#NALIC特集 ペルセウスプロテオミクス|かつてない技術で抗体を研究・開発するバイオベンチャー企業

投稿者: | 2020-07-13

抗体研究の領域では古くから動物の免疫機能を活用したハイブリドーマ法が用いられてきましたが、近年ではファージディスプレイ法と呼ばれる、従来のものとは異なった方法が広く知られるようになってきました。ファージディスプレイ法は、その過程で動物を使用しないため、これまでは実現できなかった特性を持つユニークな抗体を取得することができます。株式会社ペルセウスプロテオミクスはその技術を使って世界中により良い医療を届けようとしている創薬バイオベンチャー企業です。

今回は、名古屋医工連携インキュベータ「NALIC」の入居企業特集として、株式会社ペルセウスプロテオミクス管理部部長一ノ瀬氏(画像左上)、管理部所属南條氏(画像右上)、研究開発部所属の鵜飼氏(画像右下)と近藤氏(画像左下)へのインタビューを行いました。

抗体医薬品という新しい創薬の形

ーペルセウスプロテオミクスはどんなことをしている会社ですか?

南條:一言でいうと、抗体医薬品シーズを研究開発している東京大学発のバイオベンチャーです。2000年代の前半に数多くの大学発ベンチャー企業が誕生した時期がありました。弊社もその流れの中で生まれた企業であり、2001年に創業しました。

一ノ瀬:現在は合計で21名の社員が在籍しており、そのうち15人は研究者です。 研究者のバックグラウンドで言えば、全国各地の大学を出た人がほとんどで、博士号や修士号を取得した人もいます。

ー今後上場を目指しているそうですが、市場からはどういった点が評価を受けていますか?

一ノ瀬:一番わかりやすい形としては富士フイルムや中外製薬など、複数の大手の製薬会社に抗体医薬を導出(※バイオベンチャー企業が開発した創作物に関する権利を大手製薬企業に譲渡すること)してきた過去の実績が評価されています。それに加えて、私たちが創出している薬の将来性も高く評価されています。

ー具体的には、どのような病気の改善を目指していますか?

南條:弊社が最も大きく取り扱っている対象疾患はがんです。これまでにも、創出したがん治療用抗体のうち、固形がん(※臓器や組織などで塊をつくるがんの総称)を標的とする抗体を製薬メーカーに導出していて、現在は、導出先で臨床試験が行われています。がんと一口に言ってもその種類は非常に多く、たとえば血液がんや難治性固形がんなど、それぞれの種類に応じた抗体を開発していて、今後は白血病にも対応できるような抗体の研究・開発も進めています。

ーこれからはどんな薬が生まれてくると思いますか?

鵜飼:医薬品の研究・開発の難しい点は、創ったものが承認されるまでに10年単位の時間がかかることです。つまり、創薬においては世の中のニーズを10年以上前に予測していなくてはいけません。そのため、どのような薬を生み出していくのかを意思決定することはとても難しいです。

一ノ瀬:そもそも医薬品は他剤と併用で用いられることも多く、抗体医薬品においても例外ではありません。また、より高い効果を出すために抗体と薬剤を融合した治療薬も登場しています。

今後は、製薬技術。医療技術などを組み合わせた治療が発展していくと思いますが、そのためにより良い未来を見据えながら、他の会社と連携して研究・開発を進めていくことが重要です。

ー普段自分たちの身の回りにある薬がそんなに長い時間をかけて届けられているなんて、知りませんでした。

近藤:10年前までは抗体医薬そのものが、一般にまったく認知されていない領域だったんです。しかし、現在ではその知名度は比べ物にならないほど向上していて、金額ベースで計算すれば今世界で売れている薬のTOP10の売り上げの約半数は抗体医薬品が占めています。技術の進歩も非常に早い領域ですが、人の命に関わる商品なので、承認までのプロセスは多く、その分時間もかかりますね。

最先端の抗体技術で世界の医療に貢献し、患者さんのQOLの改善を目指す

ー会社のビジネスモデルとしては、どのように事業展開していく予定ですか?

一ノ瀬:当社のメインはあくまでも創薬なので、抗体医薬品候補を開発し製薬会社に導出してそれが患者の皆さんに広く行き渡ることで、最終的には患者さんのQOLの向上を目指しています。また、他社の研究の受託や、他の研究機関への抗体の販売も行っているので、それらを通じて安定した経営基盤を築いていきます。

南條:また現在は、自社で創った医薬品シーズを自社で治験まで行うことで、より企業としてのバリューを高めようとしています。そうすることで、最終的にはより良い医薬品の創出と患者さんへの価値の提供を目指します。

ー東京と名古屋の2拠点がありますが、名古屋のラボではどんな部分を担っていますか?

鵜飼:名古屋の拠点では、主にファージディスプレイを活用した抗体作製を専門に行っています。弊社はもともと東大発のベンチャー企業でして、ラボは東大先端研の駒場キャンパス付近にあります。そこで十数年近く研究開発を行ってきましたが、動物を使わずに抗体を取得できる技術としてファージディスプレイ法も習得する事にしました。そのため愛知県豊明市にある藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)と連携して開発をすすめてまいりました。現在はそのような経緯もあり名古屋にもラボを持って活動しています。

—ペルセウスプロテオミクスの目指す未来について教えてください。

一ノ瀬:私たちは、常に先端技術を当社技術と融合させ、優れた新規抗体医薬シーズを創出することにより、これからの医療に貢献したいと考えています。そしてまた、医療に貢献することによって、最終的には患者さんのQOLを改善することを目的としています。

鵜飼:また、現在名古屋ラボには私と近藤の2名が在籍していますが、今後は今まで以上に他の研究開発・企業との連携を深め、より良いものを作っていきます。私たちと一緒に未来を描いてくれる研究者を募集しています。

編集部まとめ

ペルセウスプロテオミクスは大手製薬会社への導出も多く、これからの展開にも目が離せません。
医薬品は人の生活と命に関わるその特性上、承認から販売に至るまで道のりは長くなり、10年先を見据えて研究・開発を行わなくてはなりません。そのためにも安定した経営基盤や行政のサポートが重要です。

そんなペルセウスプロテオミクスが入居している中小機構運営の名古屋医工連携インキュベータ「NALIC」には、産学連携のR&Dを中心とした医療・工学系ベンチャーが、数多く入居しています。

入居検討者の方に向けて、近藤氏からのコメント

近藤:名古屋近郊にはウェットラボ(※生物・化学の実験を装置や薬品を用いて実際に行う研究所)があまりありませんが、NALICではその環境があるので弊社としてはとても助かっています。周辺の大学施設の充実具合や立地、アクセスなども申し分なく、とても働きやすい環境です。

NALICでは、今年度も入居企業を募集しています。ご興味のある方は、下記のリンクからぜひお問い合わせください。