起業家と投資家を繋ぐ情報検索サービス「Startup List」ってなに?プロトスター栗島氏に聞いてみた

投稿者: | 2018-05-30

起業家・投資家を繋ぐための情報検索サービス「Startup List」。この「Startup List」によって、今まで人の紹介がないと繋がれなかったスタートアップ起業家と投資家が、互いに「比較・検討・連絡」を出来るようになりました。今回は、その「Startup List」のサービス内容について、運営をするプロトスター株式会社の代表取締役CCO栗島氏にお話を伺ってきました。

栗島 祐介氏|プロフィール

早稲田大学商学部卒業後、三菱UFJ投信に入社しトレーダー・ファンドマネジャーを経験。その後、アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う。株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、起業家支援インフラを創るプロトスター株式会社(旧スパノバ株式会社)を設立。数多の起業家やクリエイターコミュニティに強い関心を持ち、起業家輩出及び起業家育成エコシステム作りに邁進。産業構造・技術構造的にHardな領域を主軸に新産業創出を目指す起業家支援コミュニティ「StarBurst(旧Supernova)」の企画・運営総括を行う。その他複数社に社外取締役・アドバイザーとして関与。東京ファッションテクノロジーラボ理事やTMCNエヴェンジェリストも務める。

アート・ビジネス・テクノロジー幅広い領域で起業家支援をしてきた栗島氏

若目田:栗島さんは、幅広い分野で活躍されていると思うのですが、バックグラウンドについて教えていただけたらと思います。

栗島:もともとは教育系のVCの立ち上げや、アクセラレーターをしていました。起業家コミュニティも作っていて、そのコミュニティが国内で最速で、最大規模になったんです。そこで、これは事業としてちゃんとやろうということになりました。そこで、VCから事業をスピンアウト(MBO)して、株式を買い戻し、事業をしはじめたのが、このプロトスターという会社になります。

この会社は、まだ何者でもない段階のスタートアップ支援をメインで行っています。具体的には、起業家・投資家の発掘と育成や、実績作り、行政機関との間に入って繋いでいくといったようなことをしています。

若目田:ありがとうございます。起業家・投資家の為の情報検索サービス「Startup List」について詳しく伺ってもいいでしょうか?

起業家・投資家の為の情報検索サービス「Startup List」とは?

Startup List公式HPのスクリーンショット

栗島:はい。もともと起業家側からの投資家へのアプローチ手段として、6つの手段がありました。

  • 起業家からの紹介
  • 投資家からの紹介
  • 支援者からの紹介
  • イベントでの声掛け
  • SNS上での声掛け
  • お問い合わせへの連絡

けれど、この中で機能しているのは上から3つの「紹介」だけです。イベントやSNS、お問い合わせが成り立つのは、エンジェル期に支援するのが得意とする人だけです。

初めて起業した人には、投資家に対するネットワークが全然ないんです。あったとしても、村社会でなんとなく繋がっていると紹介できるとか。そんな状態を変えるため、起業家と投資家同士が「比較・検討・連絡」ができる「Startup List」という仕組みを作りました。

Startup List公式HPより引用

私達が始めた背景には、強力なコミュニティがすでにあって、実績も出ていたので、信用がされているというのがありました。アメリカだとYコンビネーター(カリフォルニア州マウンテンビューのベンチャーキャピタル)がある意味コネクターの役割を担っています。これを国内では私達がやるというポジションになっています。

2018年2月28日にサービスをローンチして、今で80日目ぐらいです。サインアップ数だと約1500社と、どんどん増えてきています。起業家側は投資家を探して連絡できるだけでなく、自分の会社に評価を与えてくださいという、「お墨付き」を依頼することもできます。

一方で投資家側も、起業家を検索・比較・連絡をすることができます。こうしたやり取り自体は、2か月で1000件ぐらい。ファイナンスは約20件ぐらい実現できているようです。4月末時点で、国内でメイン投資をしたい約40%の人が利用して、いろんなやり取りを行っています。

若目田:ありがとうございます。起業家側はどんな人達が登録しているのですか? 例えば、名古屋でも登録している企業はあるのでしょうか?

栗島:名古屋では、介護分野のプローバス株式会社が登録していています。投資家とすごく密に連絡を取り合っていますね。今ファイナンスを準備中という感じです。

若目田:そうなんですね。逆に投資家側でいうと、例えば、木村新司さん(個人投資家として、数十社のスタートアップ・ベンチャーに投資。2016年6月にAnyPay 株式会社設立)のようなエンジェルに投資している人も利用しているのですか?

