最新技術をキャッチし、名古屋から業界トップを目指す — 株式会社アイデアクラウドの田中義弘氏にインタビュー

投稿者: | 2017-06-25
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名古屋市中区にある株式会社アイデアクラウドは、Web等の制作会社でありながら、VR・AR・プロジェクションマッピングなど、新技術を使った事業に積極的に取り組んでいます。常に新しいテクノロジーの早期導入を意識して事業を展開しているそうですが、その原動力とは一体何でしょうか。代表の田中義弘氏に詳しいお話を伺いました。

田中義弘氏

株式会社アイデアクラウド代表取締役。三重県出身。大学では情報科学を専攻したが、その後デザインに興味を持ち、グラフィックデザイナーとして働く。2009年に個人事業主として起業、翌2010年に株式会社アイデアクラウドを設立。

— 田中さんが株式会社アイデアクラウドを設立した経緯を教えてください。

私はもともとデザイン会社で働いていました。大学ではデザインではなく情報科学部でプログラミングを学んでいました。初めはイベント会社に入社したのですが、同時に取り組んでいたデザインの仕事の方に面白さを感じ、その会社は半年で辞め、デザイナーを目指すことにしました。3年間ほどグラフィックデザイナーとして働いていたのですが、26歳くらいのときにリーマンショックが起こり、私を含め当時の社員の半分が解雇されました。その頃は不況ですから、採用先もなかなかありません。まだ歳が若くて、結婚もしておらず身軽だったので、思い切って起業してみようと考えました。特別な志を持って起業する方が多いと思いますが、私はどちらかというとなんとなく起業した感覚です。

ただ、会社を経営していく中で、志が必要だと感じるようになりました。現在は10名強ほどの社員と一緒に仕事していますが、会社の規模が大きくなるにつれて、私が直接社員と話ができないことが増えてきます。会社としてまとまりがなく、離職率が高まってしまった時期がありました。会社のことを聞かれても、説明できない人が出てきてしまったのです。そこで、会社としてのフィロソフィーを作ることにしました。私はなんとなく起業してしまったので、会社を見直して改めてフィロソフィーを設定する必要性がありました。

— フィロソフィーを経営段階で改めて設定することは、難しくはありませんでしたか?

画像引用元:株式会社アイデアクラウド 公式HP

自分は何が好きなのか考えてみたときに、デザインが好きという気持ちはありますが、それだけで会社が経営できるわけではありません。デザインって主観が入りますし、あるものに対して「かっこいい」と思う方もいれば、そう思わない方もいます。デザインは自己表現なので、自己表現をして稼ぐことができたらやはり嬉しいし、根本的には誰かに認めていただきたいという気持ちを持っています。仕事をする上で、私たちがお客様のために何かをやってあげたいという思いと、お客様も私たちと一緒にやりたいと思っていただける関係性が大切で、弊社にはその考え方が合っています。ただ請負で仕事を任されるのではなく、お客様とともに未来を創っていくイメージが私が一番やりたいことに近いと考え、現在の企業理念「つくる。その未来まで創る。」が生まれました。

お客様にとって本当に役立つものをつくりたいという思いが根幹にあるので、仕事を依頼されてもそのまま受けるのではなく、もしお客様が要望されても本当は必要のないものだったら、そのようにご提案することもあります。ただの制作会社の役割だけではなく、コンサルティングやアドバイザー業務も多く行っています。

— アイデアクラウドではVRやAR、プロジェクションマッピングなどのテクノロジーを使った事業にも積極的に取り組んでいますね。

画像引用元:株式会社アイデアクラウド 防災VR / 火災編

はい。最新技術を使った事業を始めたとき、とても注目を集めて収益も大きく出たのですが、その理由として、他に競合がいなかったからです。名古屋では私たちにしかできないことでしたし、世間はまだ価格帯をわかっていなかったので、自分たちで市場価格を決めることができました。たとえば、名刺のデザインだけに何百万もお金をかけることは普通は無い、と一般的な感覚でわかりますが、新技術にはいくらお金をかけるのが適当なのか世間はまだはっきりとわかっていません。名古屋で私たちにしかできない技術で、価格相場がまだ不明確な分野を攻めていくことにしました。

新技術にはまだまだ競合が少ないですし、早く取り組めば取り組むほど宣伝にもなるので、費用対効果がとても良いです。プロジェクションマッピングだったら、東京の企業に比べると、名古屋は一周遅れで取りかかったと思います。VRやARだったら半周遅れ。そういった状況を目にしてきて、やはり一番最初に取りかかった者しかトップに立てないし、その分野で全てを手に入れることはできないと感じました。それならば、なるべくテクノロジーを早めに取り入れ、名古屋にいながらも東京のスピード感に出遅れないよう、せめて一緒にスタートできるようにしていきたいと考えています。

— 社員の方々はどのように働いていますか?

