【イベントレポート】TOCKIN’ NAGOYA|GAPファンドプログラム成果報告会

投稿者: | 2022-03-26
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2022年3月23日(水)、愛知県・名古屋市・中部経済連合会・大学(Tongali)がタッグを組んでスタートアップを熱く応援する祭典「TOCKIN’ NAGOYA」を構成するイベントの一つとして、「GAPファンドプログラム成果報告会」が行われました。本記事では、同イベントの様子をお伝えしていきます。

GAPファンドプログラム

GAPファンドプログラムとは、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、JST)の事業である社会還元加速プログラム「SCORE」における、産官学部門が実施する大学推進型のプログラム。大学の基礎研究から生まれた「シード段階」の知的財産を、商品として試作可能かどうかを検証する「アーリーステージ段階」にまで引き上げることが目的です。

今回実施された成果報告会は、同プログラムの集大成との位置付け。東海地区8大学から選抜された21チームが登壇し、10ヶ月にわたる仮説検証プログラムやメンタリング、壁打ちなどを経てブラッシュアップしてきた事業化プランが発表されます。

コメンテーター一覧(五十音)

粟生真琴(あおう まこと):株式会社LEO 代表取締役
篠原佑太郎(しのはら ゆうたろう):デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 スタートアップ事業部 東海オフィスリーダー
藤田豪(ふじた ごう):株式会社MTG Ventures 代表取締役
河田喜一郎(かわだ きいちろう):3KR Ventures 代表

プレゼンテーション

プレゼンテーションのセクションでは、1チーム7分の発表に3分の質疑応答の時間がそれぞれ用意されました。ここからは、各チームの発表内容の概要について解説していきます。各チームの詳細情報をご覧になりたい方は、以下の「2021 Tongali GAPファンドシーズ集」をご参照ください。
https://tockin-nagoya.tongali.net/program/day23-gap-fund-promotion.pdf

難治性疾患に対する革新的創薬プラットフォームの事業化|名古屋大学 辻村啓太


名古屋大学の辻村さんがヒトゲノムの内、遺伝子情報をコーディングしていない98%の非翻訳・ノンコーディング領域への異常にアプローチすることで、希少疾患の治療薬を実現させる技術。今後、一般的な疾患への応用にも展開させ、将来的には創薬ビジネスプラットフォームを構築していくといいます。希少疾患ゆえに患者数も少なく、ビジネスとして成立させることが困難な部分に社会課題を感じていた辻村さんですが、アカデミアの研究者によるベンチャー企業ならば、AMED(日本医療研究開発機構)のような大型の公的研究開発資金も調達しつつ希少疾患の治療法開発に取り組めるのではないかと考えたそう。すでに人への健康影響評価や独自特許技術、ノウハウが確立されているため、競争優位性が構築されており、革新的な医薬品開発の準備が整った状況にあります。

全身性エリテマトーデスの新規診断法|名古屋大学 秋山真一


膠原病の一つである全身性エリテマトーデス(以下、SLE)は早期発見が困難です。名古屋大学の秋山さんが、約10年前から慶應義塾大学の曽我朋義先生らのチームと共に取り組む、腎臓病患者の代謝物の網羅的解析の結果、SLE患者にだけ存在する尿中代謝物を発見。それに、特異的に結合するモノクローナル抗体を開発し、エライザ法による診断キットを開発しました。ビジネスの側面においては、現状の課題をコスト削減と捉えており、今後の事業化に向けて大量合成によるコストダウンに取り組んでいくといいます。

血管内皮増殖因子VEGFに替わる微生物由来新規蛋白質標品(BafA)の事業化検証|藤田医科大学 塚本健太郎


藤田医科大学の塚本さんは、細菌由来の全く新しいタンパク質「BafA(Bartonella angiogenic factor A)タンパク質」をバイオ医薬品に繋げる創薬事業を提案します。このタンパク質は体内で新しい血管を作る促進剤のような役割を担うもので、同研究チームが細菌由来としては世界で初めて発見。事業化されれば、心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症など血管障害の治療のコストダウンが期待できるといいます。現在、タンパク質を体内に取り込んで血管を作り出し、血行促進を図る方法が検討されており、手術しか選択肢がなかった従来と比較すれば、全く異なるアプローチとなるそう。BafAタンパク質の内、2種は2019 年に特許出願(単願)が完了しており、発見されて間もないため、実用化において発見者である塚本さんに高い優位性があるといいます。今後はタンパク質そのものを試薬標品として開発・販売する事業を展開しベンチャー企業を創出、将来的には創薬事業への展開を考えているとのことです。

