【特集】名古屋市工業研究所×UNERI |2030年の社会で「当たり前なモノ」を作り上げる。1ヶ月集中型プログラムを開催。

投稿者: | 2021-06-15


8月20日~9月17日、名古屋市工業研究所の主催により、1ヶ月集中型プログラム「Tenkaichi」が開催されます。

それに先駆け、名古屋市工業研究所支援総括室の室長である山岡さん、同研究所主任研究員の野々部さんのお二方に、本イベントの開催に至った経緯や思い、また研究所に併設している「Nagoya Musubu Tech Lab」についてお話をお聞きしました。

名古屋市工業研究所

名古屋市内の中小企業を中心に生産技術の向上、研究開発などの支援をおこなう公設試験研究機関。各種の試験・分析はもちろん、受託研究や共同研究、技術者研修などを行っています。簡単な技術相談を無料で行っている他、出張技術指導も実施するなど、名古屋の中小企業を献身的にサポートする存在です。

昨年11月には、技術系スタートアップを支援する施設として「Nagoya Musubu Tech Lab」を開所。新しい技術や製品による事業を始めようと考えている組織を対象に、各種試験用装置の利用環境を提供、技術マッチングのイベントの開催や、新規事業開発のためのセミナーを開講するなどさまざまな支援を行なっています。

プロフィール

山岡 充昌(やまおか みちまさ)
名古屋市工業研究所 支援総括室 室長
Nagoya Musubu Tech Lab チーフマネージャー

野々部 恵美子(ののべ えみこ)
名古屋市工業研究所 支援総括室 主任研究員
Nagoya Musubu Tech Lab プロモーションリーダー

河合 将樹(かわい まさき)
株式会社UNERI 代表取締役
※Tenkaichi運営事務局

若目田 大貴(わかめだ まさき)
東海エイチアール株式会社 代表取締役
※Tenkaichi運営協力

名古屋市工業研究所の活動


ー名古屋市工業研究所とは、そもそもどのような活動をされているのでしょうか。

山岡:基本的には名古屋市内の中小企業の技術的な困り事を解決することによって、地域の産業を守っています。市内に留まらず、愛知県、三重県、岐阜県の中小企業も含めてサポートしながら、地域経済が上手く回り、地域産業が衰退しないようにサポートさせていただいています。

相談企業数だけでも年間2000社以上あって、例えば機械が故障した際の技術相談は年間でも2万2000~3000件ほどお受けしています。
あとは、企業との共同研究をおこない、新製品の開発であったり、新技術の開発のサポートをしています。また、人材育成ということで企業の若い方向けの技術研修などもさせていただいています。

昨年度はなかなかできませんでしたが、技術的な講演会を通じて、新しいものから古いものまで様々な技術に関する情報発信をしてきました。

ー多くの企業に多様な技術を取り入れてもらうことが狙いでしょうか?

山岡:そうですね。例えば、ここ数年前までの流行りはAIなどでしたので、それに関連する講演会が多く開催されました。はじめの頃は「AIって何?」という雰囲気でしたが、回が進むにつれて「実際何に使われるの?」「実際にどう使うの?」というところに着目した講演会に変わり、企業様もだんだん実践的なAIの講演会を好まれるようになりました。

このように、企業のニーズを確認しながら講演会の題目を決めています。年間で40回ほど開催していて、2000人ほどの参加者がいらっしゃいます。

Nagoya Musubu Tech Labとは


ー「Nagoya Musubu Tech Lab」を設立した経緯を教えてください。

山岡: 東海圏はやはりモノづくりが強いといわれているじゃないですか。名古屋市はスタートアップ関係では多種多様なことをやっていますが、モノづくり系のスタートアップがなかなかないことが話題に上がりました。

