2017年5月21日、ITを生かした事業づくりのためのイベント「IT×事業スタートカンファレンス」が開催されました。株式会社54代表取締役で、中小機構販路開拓支援アドバイザーでもある、山口 豪志氏によるオープニングトークで幕を開けた本イベント。
「事業フェーズに応じたIT活用術」をテーマにしたミニセッション、株式会社トラベロコ代表取締役 椎谷 豊氏、プローバス株式会社 代表取締役 杉本 優斗氏、株式会社トライエッティング代表取締役 長江 祐樹氏らによる、それぞれの実体験に基づくパネルディスカッションも行われました。
山口氏は、これまでにクックパッド株式会社やランサーズ株式会社の設立初期にジョインし、事業の成長に大きく貢献してきました。その経験から学び得たことをもとに、自分らしく働ける事業を起こすためのHow-toやIT活用術を紹介していただきました。
自分らしく働ける事業をするには
山口氏:“事業をつくる”なら、起業以外の選択肢もあります。例えば、会社の中で会社のアセットを生かして事業開発をし、新規事業で解決することもできます。自分の思い描くテーマと会社の方向性が違ったり、自分の強みを生かしたりしたいときには、週末起業や“複”業という方法もあります。「起業」というのは、あくまでもその1つとして考えていただければと思います。
事業を起こし進めて行くには、“情熱”が自分を突き動かす力の源泉となります。そこで重要になってくるのが、自分が情熱を持って取り組めるテーマ探し。そのためには、まず自分らしく働ける事業の事例を見つけること。やっている人に聞いたり、実際に見に行ったりして情報を集めてから取り組みましょう。身近な人からの理解を得ることも大切です。そのためには、周囲を説得できるだけの熱量を持って取り組めるテーマを見つけることも重要ですね。それが“自分らしく”働ける事業となります。
得意分野のある人や知識の豊富な人など、尊敬できるメンターを探しておくことも大事です。メンターは事業のフェーズによって増減したり、変わったりすることもありますね。
私の場合は特殊で、共感する所にジョインする形でスタートアップの世界に入りました。
クックパッドでは「売れる理由」を探した
山口氏:クックパッドには9人目としてジョインしました。現場ユニットのセールスマンから始まり、フェーズごとに役割は変化していきました。私がそこで何をしたか。まずは、売れるようになる理由を探して行動しました。広告業界に販路を持った代理店から、買う理由・買わない理由を聞き出して、クライアントの満足度探しとニーズを徹底的に掘り起こし続けました。そこでわかった「売れる理由」は次の4つです。
- 事例があること
- 売れていること=意図的に満稿(広告枠いっぱいに広告が入ること)状態を作りだす
- 販売会社に競わせること
- 目立つこと
自分たちの取り組みやサービスを知ってもらうことは、非常に重要です。次にジョインしたランサーズでも、広報活動には注力しました。
ランサーズでは広報に注力
山口氏:ランサーズは法人と個人をwebサービス上でマッチングするサービスです。サービスを知って使ってもらうためには、広報活動が必要です。ジョイン当初、私は事業開発部長として営業活動を行っていましたが、広報活動の重要性を認識してからは、広報チームのリーダーを担当しました。そして、会社の活動や取り組み、“思い”を知ってもらうために、いろんなメディアに露出させました。
メディア露出においては、“ツテ”やタイミングを意識したアクションが求められます。外交問題や選挙、事件など、世の中でも注目を集めるニュースがあるときは情報が流されてしまいがちなので、タイミングは一番重要だとも言われています。
スタートアップは今がチャンス?!
山口氏:スタートアップは、少数精鋭でスピード感があり、ニッチな分野を独占できれば大化けする可能性もありますが、ヒトやカネが潤沢ではないというデメリットもあります。そして、法改正やマーケットの環境変化には弱い。ただ、変化があるときはチャンスでもあります。2017年は状況が変わり、お金も集まりやすくなってきていて、起業にチャレンジする人は増えています。
スタートアップに必要なことは、まずは準備。準備が8割と言っても過言ではありません。自分のやりたいこと・思いを言語化し、周囲に伝えるプロセスが重要です。ブログや、セミナーなどに参加して積極的に発信していきましょう。
そしてスタートアップにおいて最も重要なポイントは、さまざまな人とのつながり。一時的な出会いでも、そこからどんどん派生して縁が繋がっていくこともあります。
業務効率を上げるITツール
人員や資金が豊富ではないのが、スタートアップ。そこで、業務効率を上げるITツールをご紹介いただきました。
ミルトーク
株式会社マクロミルが開発した『ミルトーク』は、無料で生活者のコメントが集められるアプリ。「きょうのひとこと」には、新しい商品のアイデアがタイムラインで流れています。アイデアに対する反応を知ることもできるので、商品開発やサービス改善に生かすことも可能。
クエスタント

