完全自動運転の実現に向けて、これから私たちの暮らしはどう変わるのか ー ティアフォー創業者加藤氏の挑戦

投稿者: | 2017-11-20
Pocket

中部地区の地域経済・社会の発展に先進的な役割を果たすことを目的として活動している中部ニュービジネス協議会(CNB)。そのCNBが11月1日に開催した「ニュービジネスフェア2017」にて、名古屋大学発自動運転ベンチャーTier IV(ティアフォー)の創業者である加藤氏による特別公演が行われました。今回はNagoya Startup News編集部が「完全自動運転 コンピュータはヒトを超えるのか?その時未来社会は?」をテーマに登壇した加藤氏を取材し、その公演の様子をお伝えしていきたいと思います。

加藤 真平 氏|プロフィール

1982年生まれ、神奈川県出身。株式会社ティアフォー取締役。2008年に慶應義塾大学大学院理工学研究科で博士(工学)を取得。その後、東京大学、力ーネギーメロン大学、カリフォル二ア大学を経て、2012年より名古屋大学に勤務。現在は、名古屋大字未来社会創造機構客員准教授。2016年4月から東京大学大学院情報理工学系研究科准教授。オペレーションシステムや目動運転システムを研究・開発している。

株式会社ティアフォーについて

画像:ティアフォー公式HPより引用


自動運転システムや高精度3次元地図の製品サービス開発、人材育成を手掛ける名古屋大学発ベンチャー企業。オープンソースソフトウェアとして世界公開し、多数のメーカーや大学等研究機関などに自動運転技術の開発プラットフォームを提供している。

日本の自動運転はGoogleの投稿から始まった

加藤氏:こんにちは、東京大学の加藤と申します。本日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

2年前から名古屋大学でも准教授をしているのですが、主に東京大学で准教授をしております。今日は、完全自動運転についてのお話と、私が2年前に立ち上げた大学発のスタートアップ企業である「株式会社ティアフォー」についても併せてお話させていただきます。

タイトルは「完全自動運転」ということですが、世の中の人たちが自動運転を意識し始めたのは、Googleが実際に公道を走らせたことがきっかけだと思います。スタンフォード大学やカーネギーメロン大学といったトップ大学の技術を、Googleが吸収した形で自動運転が行われました。

Google広報用のブログがあり、ある日突然、「Googleは14万マイル公道を走りました」と公表されました。これが投稿されたのは2010年で、具体的な数字が出ていて多くの人が驚きました。投稿した人は誰かというと、Sebastian Thrun(セバスチャン・スラン)という業界では有名なコンピュータビジョンの研究者です。元々はスタンフォード大学の教授で、当時はGoogleの副社長を務めていました。

セバスチャン・スランがGoogleを辞めたあと、縁があってティアフォーと協業することになりました。彼はUdacityというスタートアップを設立していて、その企業が日本の大学発スタートアップである我々の技術を使う形です。これは私の知っている限り多いケースではありません。

私がこれからしていきたいのは、国境を超えた協業をしたり、日本発の技術が取り入れられるようにしていくことです。実際に、シリコンバレーのエル カミノ リアル(El Camino Real)という場所に頻繁に足を運んでいるのですが、海外で事業をやっていくのは体力的に大変です。しかし、海外に向けて動く楽しさも感じています。

今日は、自動運転が日本でどうやってできたのか、どうやったら自動運転が実現できるかをわかりやすくお伝えできればと思います。

世間の意識が自動運転実現に近づいてきた

まず自動運転の研究を始めるために、コンピューターから車が操作できるようにします。トヨタ・プリウスを改造して、ハンドルやアクセル、ブレーキは使わずに、リモコン操作で車を動かせるようにしました。次に自動運転に必要なセンサーを車の上に取り付けました。これは「ライダー」と呼ばれる回転するセンサーで、周囲の状況を把握するために用いられます。

産業技術総合研究所と長崎大学と共同で、遅い速度で決められたコースを走り、人が飛び出して来たら停止する実験を行いました。この時の技術は、ロボットの技術をそのまま応用しています。日本はロボットの技術の精度が高く、姿が車というだけで、自動ロボットの技術をそのまま車に提供しています。

こうした実験をメディアが取り上げるようになり、チームの活動が注目されるようになりました。世の中の人に、「もしかしたら実現できるかもしれない」と思ってもらうためにも、我々がショーケースを見せることが一番です。かつては自動運転はできないと言われていましたが、徐々にできるかもしれないという意見も増えて来ました。

