アスリートが持つチャレンジ精神・高卒就職が生み出す若者イノベーション|NAGOYA CONNÉCT #21イベントレポート

投稿者: | 2022-03-25

イノベーションの促進と交流の機会として名古屋市が主催している「NAGOYA CONNÉCT(ナゴヤコネクト)」(運営:Venture Café Tokyo) が、2022年3月18日(金)に旧那古野小学校をリノベーションしたインキュベーション施設「なごのキャンパス」にて、感染症対策の観点から、オンライン配信のみで開催されました。第21回目・かつ年度末最終回となる今回は「Sports & Careet × Entrepreneurship」と題し、スポーツのキャリアとアントレプレナーシップや高卒就職が生み出す若者イノベーションについて考える4時間となりました。

文:鈴木
写真:若目田

NAGOYA CONNÉCTは「ちょっとした繋がりからイノベーションを生むことができる」をキーワードに、2020年の7月から毎月第4金曜日にリアルとオンラインで開催される定期イベントです。学びと繋がりの両方を叶えるプログラムとなっており、イノベーションに興味や関心がある方なら誰でも無料で参加できます。

アスリートのチャレンジ精神と起業家精神

前半のセッションでは、アスリートのチャレンジ精神と起業家精神をテーマに、スポーツとビジネスにおいて活躍されるお二人のゲストをお招きし、スポーツを通じたイノベーション創出の可能性について追求しました。お二人には、現役時代のエピソードや引退後の活動についてお話いただきました。

登壇者

寺尾 悟 氏(Satoru Terao)
トヨタ自動車株式会社 スポーツ強化・地域貢献部

矢野 良子 氏(Ryoko YANO)
日本女子バスケットボール選手

モデレーター

粟生 万琴 氏(Makoto AOU)
Venture Café Tokyo General Program Manager

寺尾さんは、ショートトラックの日本代表として活動した17年間を振り返り、オリンピックでメダルを取れなかったからこそ、今の人生があるといいます。現在、トヨタ自動車で働く寺尾さんは、国際スケート連盟などの4つの連盟で委員としても活動されています。また、引退から10年後の2020年には、ワールドマスターズに出場し、ご家族の前で金メダルを獲得されました。最後には、人生は楽しいことばかりであるとご自身の考えを示しました。

矢野さんは、人生最大の挫折として、バスケットボールの日本代表として出場したアテネオリンピック予選のギリシャとの対戦で、ゴールを決めれば勝利できる場面となり、試合の残り3秒でシュートを放ちましたが、ゴールを決められず、予選突破をできなかったことを挙げられました。挫折をきっかけに3×3に転向してからは、チームに対してのスポンサー営業やそのための会社を設立するなどの活動をされました。引退の場所と決めていた東京オリンピックでは、選手としての出場は叶いませんでしたが、3×3の解説を務められました。

それぞれの熱い思いを乗せたスポーツピッチ

続いて、3名のスピーカーと2名のコメンテーターをお招きし、スポーツピッチを行いました。スピーカー1名あたり5分の持ち時間で、それぞれ取り組んでいることについての紹介やこれからの展望をお話いただきました。お三方ともスポーツに関わっている点では共通していますが、携わるスポーツが違うことで、三者三様のピッチとなりました。

Sports Pitch ピッチ登壇者

三浦 伸太郎 氏(Shintaroh MIURA)
なごのキャンパスモルック部部長 | 公認会計士・経営学修士(MBA)

星 剛史 氏(Tsuyoshi HOSHI)
パラアイスホッケークラブ東海アイスアークス代表・監督|愛知県アイスホッケー連盟理事|ウェルタクト リサーチアンドテクノロジー株式会社 

三橋 亮太 氏(Ryota MITSUHASHI)
株式会社PLAYMAKER Founder

コメンテーター

倉内 佳郎 氏(Yoshiro KURAUCHI)
中日新聞 広告局ビジネス開発部 部次長(中小企業診断士)

上村 哲也 氏(Tetsuya UEMURA)
スポーツマーケター|元東京2020組織委員会ニュースデスク|元ラグビーワールドカップ2019組織委員会マーケティング部長

三浦さんは、ご自身が部長を務めるなごのキャンパスモルック部についてのピッチを行いました。モルック部の部員は16名いて、なごのキャンパスにある運動場で活動されているとのことです。モルックを盛り上げるアントレーナーシップについては、アントレーナーシップは起業家だけのものではなく、アイデアで変えていくもので、仕事・趣味で出し惜しみしないことが大切であると述べられました。

星さんは、ご自身が代表・監督を務める東海アイスアークスについてのピッチを行いました。東海アイスアークスは、選手15名で活動し、パラオリンピックの出場を目指している東海地区唯一のパラアイスホッケークラブとのことです。クラブ設立の理由として、2010年のバンクーバーで銀メダルを獲得して以来、日本代表が低迷していること、スケートが根づいている愛知県でパラアイスホッケークラブがなかったことを言及しました。今後は指導者の育成や練習リンクの設置、スポンサーの募集をしていきたいとのことです。