クエスタント公式ホームページのスクリーンショット
『クエスタント』もマクロミルが開発したアプリで、誰でも簡単に使えるセルフアンケートツール。集計結果をリアルタイムでグラフ化してくれます。プレゼンや、銀行との融資交渉にも活用することもできます。
弥生会計

弥生会計公式ホームページのスクリーンショット
『弥生会計』は、会計業務ソフトの中でも過半数以上のシェアを誇ります。請求書作成サービスの『Misoca』とも連携。個人事業主の青色・白色申告にも対応しています。
決済オートメーション(NP後払い・掛け払いなど)

ネットプロテクションズ公式ホームページのスクリーンショット
株式会社ネットプロテクションズの『決済オートメーション』は、社内から決済業務をなくすという新発想のサービス。与信から回収までを全て自動化することで、決済にまつわる負荷とリスクを丸投げすることが可能です。回収リスクのあるビジネスモデルにおすすめ。
ナレッジソサエティ

ナレッジソサエティ公式Twitterから引用
『ナレッジソサエティ』は、東京・九段下にあるシェアオフィス・バーチャルオフィス。東京に行くときに打合せ・ワーキングスペースが欲しいときに使えます。りそな銀行が所有するビルにあるので、名刺やWEBにその住所を入れられるというメリットも。
起業家3名によるパネルディスカッション

左から 長江氏、杉本氏、椎谷氏
イベントの後半では、名古屋の起業家3名が登壇しパネルディスカッションを行いました。テーマは「ITを活用して、愛知県で自分らしく事業を営むという事」。
登壇者
- 椎谷 豊(株式会社トラベロコ 代表取締役)
- 長江 祐樹(株式会社トライエッティング代表取締役CEO)
- 杉本 優斗(プローバス株式会社 代表取締役)
登壇者は、現行の事業に至ったきっかけや起業当時のエピソード、新しい事業に取り組む際に注意すべきこと、実際に活用しているITツールなどを紹介しました。ディスカッション後の質疑応答では、事業決定の判断基準や初期メンバーの選び方、人材の採用に関する質問が参加者から寄せられ、登壇者は各々の実体験や知見を基に回答しました。また、これから起業を考えている方に向けてエールを送りました。
編集部コメント
これからの日本には、世界が未だ見たことのない超少子高齢化時代が訪れます。そして、古いビジネスモデルや産業は、新しい雇用を生み出せなくなっているのが現実。そんな中で起業となると、不安を抱いてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、山口氏はそんなときこそチャンスだと述べていました。「これからの時代に求められるのは、新しい雇用とそれを生み出す新しい事業・ビジネスモデル。それをつくり出すことで、新しい価値が創造され、社会の安定にも繋がっていく」とも。今回紹介されたITツールはほんの一部で、業務を効率化させるITツールはまだまだあります。起業を考えている方、すでに起業済みの方も、ITツールをぜひ取り入れてみてください。