【大人の学びなおし】デジタル時代の価値観を考えるリベラル・アーツ講座|イベントレポート

投稿者: | 2020-03-04

2020年1月29日に、一般社団法人 中部圏イノベーション推進機構が主催するデジタル時代の価値観を考えるリベラル・アーツ講座「大人の学びなおし」が、ナゴヤイノベーターズガレージで開催されました。記念すべき第1回目の講師は、静岡文化芸術大学学長の横山俊夫 氏。「文明|天地文明の学び ―― 老いも若きも事始め ――」をテーマに、参加者が知見を深めました。本プログラムは、岡谷鋼機株式会社の協賛で運営されます。

プログラムの背景や目的、詳細はこちらの記事をご覧ください。

全10回からなる「デジタル時代の価値観を考えるリベラル・アーツ講座」は、文学、哲学、宗教、歴史、芸術などの分野で活躍する講師陣10名が登壇します。プログラムの案内を受け、ナゴヤイノベーターズガレージ会員に限らず多くの参加申し込みがあり、募集定員30名のところ40名まで増枠。中部圏のビジネスパーソンの学ぶ意欲の高さが伺えます。

古代から現代へ ―― 「文明」という“ことば”を紐解

画像|静岡文化芸術大学学長/京都大学名誉教授 横山俊夫 氏

膨大なデータや画像情報が瞬時に解析され、実生活を動かすデジタルトランスフォーメーションの時代では、経営や個人のキャリアを取り巻く環境が急激に変化し、複雑性を高めています。講師を務めた横山氏によれば、「現代は大きな分かれ道」とのこと。今回のテーマである「文明」ということばについて、同氏は講座の冒頭でつぎのように語りました。

――古い漢語「文明」は、近代に「civilization」の訳語とされてから、貧しいことばになりました。なぜなら、意味が人間界のことに限られてしまったからです。「文明」の2文字が東アジアで2000年以上にわたり大切にされてきた理由は、その核をなす意味が、天地と人があや(文)を織り成して光明を放つ世、すなわち天地文明であったからでしょう。無限につづく専門化と拡大競争で迷走する現代に求められるのは「安定」、しかも閉鎖なき安定です。その実現を促す理念こそ、「天地文明の創出」ではないでしょうか。――

続いて、横山氏は「文明」ということばが、東アジアの中でどのように使われてきたのか、歴史を紐解きながら説明しました。日本では1469年に元号を「応仁」から「文明」に改めていることを横山氏は「戦乱に終止符を打ち、あやに輝く世にしたいという思いがあったのでしょう」と語りました。また、日本にかつてあったユニークな文明化の意欲を今に伝えるものとして、江戸時代前期の俳諧者である安原貞室の著書『かたこと』を紹介。そのほかにも、ことば直しや方言尊重を説く、人類史的価値のある文献を紹介しました。

参加者からの質問

講座の最後には、質疑応答の時間が設けられ、参加者と講師が講義内容を踏まえて意見を交わしました。本プログラムは、ノウハウを学ぶセミナーとは異なり、思想を学び講師を交えて参加者同士で議論を深める内容となっています。全10回の講座を通して参加者はどのような「大人の学びなおし」をするのか、今後に期待が高まります。

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