変化を恐れず、長く生き続けるサービスで社員が幸せに働ける環境をつくる — VISH株式会社の藤井恵氏にインタビュー

投稿者: | 2017-05-31

—お客様の喜ぶ声を聞くことが、私たちの喜びです。
そう話すのは、名古屋のITベンチャー、VISH株式会社代表取締役の藤井恵氏。主軸とするクラウドサービス事業「バスキャッチ」の導入実績が全国で1000施設を超え、さらなる事業拡大を目指す一方で、社員の働き方やワーク・ライフ・バランスも重視しているそうです。藤井氏に、詳しいお話を伺いました。

藤井恵氏


VISH株式会社代表取締役。愛知県豊川市出身。大手システム開発会社に勤めたのち、2004年に名古屋でVISH株式会社を設立。クラウド型バスロケーションサービス「バスキャッチ」をはじめ、多数のクラウドサービス事業を全国に展開している。趣味は音楽イベントに行くこと。

— 藤井さんはもともとシステム開発会社に勤めていたそうですが、VISH株式会社を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?

インターネットが普及し始めた頃、今後はインターネットシステム開発が発展するのではないかと感じ、それまで勤めていた会社を退き、当時の同僚2,3人とVISH株式会社を設立しました。当時はもちろんスマホがなく、ガラケーの時代。しかし、印刷会社やグラフィックデザイナー、広告代理店のマーケティング職種の方々などがホームページ制作会社を立ち上げ始めたり、システム開発会社がインターネットの領域に関わるようになったりと、新たな動きが見え始めていた時代でした。

私はいわゆる「ファミコン世代」ですから、昔から機械に触れるのが好きでした。機械だけではなく音楽も好きで、趣味でよくレゲエミュージックを聴いています。実はこれ、現在のワークスタイルにも繋がるのですが、「好きな音楽を流しながら仕事ができたらいいな」と思い、弊社では音楽をかけながら仕事ができる環境にしています。

今でこそ、AppleやFacebookのようなIT企業の社員がジーンズで仕事をしたり、プログラミングをしながら音楽を聴いたりすることは一般的になりつつありますが、昔はスーツを着用し、職場も固い雰囲気でした。もっと働きやすい環境の職場があればいいのにと考えていたことも、起業に繋がった一つのきっかけと言えるかもしれません。

— 会社設立当初は主にシステム受託事業を行っていたそうですが、現在はクラウドサービス事業が主軸ですね。事業を転換したターニングポイントは何だったのでしょうか?

受託事業から脱したきっかけのひとつは、リーマンショックやITバブルが起こった時に、事業の先行きが読めなくなる不安を感じたからです。景気が悪くなると、受託開発では受注先企業の業績によって売り上げに変動が出ることがあります。また、企業の規模が大きくなるにつれて、人を雇用したりオフィスを借りたりする必要があるにも関わらず、翌年の収益が読めず常に不安がありました。先行きが不透明な状態では社員も幸せになれないと、経営しながら体感しました。当時の経営者の仲間たちも、同じ不安を抱えていた人は多かったです。

請負の仕事は時代と共に、「より良いものを、より安く、より早く」求められるようになります。次第に要求は厳しくなり、この状況を打破しなければ自分たちが疲弊してしまう、と危機感を覚えました。「脱・請負」のために自社で確立したサービスを提供し、安定した利益を生み出そうと考えました。また、サービスが広く普及すれば全国のお客様に喜んで頂けると思いました。様々な自社サービスの立ち上げを始め、その中ヒットしたのが現在主軸となっているクラウド型ロケーションサービスの「バスキャッチ」でした。様々な施設の送迎バスにGPSを搭載し、遅延情報や運行状況をスマホやパソコンにお知らせするサービスです。

— 会社を代表するサービスとなった「バスキャッチ」は、どのようなニーズから誕生したのでしょうか?

画像引用元:VISH株式会社 バスキャッチのHPより

誕生のきっかけは、自動車学校が抱えていた送迎バスに関する悩みでした。自動車学校には「目の前でバスが発車してしまった」「バスがなかなか来ない」といった生徒からの苦情が多く寄せられていました。また、生徒がバスの運転手に電話をする度にバスを停車させなければならなかったりと、多くの問題がありました。そこで弊社にお声がけ頂きました。

早速GPSを購入してバスに積み込み、私たちもバスに一緒に乗り込んで検証をしながら「バスキャッチ」のシステム作りを開始しました。当初は渋滞にはまったり、経路をショートカットするとシステムに反映されなかったりと、試行錯誤を重ねました。幾多の改善を経て、ようやく全国的に認めて頂けるサービスとして形にできたと思います。

「バスキャッチ」は今後も拡大予定で、幼稚園、自動車学校、スイミングスクールの、主要3業種への導入を強化します。また、今後はデイサービスや福祉施設の送迎車にも関わっていきたいです。現在スマホを持った方が、何年か後に病院や福祉施設を使う時期になれば、さらに注目されるサービスになると考えています。

— 現在、採用を強化中とのことですが、どのような方と一緒に働きたいですか?VISHの社風に合うのは、どのような人材でしょうか?

私はもともとプログラマでしたが、お客様の顔が見える仕事がしたいと考えていました。開発系の仕事はエンドユーザーが見えにくく、自分が作ったサービスを誰が使い、誰が喜んでくれているのかがわかりづらいのです。

しかし、現在のVISHにはエンドユーザーの声が聞こえる環境があります。毎日お客様からご連絡を頂き、「こんな風にして欲しい」「ここを直してほしい」といったご要望も届きます。ご要望に応え、お客様に改善したことをお知らせすると、「便利になりました、どうもありがとう!」と喜びの言葉を頂きます。お客様の喜びの声にモチベーションを感じ、それを楽しみにして働ける方は、弊社の環境によく合うと思いますよ。

また、安定したワーク・ライフ・バランスを重視したい方も働きやすい環境です。VISHが掲げるワーク・ライフ・バランスとは、定時退社や福利厚生にのみ注目するのではなく、将来も継続して働くことのできる環境を社員に提供し続けることです。今後も自社のサービスが全国に増えていくことは予想されているので、この先も安定した収入を確保できると考えています。現代は、ビジネスモデルと定年退職までのサイクルを考えた際、ビジネスモデルの方が早く終わってしまうことがあります。私の父はかつて出版社に勤めており、定年まで働くのが当たり前だと思っていましたが、インターネットの波が到来し、出版業界が早くも打撃を受けていたのを目の当たりにしました。これからの時代も、AIや新技術の出現により、将来なくなってしまう仕事があると囁かれていますね。

昔は大企業に就職することが絶対的な安定でしたが、現在は一概にそうとも言えません。自分たちの力で長く続けられるサービスを作っていかなければ、生き残っていくことは難しい時代です。常に変わっていかなければ、ビジネスも続かないでしょう。私たちは今後も変化を恐れずに、前進して行きたいと思います。

編集部コメント

終始穏やかな語り口でお話してくださった藤井さん。社員が幸せになれる働き方を想う真摯さが、お話される言葉の端々から感じられました。常に変化を恐れないベンチャースピリットと、ワーク・ライフ・バランスを重視し継続的な安定性を兼ね備えた、名古屋で注目すべきベンチャー企業の一つだと思いました。