#NALIC特集 微生物処理技術を使ったグリーン・イノベーションで名古屋から世界へ|株式会社フレンドマイクローブ

投稿者: | 2023-02-10


界面微生物工学の基礎から実用化までを研究する堀研究室(名古屋大学)から生まれた株式会社フレンドマイクローブ(本社:名古屋市千種区、以下フレンドマイクローブ)は、微生物処理技術を用いて、工場排水に関する産業廃棄物の削減に取り組んでいます。今回は名古屋医工連携インキュベータ「NALIC(ナリック)」の入居企業特集として、同社代表取締役の 蟹江純一氏へのインタビューを実施。微生物処理技術を使ったグリーン・イノベーションにつながる事業について、お話を伺いました。

プロフィール

蟹江純一(かにえ じゅんいち)氏
株式会社フレンドマイクローブ 代表取締役社長
堀克敏教授の研究室にて6年間微生物に関する研究に努める。その後、フレンドマイクローブに第一号社員として入社。主任研究員として新システムの開発等を行い、2021年同社代表取締役社長に就任。

微生物処理で油を分解し、産業廃棄物の軽減に貢献する


ーまずはじめに、現在のフレンドマイクローブの事業内容について教えてください。

蟹江:フレンドマイクローブは、2017年に創業し名古屋大学発ベンチャーの認定を受けたバイオベンチャーです。弊社では微生物に関する環境ビジネスを行っており、主に食品工場の排水に含まれることの多い動植物油を食べる微生物を取り扱っています。

動植物油が工場排水からそのまま下水に流れると、下流の下水処理に負荷がかかるため、工場排水中の油の濃度には法定基準があり、工場敷地内で基準値以下になるように処理する必要があります。さらに、工場排水の油は、他の微生物処理の浄化性能の悪化や、悪臭の発生など現場でも問題を生じさせます。

微生物処理を行うことで油を分解し、排水処理の負担や悪臭の軽減に貢献するとともに、油性産業廃棄物を削減することが私たちのビジネスです。

ーSDGsの影響もあり、市況的にも可能性を感じます。蟹江さんはもともと社員としてお仕事されていたんですよね?

蟹江:はい。もともと堀教授の研究室で微生物の研究をしていました。そのご縁から声がかかり、2019年に第一号社員として勤務することになりました。堀教授と西田前社長のもとで働きながら、主任研究員として新システムの開発等を行い、2021年に同社代表取締役社長に就任しました。

ーもともとは研究員だったのですね。代表になってからはどのような取り組みをされていますか?

蟹江:代表に就任してからは、会社のニュースを定期的に配信するよう心掛けています。私たちのようなBtoBのバイオベンチャーは、どうしても外部から見たときにどんな会社か見えにくい側面もあります。会社の目指すゴールや事業を理解されないとお問い合わせも増えないと考えているため、情報発信は非常に重要だと捉えています。

他にも、当社の事業をより多くの人に知ってもらうために、プレゼンやピッチの機会があれば積極的に参加しています。最近では、中部ニュービジネス協議会主催の「ニュービジネスフェア2022」で中部経済産業局長賞、名古屋市主催の東海最大級のピッチイベント「GLOW Pitch」で最優秀賞、中小機構主催の「FASTAR 5th DemoDay」でみらい創造機構賞、十六銀行・野村證券・トーマツ主催の「NOBUNAGA21ビジネスプラン助成金」で最優秀賞、愛知県主催の「2023愛知環境賞」で名古屋市長賞を受賞し、メディアに取り上げていただくケースが増え、お問い合わせも増えてきました。

従来の処理方法の課題を解消し、産業廃棄物の削減にもつながる


ーフレンドマイクローブの微生物処理技術が、従来の処理方法と異なる点はどこにあるのでしょうか?

蟹江:従来は、物理的に油を水から分離して処理を行う「加圧浮上分離法」が一般的でした。しかし、この方法では分離した油脂由来の産業廃棄物処理に費用がかかる上に、現場で悪臭が発生するデメリットがあります。弊社の微生物処理技術では油自体を分解するため、油脂由来の産業廃棄物が発生せず、処理費用の削減や悪臭の発生防止に役立ちます。

また、既存の微生物処理方法では分解に時間がかかり、工場の生産と排出される油脂の分解処理のスピードを合わせることが難しいという課題がありました。弊社の微生物処理技術により、動植物油の分解速度を高めることが可能となり、生産スピードに対応できる処理が実現できました。

ー環境に配慮した処理ができる上に、費用・時間コストも削減できる点で優れているのですね。油性排水処理以外にも応用できそうです。

蟹江:そうですね。現在弊社では、グリストラップの油や、生ごみ処理時の油を処理する技術を開発中です。

国内の動植物油処理におけるコストは数千億円に上ると言われています。さらに海外では日本の百倍以上ものコストがかかると言われており、動植物油処理の問題解決はこれからも世界的にニーズがあると言えます。

ー市場規模も大きく、成長する余地はまだまだあるのではないでしょうか。今後の事業展開について教えてください。

蟹江:弊社では、まずは国内の動植物油処理で20%のシェアを取りたいと考えています。さらに日本での活動と並行して、動植物油処理の海外展開も検討しています。海外では微生物処理の技術がまだまだ確立されていないので、これから世界に向けて弊社の微生物処理技術がスタンダードになるよう、事業を展開していきたいと思います。

また、鉱物油分解にも参入予定です。特に愛知県では製造業者も多く、チャンスは大いにあります。鉱物油の分解は難易度が高いですが、微生物で分解できるよう研究開発を進めています。

NALICは、情報収集や立地の面でフレンドマイクローブの成長機会に欠かせない存在

ーNALICに入居を検討している企業にむけて、当施設の魅力について教えてください。

蟹江:NALICではIM(インキュベーション・マネージャー)の方が定期的にヒアリングを行ってくれます。中小機構やIMのネットワークを通じて、多くの情報を得られる点はメリットとして大きいです。

また、名古屋市千種の中心地にあり、来客時に便利な立地を使用できるのに、賃貸コストが比較的リーズナブルであることも魅力です。

ーフレンドマイクローブにとって、NALICが欠かせない拠点になっているのですね。最後に、Nagoya Startup Newsの読者に向けて一言コメントをお願いします。

蟹江:微生物は動植物油だけではなくあらゆるものを分解でき、さらに進化し、合成反応にも使えるなどの面白さを学ぶことができます。フレンドマイクローブの活動について気になった方は、ぜひ一度NALICまでお越しください!

ーありがとうございました。

編集部まとめ

独自の微生物処理技術で国内のみならず、海外展開も視野にいれて研究開発を進めるフレンドマイクローブ。SDGsや昨今のビジネストレンドの観点で見ても、これから益々注目が集まる事業だと感じました。今後の事業展開や研究動向にも注目です。

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