脱炭素社会の実現に向けて|NAGOYA CONNÉCT #15 イベントレポート

投稿者: | 2021-10-11
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イノベーションの促進と交流の機会として名古屋市が主催している「NAGOYA CONNÉCT」(運営:Venture Café Tokyo)が9月24日(金)、新型コロナ感染拡大防止のため、オンライン形式で行われました。

前回の同イベントで立ち上げ記念セッションを行った「環境イノベーションコミュニティ」がついに始動し、第一弾として“住宅の脱炭素化”に取り組むスタートアップ4社が登壇。取り組んでいるプロダクトの紹介やそれに対する困り事などを共有する機会が設けられました。トレンドの環境問題ですが、名古屋にも志がある起業家が多く存在することを知る良い機会となりました。

文:各務

写真:各務

新設立の「環境エネルギーイノベーションコミュニティ」に期待感大


「NAGOYA CONNÉCT」は昨年7月から毎月第4金曜日に開催されている定期イベント。イノベーションを促進するためのパネルセッションや繋がりの機会を組み合わせたプログラムが用意され、誰でも無料で参加できます。

今回のメインテーマは「脱炭素社会の実現に向けて」。このテーマが議論されたのはオンライントークルームAでした。2021年8月24日に立ち上がったばかりの「環境イノベーションコミュニティ」と愛知県スタートアップ支援拠点「プレ・ステーションAi」が主体となり、“住宅の脱炭素化”に主眼を置いたスタートアップ4社のピッチが行われました。

地球の温暖化の影響は近年誰もが感じていることであり、具体的なアクション考え始めている人も多いのではないでしょうか。そんな問題に向き合うスタートアップの話を直接聞ける機会があることにわくわくしました。

名古屋の「住宅の脱炭素化」に取り組むスタートアップが集合!

スタートアップピッチでまず始めに登壇したのはSyncMOF株式会社 代表取締役社長の畠岡潤一さん。経済産業省が推進する「J-Startup CENTRAL」にも選出された東海地区を代表するベンチャーを立ち上げられた方です。SyncMOFはMOFという多数の細孔を内部に有する材料(多孔性物質)でガスや蒸気の分離、貯蔵をできるものを技術開発している会社で、MOFはCO2の回収や脱炭素燃料である水素の貯蔵に利用できる注目度の高い材料であるという説明がされました。今は工場で利用されることが多いそうですが将来的には家庭にも応用できるようになるだろうとのことでした。

次に登壇したのはスタジオアンビルト株式会社 取締役の山川紋さん。こちらの会社では「マドリー」という建築士に住宅の間取りを手軽に考えてもらえるサービスを提供されています。日本の住宅が断熱性能で世界に大きく遅れをとっているのは、太陽光や風通しをおざなりにした家が多いため。「住宅の脱炭素化を目指すには間取りの質の高い家づくが重要だ」という見解が述べられ、コメンテーターもその方向性に共感していらっしゃいました。

環境イノベーションに関する知見をシェア


その次に登壇したのは、「病害虫診断アプリ」の開発に取り組む株式会社ミライ菜園 代表取締役の畠山友史さん。撮影するだけで病害虫を診断してくれるアプリを作り、家庭菜園の体験を最大化しようとされています。畠山さんは「家庭菜園に取り組めば、生ごみのたい肥化などが進み、野菜の輸送費もかからないためCO2削減に寄与する」という論を展開され、コメンテーターからも「こんな角度から住宅の脱炭素化ができるんだという発見があって面白かった」と感心の言葉が寄せられていました。

最後の登壇は、株式会社LEO代表取締役CEOの粟生万琴さんです。粟生さんはVenture Café Tokyo NAGOYA CONNÉCT Programのマネージャーをされていますが、起業家としての一面もあり、2021年4月から三重県菰野町に「AOU no MORI」をオープンされています。スタートアップや大学の研究室が行う社会実証実験の場として借りられることが多い施設で、敷地内には名古屋工業大学発のスタートアップが作る4時間で建つインスタントハウスがあることなど紹介されました。

ピッチの最後に粟生さんから「施設をオープンしたものの山の中での電源獲得には四苦八苦している。みなさんの知恵を貸してほしい」という要望があり、コメンテーターたちがアイデアを出し合う場面もありました。「まさにこういった困り事を共有するのがこのコミュニティの目的であり、いい時間だった」と参加者皆が笑顔になり、会場では今後の「環境エネルギーイノベーションコミュニティ」の発展への期待が膨らんでいました。

「ゼロ・ウェイスト」な社会を実現するために


トークルームAの後半プログラムは、「Green Innovation -持続可能な社会を考える-」と題したトークセッションでした。

はじめに、一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事の坂野晶さんからの基調講演が行われました。講演の中で提示された「アース・オーバーシュート・デー」という言葉がとても印象的で、それは1年間に地球が生産できる量を、人間が使い尽くしてしまう日を指しているとのこと。「オーバーシュート」が始まったのは1970年代で2019年は7月29日が「アース・オーバーシュート・デー(1年間に地球が生産できる量を、人間が使い尽くしてしまう日)」でした。つまり、7月30日以降の自然資源は全て未来の世代が使う資源に手を付けながら私たちは暮らしていたそうです。これを聞いた時にとても危機感を覚えました。