世間に自動運転が認知されてから、研究の予算が増えて、学生の興味も集まったことで人数が増えてきました。遅い速度の自動運転の車をベースにして、人数が集まったことで研究が進められると思っていた矢先、良い人材を引き抜かれることもありました。頭角を現せば、必ず寄ってくる人たちがいます。

(会場笑)

しかし、転機が訪れました。安倍首相が、トヨタ・日産・ホンダの自動運転車を試乗したのです。規制を設けた自動運転でしたが、国の首相が試乗したことによって、日本の世の中の流れが次の日から変わりました。自動運転に対してネガティブに考えていた方も、「やりましょう」と肯定的になったのです。

3次元地図の技術を持つ企業との出会い

私のほうも波が乗ってきました。小さいチームでどうやったらGoogleに追いつくのかを考えていた時に、愛知県にあるアイサンテクノロジーとの出会いがありました。今でも一緒に自動運転の研究をしています。もともとは測量会社ですが、今は愛知県で自動運転といえばこの会社です。

名古屋大学での技術を超えている、いや、もしかしたらGoogleも超えているかもしれません。専用の大型車を走らせると街中をスキャンできる技術がありました。私が5年間プロジェクトをやっていて、一番驚いた技術です。何かを仕掛ける時に、どこにも負けない強みがあると多くのことを乗り切れます。


動画:アイサンテクノロジーの技術|YouTube

仕組みとしては、街中をスキャンして無数の点を集めることで、コンピューターグラフィックスのようなデータを作ることができます。人の目で見ても、どこに車線やビルがあるのかわかる3次元の地図が出来上がります。この技術は本当にすごいなと思っていて、4年間ずっとアイサンテクノロジーと共に事業を進めています。

最近は、私のスタートアップが海外に展開したこともあり、アイサンテクノロジーも海外での活動を始めました。カリフォルニアで車を走らせてスキャンし、3次元の地図を撮り始めています。

日本でも公道で自動運転が成功

2015年になると、国が自動運転の後押しをしたり、カーメーカーが徐々に参入し始めてきました。その頃に私は、名古屋大学のプロジェクトとして自動運転の研究をしていました。2015年6月名古屋大学内に、NICという世界最高峰の産学連携イノベーション拠点が設立されました。ガレージがあって、車を何台も置くことができ、ここまで良い環境で自動運転を研究しているチームは少なくても日本の大学レベルでは無いです。

実験を進めていく上で、運転席に人が座っている状態で、アクセルやブレーキ、ハンドルも使わずに時速40〜50km出せるようになりました。人を乗せていなければ時速60kmだせるところまで技術的には進歩しました。なので、人が運転して走っている車を、自動運転の車が追い越すところまでは技術として到達しています。

我々はここで、Googleがやっているようなカメラをつけて実際に公道を走る実験が愛知県でもでできるんですよと、2015年6月に初めてデモをに公開しました。大村秀章愛知県知事も訪れ、実験車に試乗しています。

この時求められたのが、実験を15分で成功させることでした。愛知県知事が15分しか時間がないということだったので…。

(会場笑)

正直、その時の状況次第ということもあって不安でした。信号とか前の車の影響や渋滞もあるし、たまたま自転車が横切るなども考えられるからです。そういうこともありデモは非常に難しいのですが、様々な条件が整って無事成功しました。

そして、チームにも人が増え、実際に手を動かす人たちが25人になりました。「自動運転が面白そうだからやってみたい」という学生も出て来ました。

オープンソース戦略から、学生に会社を任せる

技術的に自動運転が可能となったところで、どうやって戦略的にGoogleや世界を相手にしていくか考えていかなければなりません。そこで導きだしたのが、オープンソース戦略です。我々はもうすでに遅れをとっています。Googleなど大手企業がやってる領域に後から流れ込んでいるので、普通の戦略を取っていれば勝てません。

テクノロジー系のスタートアップをやっていて、Googleに勝とうと考えてる日本人は非常に少ないです。私はやり方次第で勝てると思っています。それがオープンソース戦略にあります。

これはGoogleが教えてくれたやり方ですね。公開して誰でも使っていいようにすることです。我々は、自動運転のソフトを完成させるまでに3年ほど費やしました。それをすべて公開し、ウェブサイトからダウンロードして、いろんな車に勝手に使ってもいいよ、ということにしました。

