イノベーションの促進と交流の機会として名古屋市が主催している「NAGOYA CONNÉCT」(運営:Venture Café Tokyo)が10月22日(金)に、旧那古野小学校をリノベーションしたインキュベーション施設 なごのキャンパスで行われました。当日は感染対策を徹底したうえで、リアルとオンラインのハイブリッド形式で実施されました。
今回のイベントではパリ市経済開発公社「Paris&Co」によるオープンイノベーションの実例や、スタートアップ企業と大企業の協業がもたらすスマートシティの可能性についてのワークショップや、ダイバーシティ経営を行うカルビー女性管理職の武田雅子氏に「自分らしい働き方・生き方について」のセッションが行われました。特に女性管理職の方々のお話は、私自身、これからの多様な働き方を考える良い機会となりました。
文:羽根
写真:羽根
オープンイノベーションとダイバーシティ
NAGOYA CONNÉCTは「ちょっとした繋がりからイノベーションを生むことができる」をキーワードに、昨年の7月から毎月第4金曜日に開催している定期イベント。イノベーションを促進するためパネルセッションなど学びの機会と、繋がりの機会を組み合わせたプログラムとなっており、イノベーションに興味がある方なら誰でも無料で参加できます。毎回、リアル参加とオンライン参加で合わせて200人前後が参加するコミュニティとなっています。
今回のイベントでは前半と後半で、テーマが大きく分かれました。
前半はフランスの Paris & CO. からゲストをお招きし、加速するフランスでのオープンイノベーションの現状や、大企業とスタートアップの協業事例についてお話し頂きました。後半は女性の多様な生き方や働き方を考えるダイバーシティ経営についての話がありました。
日が沈むのが早くなった10月下旬。会場にはイベント開始前から様々な業種の方が集まり、ドリンクを片手に活発な意見交換が行われていました。
Paris &Co.による大企業とスタートアップ企業の協業サポート
5時半から会場で行われたワークショップでは 愛知県と共にオープンイノベーションを進めるMOUを結んだ、パリ市経済開発公社「Paris & Co. 」(以下、Paris&Co)からプレセンターとして、イノベーションプロダクトマネージャーのHelene Colinet 氏が登壇しました。
パリは欧州の中でも特に、スマートシティに関するイノベーションに積極的に取り組み、欧州におけるスタートアップの中心地の一つとなっています。そんなパリ市において、イノベーションを支援するために設立された団体がParis & Co.です。
当セッションでHelene氏から、大企業とスタートアップ企業の協業についていくつかの事例をあげて例を挙げて詳しくお話しいただきました。
大企業にとっては新しいテクノロジーを社内に呼び込むことができ、新しい市場に参入するきっかけとなる。スタートアップにとってはをきっかけに資金調達が可能となり、安定した構造の中で開発を行うことができます。その他にも協業のメリットについてスライドを交えて、ご説明されました。
また、Paris & Co.のような、スタートアップ企業と大企業、双方を理解した存在が介入することの重要性を強調しました。
「Paris &Co. は、ミーティングの場を作り、大企業とスタートアップ企業の両方が会えるようなチャンスを用意しています。我々の役目は、両方のニーズをつかむことです。その上で双方を引き合わせるのです。そしてそこに新しいビジネスチャンスの可能性を探っていきます。」
さらに、オープンイノベーションの際にネックとなりやすい問題として、タイムラインの遅延を挙げていました。
「敏捷性が重要なスタートアップ企業と長期スパンでプランを練る大企業では、プロセスが大きく異なります。ビジネスチャンスの大小はありながらも、やはり、ショートなコラボレーションプログラムが望ましいと思っています。」と見解を述べました。
後半はパリのスタートアップ企業「Magma Technology」から CEO兼共同創業者の Mourad El Bidaoui氏をパネリストとして招き、世界的大企業L’Oréal との協業について話して頂きました。
Magma Technologyでは配送をリアルタイムで追跡できるプラットフォームを開発し、大企業でのスマートな商品配送を実現しています。
さらに、フランスの大手天然ガス配給会社のGRDF社より、Development Direction 国内マネージャーである、Antoine Sellier氏にも登壇いただきました。