高分子材料と細胞との相互作用を活用した臓器・組織再生促進デバイスの事業化の検証|藤田医科大学 堀秀生


藤田医科大学の堀さんは、傷害された組織を改善できる組織再生促進デバイスを提案します。これは、細胞の薬理効果(成長因子産生能) の上昇を促す高分子材料と細胞をセットにした臓器・組織再生 促進デバイスで、医療用シートのようなものに細胞を捕捉させた製品です。近年の再生医療で実用化されているMSC(間葉系幹細胞)が患部に安定的に定着しないことと、培養時に成長因子の産生能力が低下する課題を高分子材料技術で解決しており、MSCと高分子材料をセット販売することで高い治療効果と市場性が期待されるといいます。

ヒトiPS細胞由来細胞の研究支援材料及び再生医療材料としての事業化検証|名古屋市立大学 松永民秀


名古屋市立大学の松永さんは、動物愛護の観点から動物実験を避け、かつ従来以上に高精度な臨床試験を実現させるため、ヒト生体小腸と同等の機能を有するips細胞由来の腸管モデルを開発しています。松永さんのチームはすでに、ヒト生体小腸と同等の薬物吸収性、薬物代謝活性、薬物輸送能、腸管バリア能を有する腸管細胞をiPS細胞から分化誘導する技術を確立。そして、それらを発展させた生体の組織に近い構造を有する三次元モデル「腸管オルガノイド」の構築技術をも形にしています。将来的には再生医療への応用を目指しているといいます。

標的ウイルス・アレルゲンの同時迅速診断を可能とするマルチプレックス遺伝子診断デバイスの事業化検証|豊橋技術科学大学 夏原大悟


夏原さんらが目指したのは、専門的な技術を要し、かつ工程が多岐にわたるPCR検査に比べ、1キット上での検査項目10倍、5分の1の検査時間、100分の1の検査コストを実現させたマルチプレックス遺伝子診断キット。マイクロ流路と反応容器だけのシンプルな作りになっているため、流路+反応容器というセット形式は流用し、プライマー(目的のDNA塩基配列だけを増幅させるための起点となる核酸の断片)のみカスタマイズすることで、多様なニーズに対応が可能です。現在は2022年度内の起業を目指し、検査プロトコルの確立や診断キットデザインの改良、量産化に向けた取り組みを進行中。今後、農産物や食品検査の受託事業から始め、検査キットや検査アプリの製造販売を並行して改良を重ね、全自動検査システムの開発・販売まで道筋が見えているとのことです。

発現効率化技術により抗原を10倍発現する新しいmRNAワクチン|名古屋市立大学 星野真一


名古屋市立大学の星野さんが開発したのは、mRNAワクチンの複数回接種、副反応、高コストという3つの課題を一度に解消する新しいmRNAワクチン。鍵となったのはタンパク質の一種であるGAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ)でした。星野さんらのチームは、解糖系の酵素として生体内の発現量が特筆して高い因子である「GAPDH」の構造を人工mRNAに導入したことで発現量の増大に成功。且つGAPDHの構造を翻訳効率化技術により最適化させたことで、約15倍の発現効率を実現させました。発現効率が10倍以上ということは、ワクチン接種量も10分の1以下で済み、接種回数の減少や副反応の低減が望めるだけでなく、コスト面が障壁となっていた発展途上国へのワクチンの展開拡大も見込まれます。現在、3段階のビジネスモデルが検討されており、関連企業への基盤技術移転、コロナワクチン以外のワクチン開発への技術移転、技術革新による用途展開の順で進めていくといいます。

オンサイト高速簡易植物診断の事業化検討 ―植物のお医者さんになるー|名古屋大学 野田口理孝


名古屋大学の野田口さんが開発したのは、人を選ばず、容易に植物の病気や栄養不足の診断・対処法を知ることのできる検査キット。検査に要する作業は、葉一枚分の絞り汁数滴を検査キットに垂らすだけです。植物の健康診断を行い「未病」が発見されれば最低限で対処でき、肥料はサプリメント的に足りない分だけ補う形で十分となります。現状は試料作りの手間により、診断までが長くなる時間的な問題と、コスト面での課題があるため、開発している「分子マーカー埋め込みマイクロ流体チップ」を用いて克服しようと取り組まれています。近年、無農薬・有機肥料が好まれる中、「適正管理された安価で健康な農作物」のブランドイメージを作ることができれば、消費者に積極的に受け入れられるという考えの下、資材メーカーや契約農家を抱える食品メーカーへ導入し、データを活用した新しい農業を一緒に作っていくとのことです。