栗島:エンジェルについてはあまり言えないこともあって。というもの、信用チェックの話があるので、個人名義でやってしまうと、少しセンシティブなところがあるんです。

若目田:では、会社単位なんですね。

栗島:そうですね。会社単位、かつ、担当者別が基本です。会社や事業会社としてなら良いという形にはしていますね。例えば、木村新司さんのファンドでいうと、DasCapitalの河野さんが登録していて、かなり人気があります。誰にお墨付きを与えているのか、過去の経歴なども見れるので、興味があればコンタクトを取れます。

若目田:サイト画面を見ていると、事業会社として登録しているところが結構ありますね。

栗島:最近だと、ヤマトホールディングス、クロネコヤマトの会社さんとか。こういった、デジタルイノベーション推進室を設置したり、新規事業投資をしたりしている企業も多いですね。

若目田:幅広くカバーしているんですね。

栗島:はい、実はファイナンスだけでなく、大手事業会社のアカウントがかなり掲載されていたりするので、営業にも使えます。

若目田:確かに。企業側から見ると、そういう使い方もできるんですね。これは、栗島さんがコミュニティを持っていて、そこの範囲内で使ってもらっているイメージがあるのですが、それ以外に対しては、どのようなマーケティングをされているのでしょうか?

栗島:そうですね。基本的にはリファラルです。起業家に貢献して、周りに必要な人がいたら、どんどん横展開をして拡げてもらっています。

あとは、投資家との連携パートナー制度のようなものを始めています。今は、約40社ぐらいですね。投資先の起業家には、事業連携したい・次の調達に動きたいというニーズが絶対にあります。投資家にとって起業家のバリューアップをしたいけど、実は投資家同士で繋がっていないことが結構あって、ネットワークが限られていたりします。。正直、弊社のシステムを使えば、今まで紹介出来ない先にも起業家がアクセスできるので、投資家からすると起業家のバリューアップにも活用できるんです。最近では連携して、勉強会もやったりしています。

あと、広告はゼロですね。最低限で、広告はしない主義です。

投資家との出会いは恋愛と同じ

Startup List公式HPより引用

若目田:地方に視点を置いたとき、地方の起業家がどう使ったら良いのか、提案があればお願いします。

栗島:基本的に、投資家との出会いは、恋愛とまったく同じです。そもそも、どんな投資家がいるか分からないので、このStartup Listを使って、良い投資家を見つけたらどんどん会ってみてください。だいたい感覚を掴んだら、一気に本命にアプローチするといいと思います。

例えば広島の水産系会社で、株式会社ポータブルというところがあります。ここはインキュベイトファンドなどからシード調達をして、最後には約1.2億円もの資金調達を実施しています。自分からアクティブに動いて、声を掛けないことには実現しないので、どんどん使って欲しいです。

若目田:そもそも名古屋という地元にいると、投資環境として、エンジェルにアクセスできない、紹介がないと絶対に会えないというのがあります。であれば、可視化されるプラットフォームを利用しようということで、「Startup List」が1番良いツールになるのかなと感じます。事業会社や投資家にとって、地方でも登録すれば、メリットはあるでしょうね。

栗島:ありがとうございます。地域でいうと顕在化していない起業家も多いはずです。そこにリーチするというのが、投資家としてのメリットが1つあります。

もう1つは、地域の金融機関やVCでは支援をしきれないシード期を補完できるメリットもあります。起業家が育つにはシードマネーが必要です。地銀系VC等からすると、資金提供が難しいシードをStartupListを使って他のVCと繋げ、裏側でメンタリングなどを定期的に行い、繋がりを作る。そうして、企業が大きくなったタイミング、シリーズAあたりで投資家として入ってもらうと、地方の起業家・投資家にとってお互いにwin-winになるのではと考えます。

若目田:CVCの投資家として1番最適というか。よくあるパターンですよね。

栗島:そうそう。まず、種を育てないといけないので、種が育つためには水がないといけない。地域だと水にアクセスできないのが一番課題なので、まずは水に触れさせるというために使っていただけたらと思います。

編集部コメント

「Startup List」によって、今まで可視化されていなかった、投資家と起業家のプラットフォームが誕生しました。この活用により、今まででは出会えなかった人と人が繋がれる可能性が高まります。この出会いによって成長し、加速する起業家も増えていくのではないでしょうか。また、栗島氏は起業家支援の1つとして、東京都中央区を起業家のための街にしようと奮闘されています。今後もどんなサービスが拡がるのか、期待が高まります。