売上にこだわらない、中小企業ファーストという考え方|カルテットコミュニケーションズ代表 堤氏にインタビュー

投稿者: | 2019-06-09
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インターネット広告の中でもリスティング広告に特化した運用代行をおこなう、株式会社カルテットコミュニケーションズ(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:堤 大輔)。同社はYahoo! JAPANやGoogleからさまざまな賞を受賞しており、広告代理店としてたしかな実績を誇ります。

また、働き方改革を積極的に推進する企業として「ホワイト企業大賞特別賞」を受賞した経験も。今回は働き方改革の取り組みについて、そして代表の堤氏がこだわる中小企業ファーストという考え方について、お話を伺いました。

堤 大輔|プロフィール
1983年生まれ、愛知県出身。静岡大学工学部システム工学科卒業。株式会社フリーセル(現ブランディングテクノロジー株式会社)にて営業職として従事した後、当社の前身の個人事業を創業。2011年に法人化し株式会社カルテットコミュニケーションズ代表取締役に就任。広告代理店事業、リスティング広告運用ツール「Lisket」などの事業を展開する。

お金に余裕がない中小企業を救いたい


河合:株式会社カルテットコミュニケーションズについて教えてください。

堤:リスティング広告などのいわゆるインターネット広告を扱う広告代理店です。一般的な広告代理店は、Webサイトの作成であったり、検索順位を上げるSEO事業であったり、SNSの運用であったり、オウンドメディアやアーンドメディアの記事作成などWebプロモーションにまつわるさまざまなことをサービス提供していますが、私たちはインターネット広告を専業としています。

特に私たちは中小企業向けにサービスを展開し、名古屋に本社を置きながら全国の中小企業のお客さまの案件の受け入れ件数は全国でもトップクラスになっています。

河合:なぜ中小企業向けのサービスなのですか?

堤:いまインターネット広告市場を広げているのは中小企業にもかかわらず、中小企業は大手広告代理店に仕事を依頼してもなかなか受けてもらうことができません。

大手代理店は大企業をクライアントにしたいからですが、大企業はすでにどこかの広告代理店に広告を依頼しており、それを取り合っていてもしょうがないなと。中小企業のサポートをしていった方が本当の意味で市場を広げられるんじゃないかと考えました。

インターネット広告市場はまだ年20%以上で成長する成長市場で、これは規模は小さくても数が非常に多い中小企業が伸ばしているんですよ。けれどもお金に余裕がない中小企業は大手代理店にはなかなか仕事を受けてもらえない、ならば私たちが救いたいと思ったんです。

河合:「中小企業を救いたい」、それがカルテットコミュニケーションズを設立したきっかけですか?

堤:はい。中小企業の支援にとてもやりがいを感じるんですよ。

大企業と中小企業ではお金の見方が違います。たとえば1億円の予算があったとき、大企業の中にはその1億円を「予算の数字」としか見ないところも少なくないです。「予算だから、あと100万、あと1,000万使ってしまおう」という感じで、大きなお金を使っている意識が薄いのではと感じるときがあります。

中小企業の場合、10万円だとしてもそれは社長の財布から出てきたお金に近いです。それをうまく使えないとお叱りを受けるし、うまく使えると非常に褒めていただける。私はその感覚が楽しいと感じるんです。

働き方改革で社員が働きやすい環境をつくるだけでなく、業界を盛り上げたい


河合:カルテットコミュニケーションズさんは、毎月全社員の平均残業時間を公開していますよね。これを始めたきっかけはなんだったのでしょう?

堤:数年前の大手広告代理店さんの労務問題で、働き方改革の風潮が起こったのがきっかけです。私たちの会社はもともと社員が働きやすい仕組みを整えていましたが、同じ業界の人たちがそういう状況にあるのに、何もしないのは良くないと思いました。

私たちが働き方改革の取り組みをうまく実行できてそれを周りに発信すれば、率先して広告代理店業界を盛り上げられると考えました。

河合:「残業時間の公開」以外に働き方改革として取り組んでいることはありますか?

堤:オフィス内にテントやソファを置いたキャンプエリアを設置していて、休憩したりカジュアルなミーティングに使ったりできます。また、宅配物の職場での受け取りができる「職場受け取り運動」を、私たちを起点として推進しています。残業時間が短い社員を賞与で評価するというユニークな制度もあります。

カルテットコミュニケーションズオフィスのキャンプエリア。堤氏へのインタビュー中、後ろのテントではミーティングがおこなわれていました。


河合:長時間労働のほか、堤さん自身が感じる広告代理店業界の課題はありますか?