これはなかなか理解されないビジネスモデルで、時間をかけて作ってきたものをなぜ無償で公開するのでしょうかと言われます。当時、日本各地の大学でもベンチャーを進めていて、自動運転もポテンシャルが高かったので、文科省のプロジェクトで来られた方々にも「なぜ」と問われました。

ここで株式会社ティアフォーという、先ほどの3次元の地図などを組み込んだり、流行りのAIなどをソフトにひとまとめにして、ほぼ無料で提供するというベンチャーを設立しました。基本的な自動運転の技術や機能は提供します。カーメーカーのように高速道路で走らせることはせずに、街中の限定したエリアを時速20〜30kmくらいで走れる技術を提供しています。

1社だけだと人が集まらないので、教え子のほぼ全員に「ベンチャーやろう!」と会社を任せました。設立1年で9社の子会社ができました。私の会社が学生の会社に出資をして、学生が自分でベンチャーを起業するという形にしました。それぞれの子会社で担当分野があって、2年で総勢60〜70人に増えました。学生ではありますが、産業界で活躍したい人が集まったので、良い戦略だったなと思っています。

これからはシェアリングの時代になる

時代は変化していて、情報でお金を得るのは古いと思っています。今から何かする時に情報技術をしていては時代遅れになります。

最近だと、UberやAirbnbなど俗に言うシェアリングサービスは非常に価値が高くなっていくと思います。シェアリングサービスは価値が分かりやすく、サービスを提供する側もコストを落とすことができ、サービスを利用する側も安く済ませることもできます。

それを自動運転に置き換えてみると、カーメーカーは高速道路で走ることを視野に入れています。しかし、今から伸びてくるのは、車を所有せずにシェアリングするMaaS(Mobility as a Service)で、高速道路は一切出ないタウンユースの領域だと思います。我々はそこを狙っていて、高速道路を走ることは考えていません。こういう位置付けで、オープン的な戦略としてこれからビジネスをしていきたいと考えています。

ユーザーをとりにいく自動運転の展開

車は毎年1億台生産されています。一番大きいカーメーカーだと10%のシェアを持っているので、毎年1千万台近く生産しています。一方、バスやタクシーなどを利用する人は1千億人いると言われているので、1人が365日使うと365人とカウントされます。この数字をどう捉えていくかです。生産台数1億台という数字は減らないかもしれないけど、私は自動運転で増えるとは思っていません。ユーザーは1千億人しかいませんが、これから自動運転が発展していくと、ユーザーは増えていくかもしれません。

ある有名なコンサルティング会社の調査資料に、「今後10年でこの数字がどう変わるのか?」という資料がありました。今、1億台生産されている車は10年経つと10分の1になっているかもしれない。つまり、人が車を買わなくなるかもしれないがその一方、これからバスやタクシーなどを利用している1千億人のモビリティユーザーは、車を買わなくなってくるので、増えていくかもしれない。自分で車を持っていないので、利用するしかない、と言っています。

ちなみに、自動車関係の会社には違う数字を見せていたので、さすがコンサルティング会社だな思いましたが。

(会場笑)

ただ、言ってることは理にかなっています。これから車が減っていき、全部で1千万台しかない中の10%である100万台がとれたら、車1台の売上を考えてもそこそこの市場になります。さらにその中の100万台がタクシー系の車両だとして、その中の10%である10万台のシェアが獲れても数千億円の売り上げがあるでしょう。

しかし、3千億人というユーザーに対して「初乗り100円」というサービスをするとどうでしょう。シェア10%とれたら、その人たちから100円もらうだけで3兆円になります。今後5年、10年でユーザーの取り合いになると思います。製造業というのは、必ずなくならないですし、競争が激しくなることは間違いありません。なので、我々のような新興勢力は台数ではなく、ユーザー数を獲りにいくのです。

そのために課題は多くあります。例えばこれから電気自動車(EV)になり、自動運転やVRなど電気の消耗があるし、30分〜1時間しか走れない車では実用的ではありません。技術はこれから5年、10年で変わる必要がありますが、技術的な課題をすべて達成できても100%安全な車はできないわけです。

必ず機械は間違えます。よく聞かれる質問で、「どうやって事故が起きないと保証をするんですか?」と言われますが、そんなことできません。免許と同じで、自動運転に対しても免許制度を作り、事故を起こした時は仕方ないと容認する必要はあります。ただし、今の自動車保険と同じように、自動運転にも自動車保険のようなものを用意する必要があるでしょう。