その他にも「2050年には海中にいる魚より海のプラスチックの量の方が多くなる」「2050年にはクリスマスに紅葉が見られるくらいの気候になる」などといった衝撃的な予想が次々と挙げられました。

坂野さんはまずは地域の中で循環型の社会を作ることが大切と考え「うんなんコミュニティ財団と循環型のまちづくり(徳島県雲南市)」や「ゼロ・カーボンとゼロ・ウェイストの町(長野県小布施町)」などの取り組みをされているそうです。

環境活動へ自ら一歩踏み出す学生たち

基調講演を終えて、次は地元で活躍するスタートアップや学生たちを交えてのパネルディスカッションに移りました。参加者は、株式会社On-Co代表取締役で「さかさま不動産」を手掛ける藤田恭平さん、環境団体CleanGreenを立ち上げた名城大学4年の三輪久美子さん、同団体の現リーダーで名城大学2年の奈義良遥子さんです。

藤田さんは、「空き家を活用することはサーキュラーエコノミー(循環社会)に繋がっていると思う。木造住宅建築時の二酸化炭素排出量は約33トンもあるので、多くの人が空き家を借りるということが選択肢に入る世の中になればいいなと思う」と述べられていました。

三輪さんは、「就職活動で環境系の会社を目指していたが蓋を開けてみたら数社しか行きたい会社がなかった。今はエシカル就活(人・地球・社会を豊かにし、持続可能な世界を創る。社会問題に取り組む企業と学生の出会いの場を提供すること)に興味を持っている学生が多いのに、実際に行なっているところを見つけるとなると難しいことがわかって残念だった。今後はもっと企業も新しい視点を取り入れていくべきだと感じた」と就職活動で気づいたことをシェアしてくださいました。

奈義良さんは、「環境系の活動をしていると意識高い系の学生で特別視されがちなのが悲しい。行動する人たちの受け皿が社会に多くあったらなと思う。そう考える人が集まれるコミュニティがもっと出来れば行動に移せる学生も増えていくと思う」という意見をくださいました。

坂野さんや藤田さん、そして学生達の話はとても説得力があり、環境問題に対してどこか他人事で話を聞くのではなく常に自分事として捉えなければならないという認識を新たにしました。坂野さんがおっしゃられた「できない言い訳を探すのではなく、まずは何でもやってみること」いう言葉がとても響き、明日から何か行動を変えてみようかなと思わずにはいられませんでした。

いま東海地区はかつてないイントレ・アントレチャンス!

別会場のオンライントークルームBでは、GLOBIS マネージャーの大崎司さんが中心となったプログラムが運営されていました。GLOBISはグロービス経営大学院を手掛けるだけでなく、グロービス・コーポレート・エデュケーションで法人向けに組織を作るサポートも行っているグループです。まず始めに現場から多くの知見を得てきた大崎さんが考える“東海地区のイノベーションのトレンド”がシェアされました。

「いま東海地区にはかつてないほどアントレプレナー(起業家)やイントレプレナー(社内起業家)にとってのチャンスが訪れている」

最初にそう話された大崎さんは、「愛知県や名古屋市が様々なスタートアップ支援を行っており、一方で自動車産業なども100年に一度の事業ポートフォリオを書き換えなければいけない時期にきている。だからこそ新規事業を作っていくことが出来る人が重宝されつつある」と続けました。

仲間を得ることが新規事業立ち上げの勇気になる


実際に現場で奮闘している人たちは各々の局面をどうとらえ行動しているのでしょうか。その声を聞くために、プログラム後半ではグロービス経営大学院で学び新規事業を起こしている元学生の方たちのピッチを聞く機会が設けられました。

大手小売企業サラリーマンでありながらもベンチャーの立ち上げやコンサルティングなどを通じてスタートアップに関わっている世古雄紀さん、40代半ばで大手企業からベンチャーへ転職した大池牧子さん、電力系プラント会社に勤めながらもグロービスで出会った仲間と日本文化のワクワク創造する会社を立ち上げた村瀬玲小さん、父親の会社を継ぐのを辞め、新規事業に着手している鳥羽伸嘉さん、大手自動車メーカーに勤め現在は起業準備中だという西澤祐輔さんの5名にお話しいただきました。

最後にピッチをされた西澤祐輔さんの「ビジネスで活躍している人は人的ネットワーク広げながら、成長のサイクルを回している。人と繋がるから志が磨かれる。人と繋がるから、自分に足らないものがわかりスキルを高める。人と繋がるから、安らぎを得たり、チャレンジの機会を得たり、新しくチャレンジする仲間とも出会える。僕は人的ネットワークの価値を感じていなかったが、その気づきが一番デカかったし、僕の人生を変え、変え続け、これからも豊かにしていくと思います。 」と語られたことが印象的でした。

