日本で唯一のAI技術で、日本人の心をより豊かに|テクムズ代表 鈴木氏にインタビュー

投稿者: | 2019-04-12


画像認識AIプラットフォーム「DEEPS」の開発をもとに、さまざまなサービスを展開する株式会社テクムズ(本部:名古屋市中村区、代表取締役:鈴木 孝昌)。目視検査が難しいとされる黒色ゴムの品質検査AIを、日本で初めて開発しました。品質検査AIの開発背景、テクムズがこれから目指すものについて、鈴木氏に伺いました。

鈴木 孝昌|プロフィール
1974年生まれ、愛知県豊橋市出身。米国オハイオ州立大学航空経営学部を卒業後、外資系メーカーの日本支社立ち上げやSIerでの新規事業企画、エンドユーザーシステム部門の統括など、日本のみならず欧米や東南アジアなど世界各国でビジネス経験を積む。その後、日本のすばらしさを世界に伝えたいという想いから株式会社テクムズを起業。「未来の一歩先を”見せる”」という理念のもと、日本品質の「心地よさ」や「思いやり」をのせたAIサービスをグローバル展開中。

品質検査AIの開発のきっかけは、農業の無人化・省人化を目指したこと


若目田:テクムズがAI開発を始めた経緯を教えてください。

鈴木:私の実家がマスクメロン農家という背景もあり、農業のIoT化を目指したのがきっかけです。農業は手間がかかり人手もいるため、無人化・省人化したかったんです。

当時はビニールハウス内の温度や湿度、日照時間などを測定していたのですが、それだけでは意味がないと気づきました。「温度や湿度がこう変化すると、人はこう行動する」のように、測定したものに人の行動を結びつけられて初めてデータは意味を持ちます。意味あるデータを取りたいと思ってから、映像や画像認識AIの開発を始めました。

若目田:今は製造業向けのお取引が多いですよね。農業から製造業にどう移り変わったのですか?

鈴木:きっかけは、大手重工業さまからの「工場のIoTや働く人の動きを知りたい」という依頼でした。私はものづくりという観点で農業と製造業は同じと考えていたので、ビニールハウス内の仕組みをそのまま工場に導入しました。それがうまくいき、製造業向け画像認識AIの開発も開始したんです。

若目田:AIでできることはいろいろある中で、品質検査AIに着目したのはなぜですか?

鈴木:農業では収穫物の価値が下がらないように傷をチェックします。AIを使って同じことを製造業でもやろうと思ったんです。

また、テクムズの画像認識AIプラットフォーム「DEEPS」を製造業向けにカスタマイズすると、品質検査AIが一番相性が良かったというのも理由の一つです。

黒色ゴムの品質検査は日本でテクムズだけの技術


若目田:テクムズの品質検査AIの特徴を教えてください。

鈴木:素材の特性上、自動化が非常に難しかった黒色ゴム部品の品質検査を、日本でテクムズだけが実現できました。

これまで黒色ゴム部品の品質検査は拡大鏡を使って目視で行っていたのですが、不良品の見落としは避けられません。

テクムズの品質検査AIは精度も非常に良く、0.1mmの微小な傷を一瞬で検出できます。また、月に100万個の部品の品質検査ができるほど処理能力にも優れており、あらゆるお客様の生産スピードに対応できます。

若目田:品質検査の対象として、黒色ゴム部品に注目したのはなぜですか?

鈴木:品質検査AIを開発した当初にいろいろな製造業者に営業をかけていく中で、ゴム業界はニッチな市場だと気づいたからです。

鉄部品などの品質検査は、専門機メーカーの機械ですでに実現されていました。しかし、ゴム部品はその特性上、機械やAIによる品質検査が難しく、工場の方々も苦労されているのだとわかりました。

そこでゴム業界に興味を持ち調べてみると約6兆円とかなり大きな市場規模だったので、ゴム部品の品質検査AIの開発に着手しました。実際に営業していたからこそ、ゴム業界の潜在的な課題を発見できたと思います。

若目田:今回の品質検査AIの開発で、ゴム業界はかなり変わっていきそうですね。

鈴木:ゴム業界の国内企業の海外進出もしやすくなると思います。品質検査が目視では日本と同等の品質を海外で実現するのは難しいですが、AIを使えば可能です。

また、私たちのAI技術を海外に持っていってもらうことで、テクムズとしても海外進出に繋がります。そのため、お客様の海外進出も積極的にサポートしていきたいです。

日本人が気持ちや時間に余裕を持てる世界をAIで実現したい


若目田:テクムズが考える課題と、課題を解決して世の中をどう変えたいか教えてください。

鈴木:人手不足はさまざまな業界に共通する課題だと思います。今は製造業や農業に業界を絞っていますが、ほかの業界にもテクムズの技術を導入して、多くの人々に気持ちと時間に余裕を持ってもらいたいです。

若目田:そのように考える背景を教えてください。

鈴木:日本人は非常に真面目なので、気持ちや時間に余裕を持ちにくいと思います。たとえば、移動の電車や新幹線の中でもメールをチェックしたり、電話でやり取りしたり、ネットのニュースを見たりしますよね。本来なら仕事をしなくてもいい時間だとわかっていても、どこかでずっと気になるんですよ。

「新幹線に乗ると電波が繋がらないからスマホやPCが使えない」など言い訳ができればいいのですが、今はほぼどこでもスマホやPCが使えてしまいます。その結果、仕事を忘れる時間が次第に削られている気がするのです。

若目田:たしかに、日本人がもっとゆとりある生活ができたらすばらしいですね。

鈴木:自分の体験からもそう思っています。私には1歳と4歳の娘がいて、とても可愛い時期なのです。もっと家族と一緒に過ごしたいと思うのですが、今は会社が成長している時期なので仕事を優先しなければいけません。

もしAIが私の代わりに経営の指標を考えてくれたり、データ分析してグラフをつくってくれたりすれば、気持ちや時間に余裕ができると思うんです。

今後は海外進出を見据えて事業を拡大


若目田:これからどのように事業を拡大していきますか?

鈴木:テクムズのサービス導入を検討するお客様に安心してもらえるよう、今まで伏せてきた取引先名を公開するなど、2019年1月からは具体的な取引事例を出しています。

海外進出を視野に入れているので、テクムズの活動を海外に対してもわかりやすく伝えるための1つの通過点として、上場も検討しています。テクムズが安心できる証明になり、海外の方も受け入れやすいと考えています。

若目田:いつでも海外進出する用意はできているのですね。

鈴木:はい。テクムズの社員は全員英語ができますし、さらに英語を忘れないように英会話スクールにも通ってもらっています。私個人も「それは海外で売れるのか?」が最近のキーワードで、いろいろな場面で言うようにしています。

また、国内企業が海外で運営する工場のみならず、海外企業にテクムズの商品を直接売ることで、さらに海外進出を加速していくつもりです。

編集部あとがき

多くの業界で問題になっている人手不足。それをAIで解決すれば、真面目な日本人が気持ちや時間に余裕を持ち、心豊かに生きられる世界を目指せると鈴木氏は考えます。今回開発した品質検査AIのほかにも、AI顔パス認証、無人店舗システムといったAI技術を展開しているテクムズ。今後は日本のみならず海外での活躍にも期待です。

取材:若目田
書き起こし:中原