#NALIC特集 株式会社フレンドマイクローブ:微生物を友だちに 環境問題の解決をめざす名古屋大学発ベンチャー

投稿者: | 2021-01-29
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一般財団法人 バイオインダストリー協会によると、2019年4月時点で把握されているバイオベンチャーは2,010社で、2015年の調査時より約4倍に増加しています。名古屋近辺でもバイオベンチャー設立は盛んであり、名古屋大学発ベンチャーのうち約半数がバイオベンチャー(環境・エネルギー、創薬、医療、ヘルスケア、バイオテクノロジー)です。

そんな日本のバイオベンチャーの草分け的存在である西田 克彦氏が、名古屋大学大学院の堀 克敏教授とともに、名古屋大学発ベンチャー・株式会社フレンドマイクローブを設立しました。西田氏は株式会社医学生物学研究所(MBL)を、創業時代より経営者として率い上場を果たし、国内、海外で事業を展開してきました。また、多くのベンチャー企業を支援し、育成した実績を持っています。

今回は、Nagoya Startup Newsスポンサーでもある名古屋医工連携インキュベータ「NALIC」の入居企業特集として、株式会社フレンドマイクローブの代表取締役社長西田 克彦氏へのインタビューを行いました。

西田 克彦氏|プロフィール

大学卒業後は出版社などでの勤務を経て、1970年に株式会社医学生物学研究所に入社。2001年に同社代表取締役社長、2011年に代表取締役会長に就任。2015年に退任。その他北京博迩邁生物技術有限公司董事長、株式会社Oncomics代表取締役、株式会社GEL-Design代表取締役社長、エムビーエルベンチャーキャピタル株式会社代表取締役社長などを歴任。現在は株式会社フレンドマイクローブの代表取締役社長を務める。

名古屋大学堀教授の熱意がきっかけで、フレンドマイクローブにジョイン

—これまで、多くの企業の経営・起業に携わってこられたとうかがいました。ご経歴について教えてください。

西田:大学を卒業後、東京の出版社などで勤務したのち、株式会社医学生物学研究所(以下MBL)の立ち上げに携わることになりました。立ち上げに携わった研究者は公務員だったため、社員は私一人でスタートしました。MBLは日本初の抗体メーカーで、設立当初は培養用血清に着目して製造を始めました。

—西田さんはライフサイエンスのバックグラウンドがない中、実際に手を動かして血清を作っていたのですね。

西田:愛知県がんセンターの職員だった数納さん(現在、フレンドマイクローブ社で管理部門を担当)の尽力があったからです。日本初の血液中のたんぱく質の濃度を測定する放射状免疫拡散板、その後自己免疫疾患の診断薬を開発して販売し、会社の基盤となりました。自己免疫疾患検査薬の国内シェアは80%を超え、海外でも利用されるようになっていきました。

—その後今に至るまで、どのような経緯をたどってこられましたか?

西田:MBL設立初期は、ベンチャーキャピタル(VC)などが存在せず、金融機関からも融資を断られたりして、資金調達では非常に苦労をしました。そんな経験もあって、株式公開後に、アーリーステージのベンチャー企業に特化したVC(MBLベンチャーキャピタル)を設立し、多数のベンチャー企業に投資し、育成支援を行ってきました。

この地域のポスト自動車産業を育成したい、そのためにバイオ産業の育成をと中部経済産業局から依頼されて、NPOバイオものづくり中部を組織するお手伝いをしたこともあります。同NPOは数年前に解散しましたが、大学の研究者と企業を結ぶ役割を担っていました。

そのような背景もあり、大手企業含め多数の企業からの支援要請があり、ベンチャー企業の設立に協力したり、子会社化や事業に組み込んだりしてきました。NALICにも、これまでいくつかの企業を入居させていただいていますよ。

—フレンドマイクローブもその中の一つですか?

西田:そうですね。名古屋大学の堀教授の環境問題への熱意をお聞きしたのが大きな動機で、フレンドマイクローブの設立をお手伝いすることになりました。

—フレンドマイクローブ設立の背景について教えてください。

西田:弊社のCSO(最高科学責任者)であり名古屋大学教授である堀克敏教授の「微生物を使って環境を維持・浄化したい」という理念は社名の意味「フレンドマイクローブ=微生物と友だち」に表現されていると思います。これまでの滅菌、殺菌、消毒など人間と微生物の敵対的なイメージから微生物の助けを借りて環境浄化をしていくこと、優しい地球環境を、が中心的なテーマになっています。

進歩したサイエンスをどのような形で産業応用していくかを考えるとき、環境・人体への配慮や、安全性を担保していくことは非常に重要です。現在、当社が日本ゼオンから受託し、名古屋大学と共同研究している「カーボンナノチューブの環境生分解性に関する共同研究」は、新しい素材の市場投入をするにあたって「製造から廃棄までの全ライフサイクルにおける環境管理策の確立」をしようとするもので、産業界にこのような動きがあるのはうれしいですね。

—フレンドマイクローブの技術・事業内容について教えてください。

西田:堀教授は、従来にない優れた動植物油の分解能力を持つ微生物を発見し、製剤として排水処理法への応用を考え、食品工場や油脂工場の排水処理への導入が可能な技術を開発しました。石油資源を原料とする界面活性剤で油を溶かして流すのではなく、油を分解する能力の高い微生物と産生する酵素(リパーゼ)の使用可能な領域を洗剤市場やその他に広く求めていきたいと考えています。

