#クリエイション・コア名古屋特集|スマート工場・スマート倉庫をデザインし実現する|Industry Alpha株式会社

投稿者: | 2025-04-16


名古屋市守山区に開発拠点を構え、製造・物流業のスマート化を推進するスタートアップ企業、Industry Alpha株式会社。AMR(自律走行搬送ロボット)の開発・導入を中心に、現場の課題解決に取り組む同社は、ソフトウェアとハードウェアの両方を自社内で開発できる、国内でも数少ないテック系企業です。

今回は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するインキュベーション施設「クリエイション・コア名古屋」の入居企業特集として、同社の代表取締役である渡辺氏に取材を実施。創業の経緯からプロダクトへのこだわり、地域との連携、さらには今後の展望についてお話を伺いました。

プロフィール

渡辺 琢実(わたなべ たくみ)氏
Industry Alpha株式会社 代表取締役。名古屋市守山区出身。名古屋大学在学中は機械学習系の研究室に所属しながら、AI・ロボティクスベンチャー企業で事業開発を経験。大学卒業後、同社での事業に従事する中で製造業や物流業が抱える問題に可能性を感じ、2022年8月にIndustry Alphaを創業。

課題解決への姿勢が、自社開発の強みに繋がる

ーまずはじめに、Industry Alphaの事業についてご紹介いただけますか?

渡辺氏:当社は一言で言えば、スマート工場・スマート倉庫の実現を「設計し、実行する」会社です。単にロボットを導入するだけではなく、現場全体の課題を分析し、最適な構成をデザインした上で、自社で開発した技術を用いて実装まで行っています。

AMRのハードウェアだけでなく、複数台のロボットを制御・最適化するためのFMS(フリートマネジメントシステム)など、ソフトウェア面の開発も含めて、すべて自社内で行っております。

※FMS(フリートマネジメントシステム):AMRの群制御や、工場・倉庫内の機器と連携するためのプラットフォーム

ー業界内ではファブレス化の選択を取るスタートアップ企業が多い中、内製化のスタンスを取る企業は珍しいですね。自社開発体制を築いている理由についてお聞かせください。

渡辺氏:現場のスマート化を本質的に実現するには、単体の機器を導入するだけでは不十分です。ロボットを導入しても、それに適した周辺システムが整っていなければ、結果として非効率な運用になることもあります。

そのため、私たちは現場全体を俯瞰して設計し、必要なハード・ソフトをすべて自社内で実装する体制を整えました。一貫した開発体制があるからこそ、柔軟でスピード感のある対応が可能になります。

ー業界課題に深い知見があると感じました。創業前は、どのようなご経験を積まれてきたのでしょうか?

渡辺氏:出身の名古屋大学では情報学を専攻し、AI技術の研究をしておりました。学生時代にAI・ロボティクス分野のスタートアップ企業と出会い、卒業後に一度大手企業に入社してからその会社に戻り、主に事業開発を担当いたしました。

さまざまな業界の方と接する中で、製造業や物流業が直面する深刻な課題を知る機会があり、これらをテクノロジーで変革したいと強く思うようになったことが、Industry Alpha設立のきっかけです。

従来のAGV/AMRでは解決しきれなかった現場課題に挑む


 
ー製品の中でも「Kaghelo (かげろう)」というAMRが注目を集めていますね。

渡辺氏:はい。Kagheloは、薄型かつ高出力なAMRです。物流現場で多く使われるカゴ台車のリフトアップに対応しており、500kg可搬タイプ(長さ900mm*幅630mm*高さ185mm)と1,000kg可搬タイプ(長さ900mm*幅800mm*高さ210mm)の2つの仕様があります。

従来のAGVやAMRでは、カゴ台車に潜り込んで持ち上げることができるタイプがほとんど存在しなかったため、現場での運用には制約が多くありました。Kagheloの導入により、これまで自動化が難しかった搬送業務を効率的に置き換えることが可能となり、重筋作業の負担軽減や人材配置の柔軟化に大きく貢献しています。

※カゴ台車:開口部以外の3面がパネルで囲まれている運搬用台車。ロールボックスパレットとも呼ばれる。

ー潜り込み式のメリットは、AMRが搬送工程の積み下ろしも担ってくれる点ですよね。実際に導入された現場での反響はいかがでしょうか?

