#クリエイション・コア名古屋特集|血管内照射という世界初の発想で、光治療の適応拡大に挑む|イルミメディカル株式会社

投稿者: | 2026-01-28


イルミメディカル株式会社(本社・開発拠点:名古屋市、以下:イルミメディカル)は、がんやアルツハイマー病など、さまざまな疾患に対する新たな治療手段として注目されてきた「光治療」の可能性を拡張するスタートアップです。光が体の深部まで届かないという制約により、適応疾患や実用化の範囲に大きな壁があった光治療に対し、同社は「血管の中から光を照射する」という世界初のアプローチで挑んでいます。

今回は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するインキュベーション施設「クリエイション・コア名古屋」の入居企業特集として、同社の代表取締役である代表取締役社長兼CEOの塚本俊彦氏に、創業の背景や技術の特長、そして今後の展望についてお話を伺いました。

プロフィール

塚本 俊彦(つかもと としひこ)氏
イルミメディカル株式会社 代表取締役社長 兼 CEO。愛知県尾張旭市出身。近畿大学大学院修了(2006年)。修士課程修了までにアメリカ化学会の学術誌を含む計3報の論文を執筆・掲載し、学内トップクラスの業績により奨学金全額免除を取得。大学院修了後は、製薬、化学、医療機器分野の研究開発職を経験。医療機器メーカー・朝日インテックでの開発経験を経て、2023年にイルミメディカルを創業。

光治療の可能性と限界──「なぜ広がらなかったのか」

ーまずはじめに、イルミメディカルの事業についてご紹介いただけますか?

塚本氏:当社は、光治療・光診断の適応拡大を目的とした新しい光照射技術の開発を行っています。最大の特長は、血管の中から血管の外側、つまり臓器側に向けて光を照射できる点です。このアプローチは、世界的に見ても当社しか実現できていない技術だと認識しています。

— 光治療は以前から研究されている分野ですが、なぜ今まで広がらなかったのでしょうか。

塚本氏:光治療自体はとても良い技術です。ただ、光が届く範囲が体表や限られた部位に制限されてしまう。そのため、適応疾患が広がらず、製薬会社としても市場性を見出しにくい状況が続いていました。
私はレーザー技術とカテーテル治療の両方に携わってきたので、「問題は薬ではなく、光の届け方にあるのではないか」と感じていました。

— そこで「血管内から照射する」という発想に至ったのですね。

塚本氏:そうですね。血管は全身に張り巡らされています。であれば、血管の中から光を届けることができれば、深部臓器にも応用できる。光治療のボトルネックを根本から解消できると考えました。

血管内から照射する世界初の技術と、その特長


— 技術的な特長について教えてください。

塚本氏:当社のデバイスは、カテーテルの中に光照射デバイスを組み込み、その先端にレーザー光源を搭載しています。一般的な医療用レーザー装置は大型ですが、これを直径0.3〜0.4mm程度まで小型化し、ディスポーザブルとして設計しました。

— 小型化と使い捨てにこだわった理由は?

塚本氏:医療現場では、初期投資やメンテナンスの負担が大きい装置は敬遠されがちです。カテーテル治療では、すでにディスポーザブルが当たり前になっていますので、その流れに合わせることで、現場に受け入れられやすい設計にしています。

— 実験結果についてはいかがでしょうか。

塚本氏:豚の臓器を用いた評価では、体表から照射する場合と比べ、血管内からの照射では低出力でも広い範囲に光が届くことが確認できています。また、X線下で位置を確認しながら操作できる点も、既存のカテーテル治療と同じですので、医療従事者にとっても扱いやすい技術だと考えています。

大企業では実現できなかったからこそ、起業という選択をした

— 塚本さんが起業を決断された背景について、もう少し詳しく教えてください。

塚本氏:前職では、新しい医療機器の開発に携わっていました。ただ、医療機器や医薬品の世界では、治験に進むまでに非常に大きなコストと時間がかかります。そのため、大企業であっても「事業として成立するか」という観点で判断され、プロジェクトが途中で止まってしまうことは珍しくありません。

— 技術としての可能性があっても、事業化の判断は別ということでしょうか。

塚本氏:そうです。技術としては面白いし、社会的な意義もある。ただ、それでも事業判断としては進められない。日本の医療機器業界では、そうしたケースを何度も見てきました。他の会社に移れば続けられるのでは、という選択肢も考えましたが、どこに行っても同じ壁にぶつかるだろうと思ったんです。

— そこで「自分でやるしかない」という結論になったんですね。

塚本氏:結果的にそういう結論になりました。誰かが代わりにやってくれる状況でもなかったですし、この技術は中途半端に終わらせてはいけないと思っていました。これまでの研究成果や特許など、ある程度のアドバンテージは自分の中にありましたので、「今やらなければ、この技術は世に出ない」と感じたことが、起業を決断した一番の理由です。

クリエイション・コア名古屋という開発拠点の存在


— 開発拠点として、クリエイション・コア名古屋を選ばれた理由は何だったのでしょうか。

塚本氏:一言で言えば、「ものづくりを本気でやるスタートアップにとって、非常に現実的な拠点」だったからです。医療機器の研究開発では、試作や実験を繰り返す必要がありますが、場所によっては許可や制約が多く、思うように進められないこともあります。

— 実験環境としての自由度が高いということでしょうか。

塚本氏:そうですね。クリエイション・コア名古屋は、広さがあり、コストも抑えられる。さらに、実験や試作を柔軟に進められる点が非常にありがたいです。ハードウェア系、特に医療機器のスタートアップにとって、この条件が揃っている場所は意外と多くありません。

— 支援面についてはいかがでしょうか。

塚本氏:インキュベーションマネージャーの方々に、資本政策や人材採用、事業の進め方について相談できる点も大きな支えになっています。技術開発だけでなく、事業としてどう成長させていくかを一緒に考えてもらえる環境がある。研究と経営を同時に進める必要があるスタートアップにとって、非常に心強い存在だと感じています。

光治療を“特殊技術”で終わらせないために


ー今後、イルミメディカルとして目指すビジョンについてお聞かせください。

塚本氏:現在は、製薬会社と連携しながら、光感受性物質と当社デバイスを組み合わせた評価・開発を進めています。当社の技術があることで、これまで評価が難しかった領域にもアプローチできるようになりつつあります。

— がん以外の分野への展開も考えているそうですね。

塚本氏:はい。アルツハイマー病や再生医療など、光治療が貢献できる可能性は多くあります。重要なのは、この技術を「一部の特殊な治療」で終わらせないこと。患者さんの負担をできるだけ小さくしながら、治療の選択肢を広げていきたいと考えています。

ー最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いします。

塚本氏:イルミメディカルは、まだ小さな組織ですが、本気で医療の未来を変えようとしています。スタートアップの環境で、自分の力を発揮したい方、最先端の技術に関わりたい方には、非常にやりがいのあるフェーズだと思います。興味を持っていただけたら、ぜひ一度知ってもらえると嬉しいです。

ーありがとうございました!

編集部コメント

光治療が抱えてきた「光が届かない」という根本課題に対し、血管内から照射するという発想で挑むイルミメディカル。塚本氏のこれまでの経験が結実した技術であり、世界初という言葉に説得力があります。名古屋発の技術が、医療の未来をどう変えていくのか。今後の動向に注目したい企業です。

イルミメディカル 会社HPはこちらから
公式サイト:https://illumimedical.com/

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