排水処理事業は小さなベンチャー企業がやるには重い仕事ですが、やっと動き始めたところで、2021年には立ち上がっていくと思います。

性能と快適性、環境への配慮を兼ね備えた3次元マスク『θ(シータ)』をリリース

—フレンドマイクローブでは、2020年8月に3次元マスク『θ(シータ)』をリリースされたそうですね。どのようなマスクなのでしょうか。

西田:ウイルス濾過(ろか)性能、装着時の快適性、環境への配慮にこだわったマスクです。フィルターには三井化学の高機能な不織布を使用し(※)、1日1回取り替えていただくことで衛生的に利用できます。また、不織布の1日の使用量は従来の約10分の1で済みます。

※フィルター性能を示すウイルス濾過効率(VFE)及び微粒子濾過効率(PFE)が99%以上(Nelson Lab.における試験結果)の使い捨て不織布フィルター

マスクの本体部分には、生分解性プラスチックのポリ乳酸(PLA)を使用しています。お湯にあてると自分の鼻の形に合わせられるようになっていて、これはとても重要な点で、隙間からのウイルス飛沫や菌飛沫の侵入防止とフィット感が両立されています。

また出荷前に、マスク本体に対してフィルター装着部以外からの空気の漏れがないかを1個ずつテストしています。もちろん、不織布もロットごとにテストしています。メーカーとしてこのようなことができるのは、日本で唯一ではないでしょうか。

—このマスク開発には、どのような背景があったのでしょうか?

西田:以前から、三井化学と堀教授は共同研究プロジェクトを進めていました。そんな中、新型コロナウイルス感染症が発生したのです。三井化学は同社の不織布をさまざまなマスクメーカーに供給していましたが、その性能を十分に活かしきれていない部分がありました。そして、3D プリンターを活⽤した「再使⽤が可能ながらウイルス除去効果のある新型マスク」の開発が始まりました。

—マスク不足が起きた時期もありましたが、現在はさまざまな種類のマスクがあふれていますね。

西田:本来、マスクに求められるのは私たちに有害なものをできるだけ除く役割です。それが、息が楽なものや涼しいもの、中にはファッション性ばかりが謳われているものも登場してきましたね。そのようなものでは、本来の目的は果たせません。

これまでは量産化できていなかったため、クラウドファンディングの支援者だけにお送りしたところです。支援者のみなさまからは、「しっかりと感染防御できるマスクがないから不安だった」「マスクの目的がファッション性や違う方向に流れてしまっている」などのご意見をいただき、また、改良できるところは改良しました。ようやく注文が受けられる体制が整い現在はYAMADAモールAmazonでも販売を開始しました。

—現状のマスクに不安を抱えている方は安心して使えそうですね。

自然に優しい生活のあり方をめざして

—インタビューを通して、西田さんの経営者としての信念を垣間見ることができました。

西田:経営者としては、出資していただいている株主に対していかに業績を出すか、ステークホルダーに安心される経営がもちろん大事です。でも、一番大切なのは、雇用の創出だと思ってきました。

理系の若い人たちが夢を持ってライフサイエンスを勉強してきたのに、雇用がないから、学んできた知識をいかせない場面があります。だから、失敗も成功も含めて、なんとか雇用を生み出したい。そんなマインドでやってきました。

—では最後に、フレンドマイクローブの今後の展望について教えてください。

西田:これまで人類は、殺菌や消毒、滅菌など、どちらかというと微生物の世界に対してずっと侵害し、敵対してきました。でも実際は、悪さをする微生物は一部で、そう多くないんです。例えば醸造発酵は微生物の力を使っていますよね。そのように微生物の助けを借りて、自然に、環境に優しい生活のあり方をめざす役割を担う会社になっていければと思います。設立者の堀先生の思いもそこにあると思いますし、フレンドマイクローブの社員もそう考えていると思います。

今回リリースしたマスクは‘微生物とともだちに’と少し違う?と感じられるかも知れませんが、ウイルス、細菌、微生物と人類がどのように付き合っていくかの一つの表現でもあると思います。会社として自由度高く、いろんな機会をとらえながら事業をつくっていきたいですね。それから、後継者を育てることは私の責務です。

編集部まとめ

SDGsが声高に叫ばれる今、フレンドマイクローブのめざす“自然環境に優しい生活”は、まさにそれに向き合ったものであると言えます。科学技術の進歩により、私たちには物質的な豊かさはもたらされますが、負の側面があるという現実にも、同社のように向き合うことが必要になってくるでしょう。

そんなフレンドマイクローブが入居している中小機構運営の名古屋医工連携インキュベータ「NALIC」には、産学連携のR&Dを中心とした医療・工学系ベンチャーが、数多く入居しています。

入居検討者の方に向けて、西田氏からのコメント

NALICのインキュベーション・マネージャーはいろんなことをご存知です。ある面では資金のことなどさまざまな相談に乗っていただきました。NALICだからいろんな機会をいただけていると思いますし、NALICの方たちのネットワークが弊社にとってもいろんな機会を拡大することにつながっています。

NALICでは、入居企業を募集しています。ご興味のある方は、下記のリンクからぜひお問い合わせください。