新しい医療用素材を用いた血管内治療技術シミュレーションシステムおよび小口径人工血管の開発と社会実装化|名古屋大学 竹岡敬和


名古屋大学竹岡さんが手掛けたのは、血液適合性を有し、生体血管に匹敵する硬さを持つ小口径人工血管の開発です。PMEAという高分子を用い、角膜をヒントにアモルファスシリカ微粒子を複合化させることで血管への適合性を持たせることに成功。また、シリカ微粒子を採用したことで、血管同様の力学特性を実現しています。現状、PMEA-シリカ微粒子複合材料を、3Dプリンタで血管状に造形が可能な段階まで到達しており、コスト面と成形された人工血管の特性の兼ね合いで、ベストマッチを探索していくとのこと。人工高分子材料を用いて3Dプリンタで安価に成形できるポテンシャルに基づき、治療手技の訓練や術前シミュレーションシステムへの導入から、医療現場で使われる人工血管としての製品化までも目指されています。

高安定性・準メンテンナンスフリーな波長可変レーザー光源の開発と事業化に向けた検証|名古屋大学 富田英生(発表者:井坪暁)


名古屋大学の富田さんが取り組んだのは、高い安定性と、ほとんどメンテナンスを必要としない波長可変レーザー光源の開発。特許出願済の独自設計により、 共振器を省スペースで配置し、装置として従来の約15分の1の大きさを実現しています。光源と共振器を一つの箱の中に納めて一体化させているため、ユーザーが自由な位置にレーザー装置を配置できるだけでなく、利用毎のメンテナンスも必要ないことが強みです。しかし、波長を可変する際には共振器内の光学素子を手動で調整する必要があるため、現在はこの作業を簡便化する方法を検討中。現在は、同製品の受注販売を当初事業として2022年度中の起業を目指しており、単品販売に加え、分光イメージング装置や半導体分析装置等への組込み販売やライセンス販売なども、今後の展開として計画しています。

マイクロ波プラズマを用いた水改質技術|名古屋大学 豊田浩孝


名古屋大学の豊田さんは、サスティナブルにマッチした社会実装・産業応用を進めています。コメ等の種子に大気圧プラズマを照射することで、暑さに強く成長を促進させる技術においては、高密度で1m幅程度の広幅で照射できるプラズマ照射機を開発。コンベア搬送処理により、大量の種子の改質が可能と考え、検証とビジネスモデルの策定を進めています。流体プラズマ照射技術では、大腸菌検査での殺菌効果が確認されているだけではなく、昇温なくナノ粒子等の合成が可能であることから、今後のサスティナブル社会に貢献する合成法として実用化を検討。現状、食品・農業・衛生への殺菌消毒やスキン・エージングケア等へのビジネスモデルの精査・構築を進めており、 中期計画として2025年を目途に事業化していく方針にあるといいます。

砂粒サイズ電力自立個体識別・センシング・管理アクティブIoTタグ|名古屋大学 新津葵一


IoTデバイス自身がそれぞれ置かれている環境を把握し、自立的にエネルギーを太陽光発電して動作するような「電力自立分散型のIoTデバイス」の開発を目指している名古屋大学の新津さん。アクティブ型とパッシブ型の2種類がある「RFID(Radio Frequency Identifi cation、無線通信による自動認識技術)」の、パッシブ型へ自家発電機能を搭載させることで通信距離と小型化を両立させた「自活するRFID」の構築を行っています。すでに1平方mm以下のサイズでは世界最小電力での無線送信器回路の開発に成功しており、養殖業での活用可能性を探る実験が進行する傍ら、生体情報や周辺情報を記録するバイオロギングの基盤技術としての展開を検討しているとのことです。新津さんは、要素技術を用途に合わせてスマートに組み合わせた、機能特化型の超小型低消費電力集積回路設計を事業の柱に据えて2022年度の起業を目指しています。

ICT機器と深層学習を用いた路面性状モニタリング技術の事業化検証|岐阜大学 深井英和


岐阜大学深井さんが進めるのは、道路の路面状態の定期調査をドライブレコーダーやスマートフォンを用いた、低コストで簡単に実施する技術の事業化。少ない予算と人手不足に悩む地方自治体にとって、道路の定期調査コストは痛手です。そこで深井さんら研究チームは、深層学習の独自技術によって、従来の定期調査に必要だった特殊な車両や専門人材ではなく、一般的車両・ドライバーによるパトロールで調査を可能にしました。また、技術を提供する段階においては、現場での計測自体は現地の顧客に任せることで、低予算での事業展開を実現しました。定期調査のコスト面が課題となっているのは日本国内だけでなく、途上国も同様です。そこで当面の間、同技術は岐阜県と、岐阜大学が参画しているJICAのプロジェクトが進められている東ティモールでの調査を中心に据え、その後国内外(国外においては途上国中心)での展開を見据えているといいます。

