#NALIC特集 株式会社HACHIX|AI・IoT・ロボティクスを融合させるベンチャー企業

投稿者: | 2020-06-30

現在、私たちの未来を創り出す最新技術のうちでも、特に大きな注目を集めているのが、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)さらにはロボティクスです。世界にその名を轟かせている大企業から中小企業まで、多くの会社がそれらの技術を活かした製品やサービスの開発を日夜行っていますが、そんな中、名古屋発のベンチャー企業である株式会社HACHIXは、上記3つの技術を組み込んだサービスを提供しています。

今回は、名古屋医工連携インキュベータ「NALIC」の入居企業特集として、株式会社HACHIX代表取締役社長のグエン・コン・タイン氏、副代表のファム・クアン・チュン氏へのインタビューを行いました。

文:杉下

グエン・コン・タイン氏|プロフィール

代表取締役CEO。ベトナム出身。大阪大学情報科学研究科大学院修了後、ブラザー工業株式会社にエンジニアとして入社、大学院時代に学んだセンサー技術などを活かし、同社に6年間勤務したのち、2017年に株式会社HACHIXの共同創業者の一人となる。

ファム・クアン・タイン氏|プロフィール

HACHIX副代表。ベトナム出身。名古屋工業大学でロボティクスを含めた工学を研究、卒業。

あらゆる人が最新技術の恩恵を受けられるような社会の実現

グエン氏(写真左)・ファム氏(写真右)

—HACHIXの事業について教えて下さい。

グエン:私たちはまず、人工知能やIoTなどの最新技術を比較的安価に提供することで、経済的に余裕のある大企業だけではなく、中小企業でもその恩恵を受けられるような社会の実現を目指しています。

—具体的にはどのようなサービスや技術を提供しているのでしょうか。

グエン:例えばレストランでいえば、POSシステムが導入されていて、そこから売り上げデータなどを蓄積することができます。しかし、そうして収集されたデータも、結局は解析されないままになっていることがあるんです。そこには金銭的な要因が大きく関係していて、データを収集する仕組みは社内にあっても、解析を外注するとなると採算の見込みが立ちにくく、止むを得ず解析が行えない零細企業や中小企業は少なくありません。

そこで弊社はデータの収集から解析まで、入力から出力までのプロセスをすべて網羅するソフトウェアを提供しています。他にも工場の場合であれば、製造ラインに搭載されたカメラとセンサーから得られたデータを分析し、ラインが停止している時間などを見える化すれば、それを生産計画や人員配置に反映させると今よりも効率が上がるのかどうかがわかるようになります。

ファム:弊社はこういったサービスを安価に提供するために、オープンのハードウェアとオープンソースのソフトウェアを基盤に開発をしています。独立したハードやソフトを開発するとなると時間もコストもかなり膨れ上がってしまうので、その分だけ価格は上げざるを得なくなりますが、オープンのものをベースにすれば、その上に自分たちが開発したものを搭載するだけで運用できるので、開発コストの削減に伴って価格も大幅に抑えることができます。

また、現在はコロナウィルスへの対策が大きな社会課題になっているので、それに合わせて、顔認証と体温測定が同時にできるシステムを開発しています。

—起業の経緯はどのようなものでしたか。

グエン:私はこの会社を立ち上げる前に、ソフトウェアのエンジニアとして6年間働いていました。ただ、もともと新しいものに対する好奇心が強いタイプなので、同じテクノロジーの分野でも、より新しい刺激や変化がある領域に身を置きたいという思いがずっとありました。

そんな時、Microsoftが表情からその人間の感情を判断する画像認識ソフトを開発したというニュースが大きな話題を呼び、私も強いインパクトを受けました。当時の自分には人工知能やその開発に関する知識はありませんでしたが、その時から人工知能の持つ技術的な可能性に魅了されてしまいました。

それから、今の会社の創業メンバーの二人と出会って、彼らが学んでいた人工知能や機械学習といった知識を共有しながら1年間ほどプロトタイプを制作することになり、最終的に創業に至りました。創業メンバーには、今隣にいるファムともう一人いるのですが、彼は今年の10月までアメリカで博士課程を修める予定になっているので、現在はリモートで一緒に働いています。

ロボティクスの領域にも参入し、より大きな可能性を探究する

—これから、どんな製品やサービスを世の中に提供していきたいですか。

グエン:現在開発を進めているのは、先ほどもお話しした顔認証と体温測定のシステムと、具体的にはまだ言えませんが、介護現場の負担をもっと軽減できるようなシステムの二つです。

それに加えて、ロボティクスの領域にも積極的に参加していきたいと考えています。現在、同じく名古屋を拠点としている株式会社和ロボさんと戦略的パートナーになり、開発を進めています。ゆくゆくは、弊社が持つ人工知能やIoTの技術とロボティックスの技術を組み合わせることで、より包括的なサービスを多くの方に届けていきたいです。

ファム:また、最新技術の領域では特に人材を確保することが大切になるので、人材教育にも力を入れています。2020年3月に、友人と一緒にベトナム向けにオンライン学習のシステムを提供する会社を設立し、それを通じてベトナムの大学生に人工知能やIoT、ロボティクスなどに関する知識を共有しています。

最新技術を学ぶことは日本でもできますが、現状では金銭的な負担が非常に重く、決してその門戸が広く開いているとはいえない状況です。特に、私たちのようにベトナムから日本に来て最新技術を学ぼうとしている学生などにとっては、国ごとの経済状況の差がそのまま金銭的負担の重みとなって自分たちにのしかかってきます。

はじめにも言ったように、私たちの理念は経済的に余裕のある大企業だけではなく、中小企業や零細企業もその恩恵を受けられるような社会の実現であり、もっと端的に言えば最新技術をより多くの人に開放することです。最新技術の教育の提供は、そのような社会を実現するための方法の一つでもあるんです。

編集部まとめ

株式会社HACHIXは2017年に創業されたばかりですが、創業者がそれぞれの分野の技術と知識を確固とした理想のもとに結集させることで、最新技術がもたらす新しい可能性を日々切り開いています。

人工知能や機械学習、ロボティクスなどの最新技術はこれからの世界の根幹になりうるほどの大きな可能性を秘めた一大産業であり、ここ名古屋からも来たるべき次世代の社会をリードする企業が生まれようとしています。

そんなHACHIXが入居している中小機構運営の名古屋医工連携インキュベータ「NALIC」には、産学連携のR&Dを中心とした医療・工学系ベンチャーが、数多く入居しています。

入居検討者の方に向けて、グエン コン タイン氏からのコメント

グエン:とにかく立地がいいのが嬉しいですね。

すぐ近くに名古屋工業大学があるので、名工大の優秀な学生を採用しやすいですし、近くにはイオンモールもあるので24時間作業をするのにも便利です。あと、個人的には近くに鶴舞中央図書館がある点も気に入っています。

ファム:企業間のマッチングサポートなど、企業を支援する体制がとても手厚いので、本気で事業を拡大したいと考えている企業にはとてもいい環境だと思います。そういったものを求めている方にはぜひ利用して欲しいです 。

NALICでは、今年度も入居企業を募集しています。ご興味のある方は、下記のリンクからぜひお問い合わせください。