一般社団法人中部経済連合会は、2019年7月に名古屋市栄に開設するイノベーション新拠点の運営法人「一般社団法人中部圏イノベーション推進機構」を5月に設立。同法人は中部圏のイノベーション・エコシステムのプラットフォームとして、名古屋市栄のナディアパーク4Fに開所予定の新拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE(ナゴヤ イノベーターズ ガレージ)」の会員募集を開始しました。
「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」とは
「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」は、一般社団法人中部圏イノベーション推進機構が運営するコワーキング機能を持ったイノベーション拠点です。対象者は、起業や新規事業開発、社内で既存事業の画期的な改革を志す人たち。会員区分は個人会員と法人会員の2つで、年会費は個人会員60,000円、法人会員360,000円となっており、入会には審査が必要となっています。6月4日(火)から会員募集を開始し、オープンは7月8日(月)を予定しています。
新拠点のコンセプトは「ガレージ」
同施設は、150名規模のイベントが開催できるコラボレーションエリアをはじめ、ひとりで業務に集中できるフォーカスエリア、ミーティングエリアなど、8つのエリアに分かれています。インターネット接続完備で、会員の同伴者は会員1名あたり3名3時間まで利用できます。
また、同拠点では会員・一般向けに年間280以上の各種プログラムやギャザリングを用意しています。これまで中部経済連合会が開催してきた中部圏イノベーションプログラムのフューチャーコンパス(※1)やビヨンドザボーダー(※2)などもこちらで実施予定となっており、利用者に世界の潮流やイノベーションに気づく機会を提供します。
(※1)フューチャーコンパス…世界で活躍する各界のプロを招いて継続的に講演会を開催するプログラム。
(※2)ビヨンドザボーダー…起業や社内ベンチャー、新規事業の開発、既存事業の画期的な改革を推進していくリーダー「イノベーションドライバー」の育成を目的として、中部圏の様々な規模の企業から集まった若者が、各分野で活躍する専門家の講義やグループワークを通じて新規事業の構想やネットワークを作るプログラム。
中部圏の核融合としてのイノベーション拠点を
ーー「ナゴヤ イノベーターズ ガレージ」を開設することになったきっかけを教えてください。
藤原:中部5県の知事と名古屋市長、国の主な地方機関の局長、主な大学の学長および中経連の正・副会長を構成メンバーとする中部経産業振興協議会(※)で、2016年ごろから中部圏のイノベーションを触発し続ける仕組みについて検討していかなければいけないと議題に上がっていました。
※中部経産業振興協議会…中部圏の先端的技術等を活かした産業振興について、広域的な産学官連携により地域を挙げて推進するための機関として、中経連の呼びかけで2002年に設立された協議会。
同時並行で、中経連としても名古屋の栄地区に中部圏のイノベーション・エコシステムのプラットフォームとなるような拠点を作りたいと考えていたんですよ。そして、名古屋市と2年間協議していたところ、2018年の夏頃に、「栄地区の再開発をしたいのでナディアパークを使いませんか」という話が出て。シンボリティックなきちっとした良いもの、“核融合炉”をつくりたいと新拠点を設立することになりました。
ーーそのような議題が上がってきた社会的背景とは何でしょうか?
藤原:今、世界がディスラプティブなビジネスモデルに入り始めています。これは、既存の産業構造が破壊し始め、新しい産業構造に変わりつつあるという世界の潮流です。日本の経産省と話をしていると、中部圏は自動車・モビリティ系が中心の“一本足打法”になっていると。
現在、中部地域5県のGDPが81兆円。今後、ディスラプティブなビジネスモデルに入り始めていくと、乗数効果で20兆円ほど一気にGDPが落ちていく可能性がある。そういったときに中部圏として財政的にも雇用的にも、結果として社会的に成り立たない時代がくると懸念されているのです。
ーー世界のディスラプティブなビジネスモデルの例としては具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
藤原:アメリカの場合はミシガンの周辺に自動車技術がありましたが、壊滅的な打撃をうけていて。産業がどこに移っているかと言うと、まずは西部に行って、それを受けて東部に移り、イノベーション・スタートアップ系が猛烈な勢いで動いてきました。今度は中西部、テキサスを中心にして起きています。そういう流れを考えていくと我々も非常に危機感を感じますし、何か手を打たなければいけません。
ーー拠点ありきではなく、社会的背景を受け、産官学の協議の延長線上に拠点設立に繋がったということですね。それまでにどのような準備段階を経ているのでしょうか。
藤原:2ステップ踏んでいます。まず1ステップは、中経連が中心にして手をかけてみようと「中部圏イノベーション促進プログラム」を立ち上げました。このプログラムは、まず世界の潮流である危機感を捉えられる講演会の実施に加え、中部圏には優秀な若者がいるのでイノベートドライバーをつくっていこうと。そこから出てきたアイデアもしくは外部から出てきたアイデアをプロジェクト化する、という3段階になっています。
それと同時進行で産学連携はもちろん、中部圏内外のICT・スタートアップ関係者によるヒアリングを実施しました。それをもとに、中部圏のイノベーション拠点における仮説を導き出し、国内外のイノベーション拠点のベンチマークを行いました。
ーー新拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」の今後の展開を教えてください。
藤原:事業のミッションとしては、中部圏のイノベーションを触発し続ける仕組みづくりを形成することです。我々が目指しているビジョンは、イノベーションビッグバンを誘発する交流対流のプラットフォームを作り上げ、最終的に生産性を1人当たり70%上げること。現在、中部圏の1人当たりの生産性は4万ドル、それを6万ドルに上げる新産業を創造したいと考えています。
目指す領域は、中部圏が世界に誇れるものをつくって具現化していくというリアルな「ものづくりの新産業化」です。ただ、ディスラプティブに攻撃してくるファイターがまわりにたくさんいます。対抗していくには、リアル×イノベーション系の考え方で、世界をつなぎ、リアルとデジタルの世界が共存するような新しいビジネスモデルをどんどんつくっていきたい。その大きな目標に向けたKPIとして、10年で1,000名のイノベーターを作り、年間で25,000名の来場を誘導すると設定しました。
ーーどのような人に拠点を利用してもらいたいとお考えですか。
藤原:「尖った人」ですね。仕事でも、趣味でも、尖がりたい人にぜひ来てもらって、ビジネスの新しい考え方で影響を発揮して欲しいです。そのための環境を「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」に整備しました。同じ志を持った人たちが集い、イノベーションを生み出していきましょう。
編集部コメント
NAGOYA INNOVATOR’S GARAGEは集まる人々のディスラプティブな発想で多くのアイデアから、中部圏を担う次世代の人材がイノベーションを生み、世界を変える発想をもたらす場所として期待されます。起業や新規事業開発、既存事業の画期的な改革を推進する人などイノベーションに興味関心のある個人または法人の方は、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。
詳細について
開所式:7月8日(月) 13:30~15:00(招待制)、内覧会15:00~(どなたでもご覧いただけます)
所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3丁目18-1 ナディアパーク4F
問い合わせ:info@garage-nagoya.or.jp
運営:一般社団法人中部圏イノベーション推進機構
URL:https://garage-nagoya.or.jp/