中部圏のイノベーション拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」が名古屋・栄にオープン

投稿者: | 2019-09-18

一般社団法人中部圏イノベーション推進機構と名古屋市が運営する「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE(ナゴヤ イノベーターズ ガレージ)」が、7月8日に名古屋市栄ナディアパーク4Fにオープンしました。同日開催された開所式・内覧・起業家等交流会には、河村たかし名古屋市長をはじめ、イノベーション拠点の関係者と多くの報道陣が集まりました。

イノベーション拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」の詳しい情報はこちらをご覧ください。

本記事では、開所式の様子と、イノベーション拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」を利用している会員インタビューをご紹介します。

中部圏のイノベーション活性化の必要性

画像|中部経済連合会の豊田会長の挨拶

開所式の冒頭、中部経済連合会の豊田鐵郎会長が新拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」への期待をこめて以下のように述べました。

「この拠点で、中部圏におけるものづくりの基盤を活かしつつ、ものづくりの枠組みを超えた、全く新しい価値が生み出されることを期待する。当地域においても、大学や行政、企業によるスタートアップへの取り組みが活発化しており、それぞれを点の動きで終わらせず面の活動とするために、ここがハブ機能を担い中部圏のイノベーションの推進力を高めていきたい。

中部圏の持続的発展に向けて、こうした活動への一層のご支援とご協力を賜りたい。産業の枠組みを超えた既存の価値観にこだわらない発想が必要。中部圏のものづくりの基盤を生かしつつ、この基盤を超えた全く新しい価値が生まれることを期待する。」

画像|河村たかし名古屋市長の挨拶

「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」は、中部圏のイノベーションを触発し続ける交流・対流のプラットフォームとしての役割を期待されています。河村市長も、「産業界と行政が連携してイノベーション拠点を運営するのは全国でも珍しい。世界のトップランナーとして、名古屋からよりよいものを作っていってほしい」とコメントし、同拠点への期待をにじませていました。

左から、中部経済連合会 藤原理事、(株)ドラフト山下代表、(株)ビルダーズ安田代表、愛知県立芸術大学設楽教授

続いて、新拠点の設計・デザインに携わった、(株)ビルダーズ 代表取締役 安田耕司氏、(株)ドラフト代表取締役 山下泰樹氏、愛知県立芸術大学教授 設楽知昭氏、中経連常務理事事務局長 藤原啓税の4名によるトークセッションが開催されました。

新拠点の対象者は、起業や新規事業開発、社内で既存事業の画期的な改革を志す人たちです。設計・デザインでは、これから新拠点を利用する人たちから固定概念にとらわれないアイデアが育まれやすい環境づくりを目指したとのこと。中部経済連合会の藤原理事は、会員同士のネットワーキングを生み出すしかけとして、起業家や起業をめざす人の交流会や、大手企業や大学教員が最先端の研究を紹介するイベントなど、年300回のイベントを開催予定していると述べました。

通常利用には会員登録が必要となり、会員区分は個人会員と法人会員の2つ。グランドオープン時には、登録数が個人会員20名、法人会員20社となっており、運営の一般社団法人中部圏イノベーション推進機構は、年内に会員登録数100以上を目標としています。

画像|愛知県立芸術大学の学生の作品

新拠点が持続可能な開発の拠点に選ばれる“ワケ”

では、イノベーション拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。今回、法人会員である株式会社ジェイテクトのFFR部 第1研究室の松本崇室長と向出尚正氏に、Nagoya Startup News編集長の若目田がインタビューをしました。

画像|(左)FFR部 第1研究室 向出尚正氏、(右)FFR部 第1研究室 室長 松本崇氏

若目田:今回のイベント会場に、イノベーション拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」を選んだ理由について教えてください。

向出:私が所属しているFFR部は「Future&Frontier Research」、未来を開拓していく設立されて3年目の部隊です。変革期の時代に、会社の既存事業にとらわれないチャレンジを企画することが必要だという意見が出たのがはじまりです。FFR部では、オープンイノベーションを積極的に活用していきたいと考えており、ここ「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」がふさわしいのではないかと思っています。

画像|NSN編集長 若目田

若田目:今後、どのような新規事業を生み出していくのでしょうか。

向出:特定の分野というよりも、今まで繋がりがなかった企業とオープンイノベーションできたらと考えています。今回のイベントテーマにあげた「SDGs(※)」は、切り口がいくつもある分野だと考えています。

※SDGs(持続可能な開発目標)…2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。(引用|外務省HP「SDGsとは?」より)

松本:今、自動車業界は100年に1度の大変革時代と言われており、我々も非常に危機感を持っています。次の時代に向けて、どういった新事業を産み出していくのか、「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE 」のようなところを上手く活用して新しいことを産み出していかないとと感じています。ベンチャー企業をはじめとして、さまざまな企業が新しい取り組みをしているので、多様な人との繋がりを大事にしながら、パートナーを模索しています。

若田目:こういう企業とパートナーとして事業をしたいという具体的なイメージがありますか。

向出:IT革命の時代ですから、そういった企業とは積極的にタッグを組みたいですね。また,持続可能な社会構築に向けて県や市のインフラなどにも関われる機会があればと思っています。

若田目:今回、イベントテーマに取り上げた「SDGs」は企業としても意識していることなのでしょうか

松本:もちろん、「SDGs」については企業として強い意識を持っていますね。

向出:具体的にいうと、弊社では2つの危機を感じています。ひとつは企業存続の危機で、業界の垣根がなくなり既存事業だけでは社会の変革スピードに対応できなくなっています。

ふたつめは人類存続の危機です。貧困の拡大や環境破壊の進行、現在を生きる私たちと未来を生きる子供たちを守りたい。これらの危機を解決するためにどのように行動するのか、この難題を乗り越えるヒントが「SDGs」にあると考えています。

画像|8月26日に開催されたイベント「JTEKT DAY~みんなで取り組むSDGs~」より

若目田:企業はSDGsにどのように向き合うべきでしょうか。

向出:今回のイベントに参加されている方の中には、「ぶっちゃけ、SDGsってなに?」と思っている方がいるかもしれません。中部圏の一企業がSDGsに取り組むといったところで、「規模が大きすぎるのではないか?」「何からはじめたらいいのか?」と疑問を持つかもしれません。イベントではSDGsなど社会問題を取り組む株式会社笑下村塾のたかまつなな講師をお招きして、参加者の方と共にSDGsを学び、取り組みたいと思っています。

また今回のイベントを通して多種多様な企業が自由に交流できる「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」を“共創の場”として活用していきたいと考えています。

松本:「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」のようなイノベーション拠点は、東京や大阪のような大都市が中心なところがあります。名古屋市も潜在的にはいい人材がたくさんいて、ものづくり企業もいっぱいいらっしゃるので、そういった人たちと何か新しいことを作り上げていきたいですね。

編集部コメント

中部圏では、主力産業である自動車産業が100年に1度の構造変化の時代を迎えると言われており、全ての企業のイノベーション活動と産学官金の連携によるイノベーション推進活動を抜本的に強化する必要があります。名古屋市栄にオープンした新拠点NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」で大手企業やベンチャー企業、起業家などの、さまざまな交流・対流により、この中部圏に新しい流れが生まれるでしょう。