新型コロナウイルス感染症の影響から「非接触」というキーワードで注目されるがだんだん株式会社。料理を作るという人間にしかできないクリエイティブなことに時間がさけ、人材不足に喘ぐ業界全体の課題解決にも繋がると感じました。