インフラ事業、アプリ開発を主要事業とし、東京、名古屋で会社を展開しているLisa Technologies株式会社。
これまで、Google認定パートナーとして集客、ブランディングのコンサル事業を展開してきました。2018年11月には、テイクアウトコーヒーのモバイルオーダー&ペイアプリ「TOGO」をリリースし、翌年1月にエリア拡大と、急成長を遂げています。今回は、代表取締役である西村 龍紀氏にインタビューしてきました。
西村 龍紀 | プロフィール
1989年生まれ、愛知県刈谷市出身。2017年8月にLisa Technologies株式会社を立ち上げ、Googleストリートビューを用いたインフラ事業の運営を行う。翌年11月に、アプリ「TOGO」をリリース。現在は、アプリ運営と共に新規事業の立ち上げに取り組んでいる。
変化を重ねたビジネスの感覚
森戸:“ビジネス”を意識しはじめたのは、いつごろでしょうか。
西村:20歳ぐらいのときですかね。それまでとにかく何も考えずに遊んでばかりいたのですが、どうせ仕事するならお金を稼ぎたいと思っていて。求人誌に「歩合 月収100万円」と書いてあるのを見つけたんです。今考えたらすごく怪しいのですが、それ見て「これすごいじゃん!」みたいなノリで入社しました。
すぐに結果を出したいと思っていたので、必死に上司たちがやっていることを吸収し、そこから他の社員がやっていない独自のスキームを立ち上げたりもしました。運が味方してくれたのもあり、入社2ヶ月目には20社弱あるグループの中でトップセールスになっていました。
森戸:2ヶ月目で売り上げトップはすごいですね。
西村:そのあたりからビジネスで成功したいと意識をするようになりました。その約1年後には会社を辞めて、営業を請け負う個人事業主として独立していました。
森戸:そこが起業家としてのキャリアのスタートだったんですね。
西村:そうですね。そこから順調に売上を拡大していったのですが、東日本大震災をきっかけに当時、提携していたメーカーのインセンティブが大幅に下がりました。売上依存の比率を分散するなどしていれば良かったのですが、私はその時そういった経営が出来ていませんでした。
そこから、自分で何か新しいプラットフォームを創らなければならないと強く意識するようになりました。半年後には営業の仕事も辞めて、自社サービスを立ち上げたんです。
森戸:そこからは順調に?
西村:いえ、失敗ばかりです…(笑)。取引先に騙されて裁判になったり、気が付けば借金が1000万円近くになっていました。かなり貧乏生活もしましたが、最終的には借金も返済し、お金も時間もある程度余裕ができていましたね。
はたから見れば順調だったかもしれません。でも、そんな日々に私は「毎日つまらない」と思うようになりました。やっぱりワクワクする何かをしないと!と思い、Lisa Technologiesを立ち上げたんです。
ピポッドして出来たアプリ「TOGO」
森戸:昨年11月にリリースされたアプリ「TOGO」について教えてください。
西村:コーヒーのテイクアウトをアプリ上で注文、会計ができるサービスです。先にアプリから注文しておいて、お店で受け取るだけのスマートな体験ができます。
森戸:注文のために長い列に並ばなくても良いのは便利ですね。なぜテイクアウトコーヒーに目を付けたのでしょうか。
西村:実は、最初はテイクアウトコーヒーではなく、カフェの席を時間で予約できるサービスを考えていました。
カフェは本来、コーヒーを売ることでマネタイズしています。しかし、現状ユーザーはコーヒーを買うためというより、作業したり勉強したりするためにカフェを利用していますよね。特に、東京のカフェはよく混雑していて。
森戸:確かに、場所としてのカフェを求めている人は多いですよね。
西村:このお店とユーザーのニーズの乖離をどうにか変えれないかと考えていました。しかし、店舗にこのシステムを導入する事のハードルが高く、諦めたんです。最近、トレタさんがトレタnowというサービスをはじめましたが、近いシステムですね。