技術のオープンソース化で道を切り開く

東京モーターショーでは、カーメーカーや関連会社が自動運転や電気自動車、シェアリングサービスを考え始めているのがわかります。一般的な乗用車も展示されていますが、自分が所有する車ではなくて、MaaSとしてタクシーのようなことを実際に自動車関係の企業も始めています。IT業界だけが自動運転や電気自動車、乗り合いを意識しているわけではなく、自動車業界全体もそういうことを考え始めています。

市場が自動運転や電気自動車、シェアリングを意識しだして、我々はどういうことを考えているのかお話しましょう。

まず自動運転システムのオープンソースである「Autoware」というソフトウェアがあるので、これを拡散していきたいと思っております。なぜかというと、ユーザー獲得がゴールとなので、売るということは考えておらず、ほとんど無償で提供していいだろうと考えているからです。

今、一緒に仕事をしているNVIDIAという、元々グラフィックスのプロセッサーを開発して製品サービスしていた会社があります。グラフィックスは処理精度が要求されるものです。3次元化する処理と自動運転のAIとか画像処理とセンサー処理が似ている部分があり、この技術が役に立つようになってきています。国内にもこのような会社はありますが、新しいタイプのプロセッサーやハードウェアとして、いま勢いに乗っている会社だと思います。

次にソフトウェアとハードを一体として、パッケージ化していきたいと考えています。まだ自動運転は普及していない時代なので、今の段階では車と併せて売り物にします。その車というのが、「AutonomouStuff (AS)」という企業の車です。Googleは例外として、大手企業や最近自動運転のデモをしている企業はこの会社から車を買っています。今、カリフォルニアだとDMV(Department of Motor Vehicles)に登録しないと自動運転の公道実験ができません。そこにおよそ150社の会社が登録されているのですが、その半分以上が、AutonomouStuff(AS)の車を使っています。

自動運転の車とNVIDIAのチップを使って、これから自動運転をしようとしているベンチャー企業が150社ほどあります。他の企業はこのNVIDIAのユーザーですが、我々が他社と違うところは、NVIDIAのソフトを入れて我々と一緒に提供する側になるということです。ここに違いがあって、我々のソフトを起動すると、納品した初日から自動運転の車をすぐに走らせることができます。

3次元の地図が組み込まれているので、自分の走っている位置や信号を判別することができ、ナビで決められた経路に沿って走ることができます。走行中にある障害物を避けるくらいはできるようになっています。ただ、分かっているものは避けられますが、急に現れるものへの対処はまだ難しいので、技術の改善は必要になります。

ソフト提供で見えた過疎地での運行サービス


我々のソフトを使用することによって、数年のコストをかけずに自動運転の実験ができます。例えば、3次元地図のアイサンテクノロジーも我々のソフトを使って、実際に公道を走る実験をしています。我々ほどソフトウェアを熟知していませんが、自動運転の操作ができています。今まで自動運転をしていなかった会社でも、ソフトの使い方さえ知っていれば、ドライバーを育成して自動運転は受け入られ、分野外の企業が走行することも十分に可能です。

ソフト開発をして使い方を熟知している我々が自ら行うと、交通量のある市街地で、道幅が狭いような環境でもできます。対向車にトレーラーがきて、と50cm〜30cmくらい接近するようなところでも、我々のソフトを使ってもらえれば事故なく走行できます。


動画:中山間地域に向けた完全自動運転の実証実験を行った際の様子|YouTube

ここからは、どのような機能を追加して実用化するかです。例えば、個人の所有車向けであれば時速60〜80kmに対応できるようにしないといけないし、限定エリアでバスやタクシー向けであれば、速度はもう少し落としていいのかもしれないけど、その代わり何人乗ってもスムーズに走れるようにしていかないといけません。

我々はこれから、市街地のタクシーとは少し違い、過疎地での無人の運行サービスをしていきたいと考えております。都心部だったり、公共交通機関が充実してるところはバスやタクシーが充実してるので、自動運転はなくても大丈夫だと思います。

しかし、愛知県でも郊外までいくと一気にタクシーの台数は減りますし、離島にまでいくとタクシーは1〜2台しか走っていません。バスも廃線になっています。東南アジアまでいくと、車が多いところと何もないところが二極化しているので、無人で人件費がかからない無人の運行サービスを展開していきたいです。

技術の次は法律を考えていく

自動運転は技術的にはできるようになってきました。AIだと人間に勝てない部分がありますが、3次元やセンサーなど部分的には人間の能力を超え始めています。自動運転に向けて次に行うことが法律です。