テニス・バトミントンガット,特殊炭素繊維への事業化を目的とした新繊維応用開発と試作性能評価|名古屋大学 入澤寿平


低環境負荷・ 省エネの観点から、炭素繊維強化プラスチックへの期待が高まり続ける一方、炭素繊維(CF)はコスト面で課題が残り、需要には限界があります。しかし入澤さんのチームは、革新的なCNT(カーボンナノチューブ)分散技術を開発し、繊維、フィルム、バルク体への試作に成功。これらの技術を融合し、究極のライフサイクルアセスメントを実現した次世代構造材料の実現を目指しています。今後の方針としては、CNTを利用した新開発ペレット「CNT良分散ペレット」の複合材料を用いた製品の販売、そして新炭素繊維製造による特殊炭素繊維の受注生産を行う会社を設立、その後2030年には上場する目標を掲げています。CNT良分散ペレットの実用化第1号としてテニス用ガットを採用し、新規開発を行っています。

負熱膨張性微粒子製造技術の事業化検討|名古屋大学 竹中康司


名古屋大学の竹中さんは、あらゆる物質で普遍的に作用する熱膨張とは逆に、温めると縮む「負熱膨張材料」に着目し、セラミック微粒子材料「次世代バナジン酸リン酸塩酸」を開発。同新材料を添加することで、従来材料では得られなかった強力な熱膨張抑制を実現しています。今後の事業展開としては、初期投資が少なくて済む、試験・研究用「次世代バナジン酸リン酸塩酸」試薬の製造販売で収益を得つつ設備投資を行い、大規模実証に応えられる規模の製造販売 (10kgレベル ) へスケールアップ(この時点で大企業とのアライアンスに耐えうる性能や技術を確立している想定)。起業5年を目処に他社への技術供与やライセンスによって生産能力を拡充し、社会実装に求められる規模 (1tレベル)の供給を実現していく見通しです。

コロイド結晶化技術の事業化検証―金ナノ粒子の自己組織化による超高感度センサー|名古屋市立大学 山中淳平


微量物質の検出方法の一つである「ラマン分光法」の感度を高めるため、通常の基板に特殊な加工を施したSERS(Surface-Enhanced Raman Spectroscopy:表面増強ラマン分光)基板。名古屋市立大学の山中さんらの研究チームは、市販のSERS基板と比較して、感度を14倍まで高めた超高感度SERS基板を開発しました。基板側の加工で感度が高まる分、物質を分析する装置側の性能を落として、小型化・ 低価格化を可能にしています。製造手法はコロイド結晶を基板に吸着させるのみであるため、量産に向き、コストも抑えられることが強み。3年後を目安に起業を目指しており、起業後当面はユーザー企業へ製法のライセンスする段階から始め、その声から望まれる製品像を確認しつつ、用途ごとのセンサーや分析装置の小型化等の共同開発を進めていく見通しです。

高品質窒化物半導体エピタキシャル成長技術の事業化検証|三重大学 上杉謙次郎


上杉さんは世界的に望まれる、水銀からの脱却を背景とした、「安価」「高出力」「長寿命」の殺菌用途の深紫外線LED(DUV-LED)の開発を行っています。DUV-LEDは窒化アルミニウム(AlN)を基板として、その上に発光のための材料層を有機金属気相成長法 (metalorganic vapor phase epitaxy:MOVPE)で何層か積み上げた構造です。当初、基板の製膜工程における課題として高コストがあったものの、新たに考案した「三宅方式」を用いたことで安価な製法を確立。同時に、製膜の品質も大きく向上しました。現在は殺菌目的で265ナノメートルの波長ではありますが、 農産物をより色鮮やかにする波長や、魚介の産卵を誘発する波長、稲の生育を助ける波長など、多様なニーズに応えられる可能性を持つといいます。水銀ランプをDUV-LEDに置き換えたい、或いは、より高付加価値の殺菌装置を製造したい殺菌ユニット・機器メーカーを顧客として想定しており、技術特許のライセンシングか、製造したAlN 基板の提供の上、製膜プロセスのカスタマイズを共同で進め、様々な用途への応用につなげていくなどを検討しているとのことです。