GRDF社ではスタートアップ企業eGreenとの協業事例をご紹介いただきました。
いずれも、Paris & Co.が中間役となり、協業が実現した企業です。大企業、スタートアップ企業の双方の視点からのお話は協業のエネルギーをより感じられ、オープンイノベーションの可能性にさらなる希望を持つことができました。
自分らしい生き方と働き方
19時半からは「Women’s Leadership Session Vol.6 -未来に向けた『自分らしい生き方・働き方』を考える-」をテーマに、ダイバーシティ経営のトップランナー、カルビー株式会社より、常務執行役員 CHRO 人事総務本部長である武田雅子さんに登壇していただきました。
「女性の活躍なしにカルビーの成長はない」をモットーに人事のトップとしての走り続ける武田さんの言葉は力強く、そして多様な社会を切り拓くエネルギーを感じさせてくれました。
ダイバーシティと聞くと女性にフォーカスがあたりがちですが、それでは社内全体に当事者意識が芽生えません。
「単純にダイバーシティ、女性活躍とだけをやっていればいいということではなくて会社の成長を担う、全従業員。なので、活躍の対象は全員です。まずは全員が活躍できる環境、それについてみんなで考えましょう、と社内へ向けて話しました」
例え、同じ性別であったとしても、個人はそれぞれ違うということ。個人はそれぞれ異なる人間なのに、与えられるリソースは同じでいいのだろうか、と武田さんは問いました。
「どうやったら全員が成果を出せる、全員がバッターボックスに立ってヒットを打つことができるだろう、それをみんなで考えていきましょう」
また、失敗を許すカルチャー、性善説マネジメントの必要性についても話されました。
「躓いてもいいから前に進みましょう」武田さん自身が社長から受け取ったメッセージを社内のテーマのひとつとして掲げ、挑戦した人を賞賛するカルチャーを広げています。それが心理的安全な場を造ると武田さんは考えています。
さらには、コロナ禍でリモートワークが増えたことにより、雑談の場が減っているとも話されました。ちょっとしたボタンの掛け違いが誰かの悩みになりうる。そんなことから、「場づくり」と性善説マネジメントの重要性を感じているそうです。
「オンラインでいいので皆さんが集まれる場を作らないといけない。これからは自分自身で場を作れる人、場を見つけられる人だけが生き残ります。つくることも見つけることもできない人は情報から置いて行かれてしまう時代になっていきます。」
武田さんは性善説マネジメントを採用することで、不足しているコミュニケーションを補い、親密なチームをつくることを目標としているそうです。
セッションの後半は、東海圏で働く女性管理職の方3名と、女子大学生2名に登壇していただき、自分らしい働き方や生き方について、武田さんとの座談会を開催しました。
女性管理職として感じる現場での悩みや、子育てとキャリアのバランスになど、武田さんを交え、ざっくばらんな意見交換がなされました。
編集部まとめ
今回のイベントでは、フランスで進化し続ける、非常にイノベーティブなスマートシティの現状を聞くことができました。ぼんやりとしていたオープンイノベーションのイメージがくっきりと輪郭を持ち、多様なコラボレーションによってサステナブルな街づくりが実現されていくのだと強く感じました。
また、後半のカルビー常務執行役員である武田さんのお話は同性として希望を感じるものばかりでした。変化を続ける社会と、企業。その先にあるのはダイバシティな社会に違いない、と感じました。ひとりひとりが各々の能力を発揮し、活躍できる社会、そんな未来を見ることができました。
次回開催情報
■日程
2021年11月26日(金)16:00-21:00
■開催場所
なごのキャンパス
オンライン(ZOOM)
■概要
今回、11月26日(金)の当イベントでは、今年2月に愛知県とMoUを結び、スタートアップの相互協力・相互交流を推進することとなった、「Bpifrance」が登壇します。NAGOYA CONNÉCTにて、初めての連携事業となる交流セミナーを開催し、インダストリー4.0に焦点を当て、愛知県とフランスのエコシステムの紹介と日本とフランス計11社によるスタートアップのピッチを行います。
後半の19時半からのプログラムでは、「事業構想大学院大学」が登壇。事業構想大学院名古屋校とタイアップして、教授と修了生を交えたトークセッションや、修了生・現役生による「事業構想ピッチ」が開催されます。