席予約サービスは諦めましたが、カフェの調査をしている段階で、テイクアウトコーヒーに目を付けました。日本はコーヒーのテイクアウト率が世界で一番高いと言われていて、カフェ市場の約15%ほどを占めています。
すでにアメリカや中国ではモバイルオーダーの市場が確立されています。日本でもキャッシュレス化が進むフェーズであり、モバイルオーダー&ペイという分野が伸びてきています。
最終的には私自身が毎日コーヒーをテイクアウトして飲んでいたのもあり、「便利になったらいいよね」といった思いでTOGOをスタートしました。
アプリ開発は一筋縄ではいかない
森戸:TOGOの開発でこだわった部分はどんなところでしょうか。
西村:画面遷移をできるだけ減らすことは意識していました。サービスの性質上、アプリを長時間操作するというより、生活の一部を便利にするものなので出来るだけ少ないタップ数で注文ができるようになっています。
森戸:確かにタップ数が多いとわずらわしく感じてしまいそうです。開発段階でも、やはり苦労があったのでしょうか。
西村:先程も述べたとおり、開発段階でピボットしています。そのため一度仕様から作り直した経緯もあり、本来であれば実装予定だった機能を削ることに悩みました。
森戸:やはりアプリ開発は、一筋縄ではいかない苦労を感じますね。店舗展開にも苦労があったのでしょうか。
西村:そうですね、TOGOのようなビジネスモデルで店舗展開をしていくには、どうしても労働集約型になる部分があります。アプリのリリース前に営業活動を始めたので、信用していただくのに苦労しました。社内リソースも限られていたので、50店舗ほどは私一人で営業していました(笑)。
森戸:営業力があってこそ成せることですね。店舗展開する中で予想外に感じたことはありますか。
西村:営業で店舗を回っているとテイクアウト自体の需要は予想以上でした。多い店だと一日でコーヒー100杯〜200杯がテイクアウトだけで売れているんです。
他には、TOGOは実はほとんど広告を出していないにも関わらず、新規ユーザーが毎日増え続けています。これは提携いただいた店舗さまがお客さまにTOGOを紹介してくれているからです。
「すぐに受け取れる」「財布を開く必要がない」がUXで1番肝になる部分なので提携していただいた店舗さまと一緒にサービスを作っていく必要があります。本当に良い店舗さまばかりで、ここまで協力的になってくれるのは良い意味で予想外でした。
森戸:店舗としっかり連携が取れるのはサービスにとって大切ですね。今後、「TOGO」の名古屋エリア拡大はあるのでしょうか。
西村:将来的には展開しようと思っています。ただ東京で店舗数を増やしていくフェーズなので、まだまだ時間が掛かるかもしれませんね。
世の中に大きなインパクトを与えるビジネスを
森戸:Lisa technologiesはどんなビジョンを目指していますか?
西村:とにかく世の中に大きなインパクトを与えるビジネスをしたいですね。もちろん、自分達がワクワクするような事で。
森戸:創業時からその思いは変わらないんですね。
西村:そうですね、Lisa Technologiesで働く人にもワクワクしていてほしいと思っています。でも、ワクワクできるかどうかは「記事をバズらせたい」とか「社内で圧倒的な結果を残したい」など、その人によってさまざまだと思います。
それでも、自発的に創造した仕事はワクワクするという簡単な共通項もあります。だから弊社の教育理念には「やり方は教えない、在り方を教える」という言葉があったりして、自発的に仕事する仕組みをいろんな部分に散りばめています。
私で言うと、Lisa Technologiesのサービスを使って人の生活がどう変わるのか、全く知らない人がそれを使って「マジ便利!」とか「ヤバイ!」とか言っているのを想像するとワクワクするんです。
森戸:なんだか社会実験みたいですね。
西村:そうですね、それと同時に、人から「ありがとう」と言われる仕事をしていきたいと思っています。
取材:森戸
写真:中原