「Tongaliプロジェクト」では、民間企業の協力を得ながら東海地区の学生起業家支援を行っています。日本ベンチャーキャピタル(NVCC)は、そんなTongaliを応援する企業の1つ。名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号投資事業有限責任組合(通称:名大ファンド)を設立し、大学発ベンチャーの起業支援からアントレプレナーシップ教育までをおこなっています。今回は、NVCCが東海地区でのベンチャー支援の取り組みやファンド設立後に感じたこと、今後の展望について、NVCC常務執行役員の北岡氏にお話を伺いました。
北岡 侑子|プロフィール
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科博士前期課程修了、大阪府立大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。明治乳業、日本アジア投資、バイオ・サイト・キャピタルを経て、2009年日本ベンチャーキャピタル株式会社(NVCC)入社。現在は常務執行役員を務める。
名大ファンドを立ち上げるきっかけ
ーNVCCの活動は関東や関西中心だと思いますが、名大ファンドを立ち上げるきっかけを伺ってもよろしいですか?
北岡:NVCCは、もともと大学発ベンチャーの領域でポートフォリオが多いことが特徴です。大学ファンドもいつくか立ち上げてきた中で、名大ファンドのお話を頂きました。それまでは、東海地区の企業への投資は関西・関東に比べると少なかったですね。
ーNVCCから見て、東海地区はどのようなマーケットに見えますか?
北岡:今でこそベンチャー企業がたくさん出てきていますが、ちょっと前まではメディアでも「ベンチャー不毛の地」と取り上げられていたことを覚えています。しかし、いくつかのベンチャー企業が成功している印象はあったので、ベンチャー企業の数が増えることで市場が盛り上がるイメージはありました。
私はバイオベンチャーが専門で、リサーチをする中で東海地区にもバイオベンチャーはいくつかあることも知っていました。規模が小さいフェーズでも、大手企業へEXITをしているバイオベンチャーもあって、興味のある地域ではありましたね。
ーNVCCは初期のTongaliにも協賛していますよね。どのような狙いがあるのでしょうか?
北岡:名古屋大学はじめ、東海地区の国立5大学は、Tongaliプロジェクトだけでなく、ギャップファンド(大学が研究者に対して、基礎研究と事業化の間にある溝を埋めるための資金を提供する)の仕組みを取り入れています。それらに協賛させていただくことで、この地域の大学発ベンチャーが生まれやすい環境を構築できたらと考えています。
また、Tongali主催のピッチコンテストの審査や、資本政策や資金調達のフォローなど、メンターとして起業家の方々と直接的に関わる機会が得られます。
名大ファンド立ち上げ後の変化は?
ー2016年にファンドを設立されてから設立当時と比べ、どのように変化していると感じますか?
北岡:がらりと変わりましたね。今では、市場で認知されているベンチャー企業の数も、実際の数もかなり増えてきているのではないでしょうか。名大ファンドへの出資を募っていた当時、「名古屋にベンチャー企業はない」「名古屋は雇用も足りていて、税収もあるのでベンチャーを支援する理由がない」とあちらこちらで言われました。
ただ、名古屋大学の方は当時から危機意識を持っていて、「日本の大企業も世界からシーズを集めているから、我々も世界と戦わなければいけない」と熱意を持って協力してくださいました。
ー東海地区での投資や支援を通して、市場に期待していることなどはありますか?
北岡:東海地区は、土地柄的にものづくりが強いです。ものづくりをしている横でベンチャーをつくるので、最近活躍している東海地区のベンチャー企業は、アイディア勝負の起業は少なく、むしろ堅実な事業プランを考えているなと感じています。なので、「地に足のついたベンチャーブーム」が起きて欲しいなと思っています。
ー最後に、NVCCが東海地区で活動していく上での、今後の展望があれば教えてください。
北岡:まずは、この1号ファンドを成功させて、東海地区はしっかり利益を出せるベンチャー企業が多いことを体現したいと思います。現在、2号ファンドはBeyond Next Venturesさんが携わっていますが、1号が成功した暁には、3号に手を挙げることも考えたいと思っています。
地元の方々もベンチャーの必要性を理解してくださるようなり、どのようにベンチャーを支援すれば良いかと、問い合わせもいただいています。安定思考な方が多い土地柄であるとよく言われる中で、チャレンジしていける環境をつくっていきたいです。
ーありがとうございました。
編集部コメント
東海地区では近年、ベンチャー企業の数が増加しています。その背景には、名大ファンドの設立やアントレプレナー教育といった環境が整備されたからだと、この記事を通して感じました。東海地区のベンチャーを取り巻く環境がどのように変化していくのか、今後もTongali、NVCCの活動に注目です。