自動運転の車は、運転席に人がいません。事故が起きた時に誰が責任を負うかが問題です。今、日本が自動運転に向けて進めているのが、そのサービス事業者の会社が道路交通法の責任を負うことです。つまり、無人の自動運転を監視しているリモートに免許を持った人がいて、彼が何かあった時には運転します。リモートで動かすので、運転席に運転手がいなくても、リモートをする会社が事故が起きた時に責任をとりましょうという形です。

車の中にいないといけないルールは緩和しましょう、ということです。道路交通法の70条に「安全に運転できること」と書いているのですが、運転手が車の中にいることとは明記されていません。技術だけでなく、法律や倫理的に大丈夫か、保険はどうやって整備していくかなど、技術とセットで考えていかないといけません。

画面を見ながらリモートで運転する実験を行いました。リモート運転するには、データを通信するので、タイムラグが全部で0.5秒ほどあることがわかりました。

こうしたことも踏まえながら、リモート運転する人は訓練していく必要があります。私はリモート運転の経験がありませんが、最初は少し難しくても訓練すれば運転できるようになります。慣れてくると時速15kmでリモート運転でき、何かあった時にリモートで自動運転の車を動かすという対処が可能になります。これは時速15kmほどの速さで十分だと考えています。

過疎地にゴルフカーを走らせる


さぁ、技術も法律もクリアできそうだと分かって来ました。問題は、ここからどうやって、ビジネスとしてやっていくかです。他社もそれぞれ考えて動いています。

我々は新しく事業として、街づくりのひとつのアイテムとして、ヤマハのゴルフカーと一緒に我々は自動運転開発をやっています。基本的に使う技術は変わらないんですよ。時速が20kmしか出ない点が違うだけで、そのまま同じ技術でゴルフカーも自動運転ができるようになります。私は時速20kmが実用化に一番近いと思っています。街中で時速20kmのゴルフカーが走っていることが受け入れられたら、そこで大きな市場が立ち上がると思っていて、実際に現地へ行って体験してきました。

ゴルフカーを街中で走っていても、誰も批判を言わないんです。なぜかと尋ねてみたら、最初は多少批判があったものの、実証実験2年経ったら街に馴染んでいるとのことでした。それが社会受容性です。明日から自動運転を急に始めることはできませんが、2年間は社会受容性のためにやる必要があると思っています。我々も今から2020年という軸に向けて、愛知県の過疎地で自動運転の車を走らせています。

自動運転における3次元地図の利点

3次元地図はさまざまな使い方があり、ひとつは3次元地図を撮っている地域で、どこを自分が走っているのか正確にわかります。なぜ正確にわかるかというと、センサーがスキャンで取り込んでいくからです。カメラの場合だと、光を向けて色を記録していくものなんですが、3Dライダーというセンサーは自分から光を打って、跳ね返ってきたものを計測します。なので、周りに何があるのか分かるんです。

3次元地図の優れているところは、GPSの情報がすでに入っているところです。そもそも3次元地図を作る時に、GPSの計測でデータが入っているので、3次元地図上で自分がどこにいるのかが分かれば、地球上で自分が今どこにいるのかセンチメートルの精度でわかります。もしトレーラーと30cm近づいたとしても、我々が実証実験していた限りでは大丈夫だと考えています。測定にも誤差があって、2cmで精度がよく出ている時もあれば、悪い時は5、6cmずれていることもあります。ずれたのが5cmだとすると、左右5cmずれることを考えて合計10cmくらいになります。

もうひとつ、ライダーが優れている点は、スキャンを保存できることです。自分の位置が分かっていれば、スキャンを保存して、走っている前方が分かっていなくても、徐々に浮かび上がらせることができます。地図と位置というのは、表裏一体になっているので、位置を推定しながら地図を作り、作った地図で自分の位置を判断することができます。

この話をすると、一見すごい精度じゃないかと思うと思います。しかし、瞬間はセンチメートルの精度が出ているのですが、例えば1cmのずれが1mおきにできたら、ズレが大きくなってしまいます。我々のソフトだけでは難しいので、アイサンテクノロジーの技術を使って、ズレを後処理で解析して、綺麗な3次元地図を作ります。これで広域な地図を作ったとしても、後で補正をかけていて、どんなに大きな地図を作ってもズレを抑えることができます。

