Beyond Next Venturesは、意欲的な起業家の可能性を革新的な技術で成長させ、活用し、より良い未来と社会を構築するために彼らのアイデアの商業化をコアミッションに掲げています。中部エリアでは、起業希望者たちがスタートアップを立ち上げる前から専門的な支援をおこなっている点が特徴です。東海地区5大学による起業家育成プロジェクト「Tongali」を高く評価し、東海地区でもスタートアップの伴走者としてさまざまな個人・企業のサポートに取り組んでいます。今回は、東海地区でのベンチャー支援の取り組みやスタートアップへの評価について、お話を伺いました。
金丸 将宏|プロフィール
東北大学大学院理学研究科物理学専攻修了、グロービス経営大学院MBA取得者。
2006年4月に東芝入社。R&Dセンターにおける次世代光ディスクの研究開発やクラウドサーバー向けHDDの企画・開発・製造のリーダーを務める。2015年8月にDBJキャピタルへ入社し、技術系スタートアップへの投資に従事。2016年3月からはBeyond Next Venturesへ参画し、医療機器、エレクトロニクス、AI分野を担当しながら、アクセラレーションプログラムBRAVEの運営に携わっている。
技術系のスタートアップを創業前からサポート
―Beyond Next Venturesは技術系のスタートアップを支援する企業と伺っていますが、他のベンチャーキャピタル(VC)にはない特徴を教えていただけますか。
金丸:スタートアップのなかでも研究開発型は立ち上げに創業初期から多額の資金を要すだけでなく、綿密な事業計画を練らなければならないなど、創業のハードルが非常に高いのです。実際にプロトタイプを用意できないこともありますしね。そのようなスタートアップにも、創業前から特に経営サイドの創業メンバーを紹介し、事業化の支援をさせていただいているのが我々Beyond Next Venturesです。資金面だけではなく、チーム組成、事業プランのブラッシュアップなど、会社を立ち上げる前からお手伝いをしています。
―企業だけではなく、個人でも特定の領域のサポートもされていると伺っていますが。
金丸:おっしゃる通りです。弊社の中で、主にメディカル・AI領域内を中心にサポートを行っています。以前は東芝で研究者、エンジニアとして働いていました。その時の経験を活かし、研究フェーズから量産フェーズでの開発のポイントの支援などを行っています。
―名古屋で現在担当されている案件について教えてください。
金丸:現在担当しているのは、独自の電子ビーム生成技術である「半導体フォトカソード技術」をコアにした製品・サービスを創出しているPhoto electron Soul (フォトエレクトロンソウル)、名古屋大学発の異科接木技術iPAGなどを用いて新種苗の開発を実現し、次世代の農・食の創造を目指すグランドグリーン、そして月額料金だけでさまざまなジャンルのイベントに参加できるサブスクリプションサービスSonoligo(ソノリゴ) の3社です。
―こちらの3社それぞれの印象や出資を決めた理由について教えていただけますか。
金丸:Photo electron Soulは一番付き合いが長いのですが、代表の鈴木さんや技術シーズを開発した西谷さん、経営管理の田村さんが集まり、この分野にイノベーションを起こす熱い思いに共感していました。半導体フォトカソード技術 は一見地味な技術ではありますが、ソーシャルインパクトが大きく、他社であまり見ないところも惹かれた理由です。
グランドグリーンは、伝統的な技術にとどまっていた新品種の開発分野に新しい技術を取り入れ、イノベーションを起こすビジョンに共感し、ご支援を決めました。
Sonoligoは他の2社と異なるITサービス分野のスタートアップです。Tongaliプロジェクトで、遠山さんのプレゼンを拝見させていただき、その事業推進力に惹かれ、ご支援させていただくことに決めました。
我々は、事業プラン、技術だけでなく、どのようなメンバー、創業者か、という点も非常に重要視しています。その観点で、この3社はすべて素晴らしいチームだと思っています。
優秀な人材やプロジェクトが集結したTongali
―御社は東京に本社を構えていますが、なぜ名古屋のスタートアップに注目したのでしょうか。
金丸:大学発ベンチャーが盛り上がりを見せるようになり、東京、東北、京都、大阪と4つの国立大学が大学VCを立ち上げました。このなかに名古屋の名前がなかったことに驚いたのです。
起業家育成プロジェクトであるTongaliの活躍は、他の大学の取り組みと比較して、群を抜いて優れていますし、実際にレベルの高い人材が集まっていると感じています。本気で巻き込んで、巻き込まれる関係を作り上げ、先輩の活躍が後輩につながる流れができていますし、大学さえも巻き込んで、若い世代が本当に頑張っている印象です。そんな名古屋の起業家たちをサポートしたいという気持ちから支援を決めました。
―Tongaliのメンバーが聞いたら喜ぶと思います。現在金丸さんはTongaliでどのような活動をされていますか?
金丸:イベントでのメンタリングと、事業発表会での審査を主に行っています。また、学生チームと面談し、出資が決まってからも随時コミュニケーションを取るようにしています。創業後はもちろんですが、起業する前から伴走者として、さまざまな視点でディスカッションの仲間にいれていただいています。
―最後になりますが、今後のTongaliに期待していることをお聞かせください。
金丸:「エコシステム」という言葉がかなり前から言われていますが、今でも私はメンタリングだけではなく、エコシステムも大切と考えています。先輩から後輩へのアドバイス、有機的な人のつながり、成長過程で手が回らなくなったら随時サポートをする。そしてメンターとして、東海地区のつながりのネットワークを継続して広げていきたいと考えています。Tongaliの「1エコシステム、1ファクター」として関わることができたらとてもうれしいですね。今後は東京の人材の紹介や、次の段階へバージョンアップしていくお手伝いができたらと考えています。
―ありがとうございました。
編集部コメント
モノづくり関連企業が多いことで知られる愛知県では、技術系のスタートアップが今後増えていく可能性が十分にあります。そのときに、技術系の業界に知見があるVCの力を借りることで、事業計画がスムーズに進むようになるのではと、この記事を通じて感じました。東京に本社を構えながらも、日本各地のベンチャーに注目しているBeyond Next Venturesに今後も期待したいです。