例えば東海圏以外の地域でも、福岡はスタートアップが活発なんですが、やはりモノづくり系のスタートアップはうまくいっていないという話を聞きました。それならば、名古屋でモノづくり系のスタートアップを支援できないかと考えたんです。
名古屋市工業研究所という工業的な技術を持っている研究機関が、なんらかの形でスタートアップを応援できる場所を作れないか、ということで「Nagoya Musubu Tech Lab」を作ることが決まりました。

愛知県内や名古屋市内にもいくつかインキュベーション施設がありますが、「Nagoya Musubu Tech Lab」は違う色合いを出して、スタートアップの支援ができないかというコンセプトで考えています。

ー名古屋市工業研究所は既に存在している中小企業様の支援を、「Nagoya Musubu Tech Lab」は新たに立ち上げる会社の支援をするというイメージでしょうか?

山岡:そうですね、名古屋市工業研究所は既存の企業様の技術的な問題解決を優先している側面が強いので、「Nagoya Musubu Tech Lab」は企業でも個人でも、新規事業に取り組む方たちの未来を作る場所かなと思っています。

もともと「Nagoya Musubu Tech Lab」は、色々なチャレンジができる場所として立ち上がりました。というのも、名古屋市工業研究所だけでは拾いきれないものがあるんです。例えば企業同士の技術マッチングというのはなかなか実現しませんでした。

「Nagoya Musubu Tech Lab」を通して、これまで当研究所でできなかったマッチングはもちろん、新しいことに取り組む人が必要としているような様々な支援に取り組んでいきたいと考えています。

1ヶ月集中型プログラム「Tenkaichi」

ー「Tenkaichi」をやろうと思ったきっかけは何だったんでしょうか。

山岡:名古屋市工業研究所には、多くの企業関係者様が相談のために訪問されます。通りがかりに弊所に併設されている「Nagoya Musubu Tech Lab」を見かけて、たくさんの人がやってくるというシナリオを当初は考えてはいました。

しかし、昨年1,2月にはコロナ禍もあって来所される方が少なくなってしまい、こうしたシナリオは実現できませんでした。
たくさんの人に来ていただくためには、何か違うことをやっていかないといけないだろうと思い、人の集め方を考えていました。

その中で、この「Nagoya Musubu Tech Lab」でイベントを開けば、人が集まると考えました。この話を河合さんにして、今回開催するイベントの原案が生まれ、「Tenkaichi」ができたんです。

「Nagoya Musubu Tech Lab」に人が集まるだけではなく、いい商品や面白いアイデアが生まれたら、モノづくりのスタートアップのためにもなると思いました。ちょっと尖ったものができれば「Nagoya Musubu Tech Lab」宣伝効果も期待できます。(笑)

ー実際にどのようなイベントになるのでしょうか?

山岡:企業様が本来持っている面白い技術とか眠っている技術をお題にして、実際にお題を出した企業様とモノを作って、そういった製品を世に出していけたら面白いんじゃないかというコンセプトです。なので、とにかく固まったアイデアではなく、面白いアイデアを出せる人たちに来てもらいたいですね。

新しいことをやってみたいと思っている、学生や企業の方たちに一緒に考えてもらいたいと思っています。
以前、セントレアの「FLIGHT OF DREAMS」という施設の紙飛行機を作るコーナーに行来ました。子供向けのコーナーかな、と思っていたら、結構大人の私でも楽しめたんです。

その時に「人ってものをつくるのが好きなんだよな」と実感しました。企業にいても何かを作ってみたいと思っている人はいっぱいいるんじゃないかな、と思ったんです。そんなことを実現出来たらいいなというのが「Nagoya Musubu Tech Lab」のコンセプトの一つにあります。「Tenkaichi」が、そんな機会の一つになったら嬉しいです。

河合:高専生などにも参加してもらいたいと思っています。
高専出身で現在技術系の大学に所属している学生の方と、実際にお話をする機会がありました。高専出身だからこそ、実際に手を動かしたりアウトプットしたりする場をすごく求めているということを知りました。