5名のピッチを聞いて、アントレプレナーやイントレプレナーの需要が高まりつつある昨今、自分に自信を持って突き進んでいく強さがより求められていることがわかりました。

名古屋のスタートアップ、ベンチャーで働く女性が語る

トークルームBの後半のプログラムは、4月からの連続企画のセッション「Women’s Leadership Session Vol.5」でした。

今回はスタートアップやベンチャーで働く女性たちにフォーカスしたセッションが行われ、登壇者は株式会社TRYETING 取締役副社長兼COOの菅沼美久さんと株式会社ヴィス デザイナーズオフィス事業部プロジェクトマネージャー リーダーの福岡理恵さんでした。

お二人とも今年第一子を出産したばかりでほとんど育休を取ることなく仕事に復帰されていることに注目が集まり、「なぜ早期復帰したのか」という質問が飛びました。菅沼さんは「役員であるため育休制度などはなく、自分が会社の環境を整える側なので早く戻りたかった」、福岡さんは「離れたくないプロジェクトがあったからあまり前例はなかったが会社に頼んで早く戻らせてもらった」と回答。ともすれば長期育休を取ることが推奨されがちな現代の流れからは逆行しているようにも感じられますが、ひとくくりに女性といっても多様な価値観があることがわかりました。

「女性に限らず男性にも多様な働き方があっていい、出社日を調整できたり、子どもを連れて行ける社内会議があったり組織はもっと寛容になるべきだ」という福岡さんの意見もあり、働く人のニーズに合わせた制度作りが急務であることが感じられました。

二人は夫や周りの手厚いサポートを受けながら出産後すぐに第一線で活躍され、とても生き生きされていました。「私たちが見本にならなければ」と語る姿からは、スタートアップやベンチャーで働く女性は力強く、そこから新しい働き方が生まれてくるのではないかと期待が膨らみました。

「ROCKET PITCH NIGHT AUTUMUN 2021」について

なお、会場では2021年11月11日(木)にCIC Tokyoとオンラインでハイブリッド開催される「ROCKET PITCH NIGHT AUTUMUN 2021」のアナウンスも行われました(申込〆切2021年10月17日(日))。このピッチはVenture Café Tokyoを象徴するイベントとなっており、今回は100組のピッチと1,000人の参加者になることが予想されているそうです。登壇者に対しては3分 & 3スライドというピッチフォーマットをもとに、みなさんのビジネスアイデアを世に問う機会が設けられ、経験豊富なコメンテーター陣からのコメントをもらうこともできます。
名古屋エリアからも登壇者を大募集中とのことなので皆さんぜひ奮ってエントリーしてみてください!
詳細:http://venturecafetokyo.org/rocket-pitch-night-autumn-2021/

編集部コメント

どちらの会場でも話題になっていたのは、“新しいことを始める時に障壁になるもの”についてでした。それは社会や会社の制度だったり、自分自身の自信の無さだったり、はたまた資金の問題であったりするようですが、今回紹介された「環境エネルギーイノベーションコミュニティ」やグロービス経営大学院はそうした障壁を払拭してくれる場所であることが伺えました。そこで得た自信や知見は新規ビジネスの創出にとってかけがえのないものになることを改めて感じられます。

次回開催情報


■日程
2021年10月22日(金)17:00-21:00

■開催場所
なごのキャンパス
オンライン(ZOOM)

■概要
NAGOYA CONNÉCTは毎月第4金曜日17時-21時になごのキャンパスで開催される「名古屋とつながる。名古屋でつながる。」コミュニティ・イベントです。第16回開催となるNAGOYA CONNÉCTは、引き続き多様なイノベーター達による講演を通じて参加者は学びを得ながら、そこで得た共体験を梃子にネットワークを拡げることが出来ます。

今回のイベントでは、欧州におけるスタートアップの中心地の一つであるパリで、2015年にイノベーションを担う外郭団体として設立されたパリ市経済開発公社「Paris&Co」によるワークショップが開催されます。Paris&Coは、2019年に愛知県とMOUを結び、昨年度からイノベーションプログラムを開催してきました。今年で第4回となるセッションでは、「スマートシティ」をテーマに大企業とスタートアップの協業事例紹介や、Paris&Coイノベーションプロジェクトマネージャーとのパネルディスカッションが行われます。

後半のセッションでは、第6回目のとなる「Women’s Leadership Session Vol.6」が開催。ダイバーシティ経営のトップランナーであるカルビーの人事トップとして新しい働き方を推進する武田 雅子氏が登壇されます。その後、女子大学生、社会人女性たちとの座談会も開催。それぞれの立場から感じる課題や悩みについてともに考えるセッションです。

■詳細
https://ng16.peatix.com/