渡辺氏:たとえば、大崎電気工業様のご利用事例では、Kagheloによるライン間搬送を皮切りに導入が始まり、現在ではアームロボットとの連携による検査・仕分け業務の自動化まで進んでいます。

また、当社のFMSを活用することで、搬送データの可視化や工場全体のシミュレーションが可能となり、設備計画や生産設計に活用いただいている現場もあります。導入して終わりではなく、運用を通じて進化していける点が、当社のソリューションの強みです。

名古屋の立地特性とクリエイション・コア名古屋の施設・支援をフル活用

ー拠点として「クリエイション・コア名古屋」を選ばれた理由は何だったのでしょうか?

渡辺氏:名古屋で開発拠点を検討していた際に、1,000kgを超える機材にも対応できる床耐荷重を持つ施設が非常に少なく、苦労していました。そんな中でクリエイション・コア名古屋を紹介いただき、すぐに決めました。

現在は、AMRの走行テストや耐久試験、基板実装や部品加工などの製品開発にフル活用させていただいています。特に、広い実験スペースを確保できる点は、当社のようなハードウェア系スタートアップにとって大きなメリットです。

現在、部品製造や加工の多くを愛知県内の企業様と連携して行っています。以前は県外に依頼していたこともありましたが、現在では地元企業様の技術力を活用し、ほとんどの製造工程を近隣で完結できるようになりました。クリエイション・コア名古屋に開発拠点を置いたことが、自社の強みを伸ばす後押しをしています。

ー素晴らしいですね。支援体制についてはいかがでしょうか?

渡辺氏:インキュベーションマネージャーの方々には大変お世話になっております。お客様対応の支援や専門家のご紹介、知財や人材の相談など、きめ細かなサポートをいただいており、安心して開発や事業運営に集中できています。まさに事業の“伴走者”のような存在です。このようなサポート環境のおかげで、当社は製品開発や顧客対応など、事業の中核に注力できています。

また、大垣共立銀行守山支店様をはじめとする地元金融機関からの支援も非常に心強く、地場企業との関係性を深めながら、地域密着型のスタートアップとして成長している実感があります。

ー名古屋大学との産学連携についても注目されていますよね。

渡辺氏:はい。名古屋大学の赤井准教授のことは、私がIndustry Alphaを立ち上げる以前から知っており、設立後にコミュニケーションを取らせていただいていたのですが、最近ようやく正式な連携が実現いたしました。赤井先生は、自己位置推定などロボティクス領域において非常に高い専門性を有する研究者です。

今後はさらに研究成果を社会実装へとつなげていきたいと考えており、産学連携は当社にとって重要な戦略の一つとなっております。

目指すは“現場から社会を変えるスタートアップ”

ー今後、Industry Alphaとして目指すビジョンについてお聞かせください。

渡辺氏:まずは日本国内における導入実績をさらに積み重ね、業界内でのポジションを確立していきたいと考えています。その上で、名古屋から世界市場への展開を視野に入れています。名古屋という製造業の中心地にいるからこそ、開発と現場の距離が近く、グローバル競争に耐えうる製品づくりができると信じています。

ー最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いします。

渡辺氏:現在、Industry Alphaでは新たな仲間を募集しております。ロボティクスやスマートファクトリー分野に関心をお持ちの方、またスタートアップのスピード感の中で成長したい方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご連絡いただけますと幸いです。

名古屋という地域から、日本の産業を、そして世界の製造現場を変えていきたい。そんな思いを共有できる方と、共に未来をつくっていければと願っております。

ーありがとうございました!

編集部コメント

現場への深い理解と、高度な技術を“内製”で支える渡辺氏とそのチーム。その開発拠点が名古屋であること、そして地元企業や人材との結びつきを大切にする姿勢に、これからの地域発グローバルテック企業の希望が見えました。

▼Industry Alpha 会社HPはこちらから
公式サイト:https://www.industryalpha.net/

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