ループヒートパイプ(LHP)を用いた熱輸送技術の事業化検証|名古屋大学 長野方星


名古屋大学の長野さんは、CPUにつなぐだけでスマートに冷却可能なデバイス「evapoLink」を開発。省スペース、容易な設置、超静音、メンテナンスフリーなど、CPUを冷却する際に起こり得る問題をいずれもクリアしています。また、ループヒートパイプ(LHP)という省エネ技術を採用し、液体の毛細管現象を活かして動力に電気を使いません。仕組みとしては、CPUから受け取った熱で液体が蒸発。蒸気として放熱場所まで運び、放熱後は冷却されて液体に戻ると、多孔体を通して毛細管力で移動し、再度熱を受け取る場所へと戻るというように循環していきます。今後は水冷式に代わる新タイプのCPU冷却装置として商品化して販売を始め、その後データセンターの冷却や排熱利用など多方面の応用先へ裾野を広げ、脱炭素 社会のキーテクノロジとして普及を目指すとのことです。

超解像による分光分析の高精度化|名古屋大学 原田俊太


名古屋大学の原田さんら研究チームは、分光データ(スペクトル)の解像度を100倍向上する技術開発に成功。既存の分光測定装置で高精度データを取得できる組込みソフトウェア技術を開発しました。事業化が進めば、半導体や医療機器などの製造工場の検査で使用されている分光測定装置を用いて、高精度なデータを低コストで取得できるといいます。二次元画像データで解像度を上げる「超解像」という手法を、一次元のスペクトルデータに応用することで測定精度を担保するアルゴリズムを構築しています。既存の分光測定システムへ組込むソフトウェアの開発委託費とライセンスでマネタイズしていく方針で、組込みの前段階ではソフトウェア開発の委託を受けて、超解像システムの有効性実証も検討しています。始めは優位性の強い「半導体のキャリア密度測定」「電子線分光」「簡易・ 小型の分光装置への組込み」の3分野で実証を行っていくとのことです。

xR技術の安全保護器具応用の事業化検証と商品開発|名古屋大学 犬飼大樹


名古屋大学の犬飼さんは、レーザーを使用する作業において、保護ゴーグルは複数の波長に同時に対応できず、作業性を落とす欠点から、実際の現場では頻繁に外されているといいます。失明リスクを下げつつ、作業性を保つために犬飼さんらのチームが開発したのは、VR技術を応用した「レーザー保護めがね」。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を通じて外界を視認しつつ、レーザーを遮断する全く新しい保護めがねです。前面に装着された2つのカメラから得られた信号がHMDに没入型VR映像として表示されるため、使用者の目に直接レーザーが照射されることはなく、波長ごとに保護めがねを付け替える必要もありません。今後は「VR酔いを起こさない映像」「下方視野角の改善」「本体の軽量化」などの実現を目指しているとのことです。まずは早期の解決が求められている、複数の波長の同時使用が必要なパルスレーザー使用者の安全確保を第一義として開発。その後、研究や美容整形、加工、航空の4領域への展開を模索し、2027年には790億円 (4.5百万台)となる見通しの世界市場を開拓していくといいます。

半導体量産装置の稼働率を上昇させる画期的プラズマプロセスモニターの開発|名古屋大学 夏目祥揮


名古屋大学の夏目さんは、半導体製造の現場で用いられているエッチングやCVDなどのプロセスプラズマ装置の内部クリーニングを最適頻度で行うために、使用時におけるプラズマの空間分布から内部状態を推定するモニタリングシステムを開発。夏目さんが専攻する核融合発電の分野の知見を横展開し、プラズマ計測によるモニタリングシステムの考案に至ったといいます。同システムは、真空容器内部に設置したプローブによる局所的・高精度・高時間分解能なプラズマ計測の技術、そして広角カメラによる計測情報からプラズマ発光分布を再構成する技術の掛け合わせによって実現しています。一方で実用化への課題は、モニタリングシステムの有用性の実証。直近では、テストが可能な段階にまでシステムやインターフェースを高めていく必要があるそうです。

編集部コメント

今回様子をお伝えしてきたGAPファンドプログラムですが、本記事を読まれている方の中には、なかなか目にすることのない技術が多かったのでは無いでしょうか。日常生活においては関わりの希薄な分野の先端技術に触れたことで、新たな知見を得たり、技術の進歩に単純に驚いたり、観ていて心にさまざまな刺激が与えられた貴重な時間でした。また、本記事を通じて少しでも、起業を志す方々の内側から溢れ出すエネルギーや、向上していこうとするひたむきな姿勢が読者の方々に伝わればと思います。