ライダーだけでも周辺を判別できますが、何が周りにあるのかは分かり辛いです。歩行者に対しては距離をとり、相手が車だったらもう少し距離を詰めるなどと暗黙のルールがあるので、やはりカメラを使う必要があるわけです。カメラの技術はこの数年で大きく変わりました。ディープラーニングという技術が出てきて、Googleは車や人など10万種類のものを認識できると論文に書いています。

基本的に私はカメラとライダーと両方を使っていきたいと思っています。やはり、カメラの方が正確に判別できますし、カメラの画像認識機能で車だと教えてくれて、そこに何があるのかをスキャンをすると、スキャン上に赤い点でカメラが教えてくれます。これをセンサフュージョンいいます。フュージョンとは、融合するという意味。カメラは解像度が高いという利点があり、ライダーは距離計測ができるという利点があり、両方の利点を組み合わせてより正確で鮮明な認識ができます。

信号認識の3次元地図を持っているので、自分からの距離やどの角度と方向で信号機があるか分かります。信号機については、コンピュータで100m前から信号の色を理解することができます。信号機の位置がわかり、色さえ分かれば3次元地図の実用性はグッと上がります。信号機が認識でき、人や車や自分の位置がわかっていれば、経路に沿って止まったり動いたりすることができます。

避ける技術とAIの出現

我々が難しさを感じるのが、障害物や止まっている車を「避ける」という技術です。避けるというのもいくつか方法があって、その場で経路を探し、ぶつからない経路を探すというアプローチや、元から経路を作っておく方法があります。


動画:Autoware on Board: Enabling Autonomous Vehicles with Embedded Systems|YouTube

いくつか経路を作っておいて、何かあったら最良な1つを瞬時に選択するようにします。すると、すべての処理があらかじめ想定しているタイミングで処理されていないといけません。センサーのデータというのは100ミリ秒に1回データが届きます。つまり100ミリ秒以内に前の処理が終わっていないと、次のデータが来ても処理が間に合わなくなります。

AIの出現で、人間らしいブレーキをかける判断ができるようになりました。あらかじめ設定していなくても、画像とスキャンデータを見せてAIが判断してくれます。全く同じところを教習場の教官に走ってもらうと、同じデータを得られることができます。我々が3〜4週間で学習させただけなので、もっとちゃんと学習させると、人間らしい自動運転ができるようになるかもしれません。

これらの技術すべてがオープンソースで、無償で公開しています。AIを含めても、そこに一切商業価値はないと考えています。結局、誰が作ってもAIは同じものができるので、ベンチャー的に考えると、自動運転ができたら、どういうビジネスモデルを作るかというのが大事だと思います。

初乗り100円で見えてくるビジネス

私は3千億人のポテンシャルあるユーザーに、初乗り100円でビジネスを展開していくのもアリだと思っています。参入しやすいために自動運転できる人みんなが同じように初乗り100円のサービスを始めてしまえば、そこで競争が起きてしまいます。ベンチャー的に考えると、無償で車に乗れるようにして、車の中にゲームやお菓子やジュースにお金をとる形が考えられますが、そこでまた参入する企業が出てきます。

しかし、そこにVRというテクノロジーが出てくると、参入企業がずいぶん減ってきます。自動運転に乗った時に、目的地まで車が勝手に運んでくれるので、そもそも将来は車に窓もないかもしれません。普通の景色を見る必要がないので、車からの景色をゲームにできます。しかし、自分の動きとVRでの動きが連動しないと酔ってしまいます。車が走っている時は、自分も走っている感覚にならないといけないですし、車が止まった時は自分もバーチャルの世界で止まっている感覚にならないと三半規管がずれて酔ってしまいます。

例えば、赤信号の時には車は止まります。バーチャルの世界でも、止まるようにしていないといけません。青信号になると自動運転の車は走り出してしまうので、バーチャルの世界でも、何か走り出すという感覚を提供してあげないといけません。細かく連動させないといけませんが、世界観は道や動きが一致していればなんでもいいんです。

例えばドラゴンクエストだったり、ターゲット層に応じて色んなコンテンツを作れます。お互いがバーチャルの世界で対向車も見えているので、バーチャルの世界で打つなどすることができ、打つことでポイントを得ることができるかもしれません。

ユーザーが世界中で何億人も増えると、月額100円でお得だという雰囲気になると我々がしたいことに近づいていきます。ポテンシャルユーザーが3千億人もいるのでビジネスとしては面白いところじゃないかなと思います。

今日はここまでで。ありがとうございました。

(会場拍手)