三橋さんは、ご自身の立ち上げた会社であるPLAYMAKERについてのピッチを行いました。1年でサッカー選手を辞めざるおえなかった経験から、育成世代でサッカーを辞める選手が多いことを課題として挙げられました。PLAYMAKERは、その課題を解決するために、競技を続けたい選手と活動場所を繋げる情報プラットフォームを提供しています。また、進路指導用の教育ツールとしての活用にも取り組んでいます。現在、登録選手は370名、活用チームは133クラブにのぼり、サッカー界の発展に貢献しています。

倉内さんは、一連のピッチを受けて、東京新聞で、力士が介護サービスを始めたことについて、取り上げたことを明かし、モルックについても、介護業界で活用できるのではと語りました。マイナースポーツは、別の何かと掛け合わせることで、思わぬ展開を生み出すことができるとご自身の考えを述べられました。

上村さんは、自分の学生時代を思い出したといいます。スポーツに関わる仕事がしたいとアプローチした経験はありますが、自分からスポーツを切り開くようなチャレンジをしていなかったそうです。最後には、スポーツに関係する産業が発展し、新しい取り組みが生まれることを期待していると語りました。

ベンチャー×高卒就職が生み出す若者イノベーションの世界

後半のセッションでは、ベンチャー×高卒就職が生み出す若者イノベーションの世界をテーマに、3名のゲストをお招きしました。高卒就職についての分析や高卒就職経験についてお話いただきました。また、ベンチャーと高卒就職についての意見も伺いました。

登壇者

古屋 星斗 氏(Shoto FURUYA)
一般社団法人スクール・トゥ・ワークス代表理事|リクルートワークス研究所 研究員

竹田 将宏 氏(Masahiro TAKEDA)
株式会社Zeals manager

近藤 峽立 氏(Kairi KONDO)
株式会社修理工房 取締役

モデレーター

毛受 芳高(Yoshitaka MENJO)
一般社団法人アスバシ代表理事

古屋さんは、テーマとして「いま起こる職業人生の変化から、若者の新たな選択の価値を発見する」を挙げ、「早活人材」を提唱していくとしました。高校での就職活動については、高卒者は、1社しか知らずに、そのまま就職するケースが多いことを明かしました。そのような現状を受け、高校での助走を変えれば、もっと活躍できると確信しているといいます。現在は、「どこの高校、大学か」という所属ではなく、行動や関心が重要視されており、学生時代の成績が就職後の仕事に与える影響が希薄化していて、良い大学に行って有名な会社に入るルートが消えつつあるそうです。そのうえで、大人が若者に行動や体験を提供する必要があると語りました。

竹田さんは、ご自身が高校卒業後に就職した早活人材であることを受け、高校在学時の環境については、工業高校出身で、1人1社制であり、90%以上が就職をしていたとのことです。高卒での苦労に関しては、就職してしまえば会社内の苦労しかないといいます。一方、転職の際には、大卒以上、経験何年以上などの条件に自身が当てはまらず、苦労したそうです。そのうえで、認めてもらうためには実績を作るしかないとの考えを示しました。ベンチャーと高卒就職については、競争がなく人材が取りやすいため、優位性があると語りました。

近藤さんは、ビジネスのきっかけになった出来事として、小学5年生のときに、近所のホームセンターに、自分が捕まえたカブトムシを売りにいったことをお話になりました。大学進学に関しては、「自分が経営者としてお金を稼ぎたい」という思いがあり、進学より就職を選んだといいます。また、印象に残っていることとして、自分より年上の部下がいることを挙げられました。年上の部下には、指示をしづらいこともあるそうですが、リーダーシップを明確にして、社員から信頼される努力を常にしていると明かしました。ベンチャー企業に高卒人材が入ることについては、お互いに寄り添う必要があるとの考えを示しました。

毛受さんは、一連のセッションを受け、高卒就職はここ5年くらいで注目されていて、まだ昭和のままであるといいます。アップデートすることで現状を大きく変えられる可能性を秘めていますが、高卒就職は現在、6人に1人であり、改善の余地が十分にあるとの考えを示しました。ベンチャー企業が就職先として受け手になっていくのが、これからのあるべき社会であると語りました。

編集部コメント

前半では、アスリートのチャレンジ精神と起業家精神、スポーツピッチについて、お話を聞いて、アスリートとスポーツの可能性を感じることができました。アスリートが、現役時代の輝きを失うのではなく、現役時代があるうえで、引退後も楽しんでいる姿を見て、スポーツの未来は明るいことを確信しました。

後半では、ベンチャー×高卒就職が生み出す若者イノベーションの世界について、お話を聞いて、高卒就職の現状について知ることができました。また、高卒就職は行動力が大事であると感じました。まだ浸透しきっていない高卒就職ですが、その分、大きな可能性があり、これからが楽しみになりました。