実際に、会社の中で出てきている課題などを高専生の方に期間限定で、ここの施設のものを使ってアウトプットを出してもらえれば、彼らにとっても実践の場になると考えています。

若目田:すごく面白い取り組みですよね。通常のアイデアソンと比べて、製品開発に応用できる技術がいっぱいあって、その技術を使ってアイデアを出すというのが新しいなと思います。

難しい技術になると汎用性のあるビジネスアイデアしか生まれなかったりするというのは、取材や仕事をしていると感じています。その考え方を変えて、若くて且つ技術も分かっている人に考えてもらうというところが私の中ですごく興味を引いた部分です。

ーそれだけ東海エリアのモノづくりに対して何かしたいという想いがあるんですね。

山岡:これまでいくつかのアイデアソンやハッカソンを見に行ったことがありました。はじめは面白いんです。初回と2回目とか、グループの話を聞いているとすごく面白い。でも、いつも実用化を目指す時に、最後はアプリに落ち着いてしまったりするということがあります。

アプリになったら課金の可能性があるので実用化しやすいんだろうけど、何か違うなって思うんです。もしかしたら初めのアイデアをもとに、装置を作って仕組みにしようというアイデアの方が面白くて、化ける可能性もあるんです。

若目田:それ、すごく共感できます。せっかく優秀な人を集めてハッカソンをしても、最終的に見たことのあるアプリやサービスに落とし込まれてしまう傾向ってありますよね。

山岡: そうなんですよ、だからそうじゃない事が出来ないかなと思っていたんです。
アプリが悪い側面ばかりがあるわけじゃないんです、ただ全部がアプリに帰結してしまうのは良くないんじゃないでしょうか。

いろんな人がモノづくりが面白いと思っているし、色んなアイデアを持っていると思います。それを他の人と話すことによってよりよく昇華していったら、その時は何も生まれなかったとしても、その経験が絶対に生きると思うんです。

ー 最後に、「Tenkaichi」に参加される学生や社会人の方たちにメッセージをお願いします。

山岡:もし自分が何ができるか分からないからといって参加をためらっているのなら、まずは参加してもらいたいと思っています。面白いことを一緒にやろうという気持ちで出てもらえたら良いですね。

何か結果を出さないといけないんじゃないかと全然気負わなくていいので、遊びに来るくらいの感覚で面白いことを共有して、その中で自分も成長してみたいという思いがあるのなら、ぜひ来てもらいたいです。

世の中は、昔と比べたらいろいろチャンスがあるようになってきたと思います。なのでチャンスを掴んでもらいたいし、これからの時代って既存の価値観とは違う価値観で動くんだろうと思ってます。だからこそ、新しい事にチャレンジする気持ちは絶対に持ってもらいたいなと思います。

野々部:自分の息子くらいの世代の人たちが参加してくださると思うんですが、そういう方たちが楽しんでやってくれたら嬉しいなと思っています。

山岡:今の若い人たちってやってみたいことを逆に出来ていないのかなと思っていて、昔私たちが学生の頃は結構バカをやっても許されたんです。実験室でちょっと危険なことをしても馬鹿だなで終わっていた時代。でも今は下手すると新聞ネタになってしまいますよね。

そういう意味では窮屈な世界になっている面もあると思います。なので、とりあえずやってみてくださいというのが希望です。何も結果が出なくて謝るのは私なので、楽しんでもらえたらいいなと思います。

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編集部コメント

古くからモノづくり企業が多いことで知られる東海地域の技術者と柔軟な発想や知識を持つ若者が、ここでしかできない出会いをし、これまでにないアイデアが生まれる。そんな期待が感じられるイベントになると取材をして感じました。「とりあえずやってみて欲しい。」というチャレンジを応援してくださる人がいることは、挑戦する人たちにとって何よりも励みになると思います。次のモノづくりの時代を作るのは「Nagoya Musubu Tech Lab」かもしれません。