堤:「広告の仕事は顧客の商品を売るまで」という認識がまだ業界に浸透しきっていないところです。

広告代理店業界はいまちょうど変わり目にあると思います。昔の広告代理店の仕事は広告を出すまでで、結果はそれほど追求されないことも多かったのではないかと思います。テレビでCMを流したら終わり、新聞に掲載されたら終わりだったんです。

ところが、インターネット広告が出てきて、ユーザー動向や実際にそこからお客さまが獲得できたかなどのデータが取れるようになり、広告の仕事は出してからが始まりになりました。集まったデータをもとに悪かったところは直して良かったところにはお金をかけて、商品を売るまでが広告の仕事になったんです。

とはいえ、テレビや新聞の市場はまだまだあり、その認識がまだ薄いところもあるので、もっと広めていきたいです。

河合:「広告の仕事は顧客の商品を売るまで」という認識を広めるにはどうすればいいのでしょう?

堤:私たちが小さい企業の少ない予算でも広告で商品を売って業績を伸ばしている、という事実を世の中に出していくことで、その認識が広まればいいと思います。

すべての中小企業を救うために、自社ツール「Lisket」はライバル社にも提供


堤:私たちの会社にはインターネット広告代理店と、もう一つ事業があります。「Lisket」というリスティング広告運用ツールです。

「Lisket」はもともと自分たちが欲しくて自社開発しました。中小企業などの小さな会社がお客さんだと、数を回さなければ利益を出せないので、とにかく無駄を減らさないといけませんでした。人間がやらなくてもいいことはツールに任せようと、社内にエンジニアを抱えて「Lisket」を開発し、普通の何倍も仕事が早く進むようにしたんです。

しかし、中小企業の数は本当に膨大で、私たちだけではすべての中小企業さんを救えません。そこで、ほかの広告代理店さんにも中小企業さんを助けるのを手伝ってほしく、「Lisket」を提供することにしました。

河合:ライバルに武器を渡すようなものですよね。なかなかできないことだと思います。

堤:私たちが率先して広告代理店業界を変えたいとは思っているのですが、自分たちの力だけでは厳しいです。ほかの代理店さんが「Lisket」を使ってくれて、私たちだけでは手の届かないお客さまを喜ばせてあげられたらいいですよね。そうすれば、結果的に業界全体も変えていけるのではないでしょうか。

河合:ライバルとはいえ素敵な関係ですね。「Lisket」を提供したほかの代理店の反応はどうですか?

堤:みなさん喜んでくれていますね。その要因として値段が高くないというのもあります。「中小企業を救うためのツール」なので、価格設定は高くしてはいけないと思っているんです。業界の中では似たようなツールはたくさんありますが、「Lisket」がダントツで安いです。ほかのツールは月5万円~ですが、「Lisket」は1万円~で提供しています。

河合:価格設定にも「中小企業のために」という考え方が反映されているんですね。

売上ではなく、お客さまに出せる結果にこだわりたい


河合:今後、カルテットコミュニケーションズさんはどのように展開していくのでしょう?

堤:中小企業の集客を助けるために最適な手段を提供し続ける会社でありたいですね。いまはリスティング広告がそのために最高のサービスだと思いますが、リスティング広告よりも良いものが出てくれば迷わずそのサービスを提供していきます。そうやって今後いろいろなことに挑戦していくと思いますが、カルテットコミュニケーションズの「小さなお客さまのために」という軸は絶対にぶらさないです。

営業の社員にも「お客さまがいくらやりたいと言ってくれていても、効果が出ないと思うのであればお断りしなさい」とよく言っています。どれだけお金を積まれてもお客さまに成果を出せない案件であれば、社内のチームも困るし、お客さまにも無駄なお金を使わせてしまうので。自分たちの売上に繋がらないとしても、私たちはお客さまに出せる結果にこだわりたいんです。

河合:目先の利益よりも長期的な視点で、お客さまがより幸せになる方を選んでいらっしゃるのですね。

最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

堤:名古屋はスタートアップ不毛の地と言われてきましたが、最近は名古屋にもスタートアップがたくさん出てきていて素直に嬉しいです。起業当初は僕も若者扱いをしてもらっていましたけど、もうかなり年下のスタートアップ経営者が大勢います。僕も彼らに負けないように、名古屋のスタートアップと言えばというときにすぐに名前が挙がるようにして、名古屋のITスタートアップ業界をもっと盛り上げていけたらいいですね。

スタートアップに興味がある人は、いまアツい名古屋のスタートアップ業界に飛び込むと面白いかもしれませんよ。東京をあっと言わせることは今の名古屋なら可能だと思っていますし、飛び込むのなら今はちょうどよい時期だと思います。

編集部あとがき

堤氏は取材中、繰り返し「中小企業のために」とおっしゃっていました。お客さまファーストでありながら社内では働き方を良くする仕組みを整え、ともに働く社員のこともしっかりと考えている印象でした。広告代理店業界、そして名古屋のスタートアップを盛り上げていくカルテットコミュニケーションズにこれからも注目です。

執筆=中原 愛海