明るい雰囲気のミーティングルーム。 画像引用元:株式会社アイデアクラウド採用ページ

弊社はクリエイティブ企業としては少し珍しく、社員の退社時刻が早いです。18時頃には大半の社員が退社し、22時を過ぎるとほぼ誰もいない状態です。弊社には既婚女性の方が多く、ご家族やお子さんがいる方はできるだけ早く家に帰りたいのです。若ければ、好きなことのために何時まででも仕事ができるかもしれませんが、家庭があると簡単にはいきません。会社の持続可能性のためには、社員に合ったペースで仕事をする必要があると思っています。

しかしその一方で、早く退社するためには、その分きちんと収益を上げなければなりません。弊社の社員の希望としては、大企業並みの待遇で、早く家に帰ることができて、面白い仕事ができる会社だそうです(笑)会社としてみんなの希望を叶えるためには、デザインばかりやっていても辿り着かないので、受託事業からの脱却をしたいと考えています。時間で稼ぐのではなく、つくったモノの価値を社会に与えられるようにしなければなりません。新技術は収益性が高いことが経験からわかったので、新技術を素早く一般化し、世間が「あれはどのように作っているのだろう」と言っている間に私たちが安価に下ろしてしまう。これがアイデアクラウドの戦略です。

— 今後はどのように事業展開していくでしょうか?

画像引用元:HakaruAR 公式HP

現在はAR事業に力を入れています。赤外線で空間をスキャンして距離を測ることができる、空間のメジャーのような検知システム「HakaruAR(測るAR)」を開発しました。3Dスキャン機能を搭載し、測りたい場所をタップして距離を測定したり、部屋の角を順番にタップするだけで空間の構造をスマホで見ることも可能です。2020年の東京オリンピックに向け、職人の人手不足の中、このシステムを使えば誰でも測量ができて人件費も抑えられます。「HakaruAR(測るAR)」で、建築業界の常識は変わっていくと思います。

プロジェクションマッピングとVRに関しては東京に遅れをとりましたが、このAR事業ではトップを走っていきたいです。また、VRではメーカーと提携し、アプリのリリース前に端末を使ったテストをするなど、ネットワークを有効に使っていきたいとも考えています。ホラー系の新しいVRコンテンツ「000-0000-0000」もリリースしました。IT業界では、新しい分野を狙ってトップを走っていかなければならないと考えています。現在は、東京で生まれた技術が落ち着いた頃に、やっと名古屋に流れてくる状態です。今年から東京にもオフィスを構えたので、東京で最先端をキャッチし、話題になってきたら本社のある名古屋ですぐに大々的な展開ができるような作戦をとろうと考えています。

— 現在、採用を行っているそうですが、どのような資質を持った方と一緒に働きたいですか?

広々として機能的なオフィス。 画像引用元:株式会社アイデアクラウド採用ページ

デザイナーとプログラマを募集しています。デザイナーは、細かい性格の方が良いと思います。デザインは細かい作業の積み重ねです。精度を出さなければならない仕事なので、大雑把な方は合いません。部屋が綺麗だったり、1ミリまでこだわったりする、神経質と紙一重のような方がいいかもしれませんね。

プログラマは、勉強のできる方が良いと思います。これまでの経験から、コツコツと取り組める方は伸びがいいです。さらに、私たちは世の中に無いものを作り出さなければならないので、新しいことに飛び込む勇気も大切な資質です。例えば、今取り組んでいるプロジェクトは、日本ではほぼ弊社にしかできないくらいのニッチさです。日本語のドキュメントやサンプルは存在しないので、自分たちでコードを書き上げなければなりません。やったことがないからできないのではなく、できないかもしれないがやってみる勇気が必要です。世の中にない表現を生み出していく中でも屈さないチャレンジ精神がある方、見えない中を突っ走れるベンチャースピリットがある方と働きたいですね。

編集部コメント

常に新しいテクノロジーに注目し、積極的に事業に取り込んでいく姿勢を大切にしていることが、田中さんのお話からよくわかりました。ARを使った空間測定のシステムには非常に驚かされ、技術の進歩と同時に、その分野でトップを狙う田中さんの勢いも感じました。今後も新たな取り組みに注目しています。