世界の最適化プラットフォーマーを目指して|名大発・物流AIベンチャーの株式会社オプティマインド代表 松下氏にインタビュー

投稿者: | 2018-10-06
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昨今の東海圏の大学発ベンチャーには、怒涛の勢いがあります。東海地区の学生起業家支援を行う「Tongaliプロジェクト」では、そんな大学発ベンチャーを創出するべく活動を続けています。

今回は、名古屋大学発ベンチャーの中でも注目を集める、物流AIベンチャー株式会社オプティマインドの代表取締役・松下 健氏にお話を伺ってきました。同社は、2018年6月に日本郵便オープンイノベーションプログラムで最優秀賞を受賞。資金調達や事業提携も経て、名古屋の中でも勢いのあるベンチャーです。

松下 健|プロフィール

1992年生まれ、岐阜県岐阜市出身。名古屋大学情報文化学部を卒業し、名古屋大学大学院情報学研究科博士前期課程修了、博士後期課程に在籍中。専門は組合せ最適化アルゴリズム、特に物流の配送計画問題の研究。2015年に合同会社オプティマインドを創業。オプティマインドでは、経営全般、営業、サービス設計、最適化アルゴリズム設計などを行なう。

世の中の役に立つ「最適化」に惚れ込み、起業したけれど……

若目田:オプティマインドの主要事業について教えてください。

松下:「ラストワンマイル配送」を行う事業者さんの、ルートを最適化することです。具体的には、どの車がどの荷物を持ち、どの順に配送すると最も効率がいいかを計算する人工知能を開発して、それをクラウドサービスに乗せて提供しています。

若目田:「ラストワンマイル」とは、何でしょうか?

松下:「ラストワンマイル」は、“最後のお客さんに届くまで”という意味での“ラストのワンマイルまで”ということです。宅配の荷物なら、お客さんに届くまで。その他なら、例えば自動販売機だとお客さんにジュースが届くまで。お酒なら、居酒屋に卸し、そこでお客さんがビールを飲むまで。倉庫間輸送ではなく、倉庫からお客さんの手に渡るまでの配送からを手がけている事業者のことを、「ラストワンマイル配送業者」と言います。

若目田:ありがとうございます。在学中に起業されて、現在で何期目ですか?

松下:大学院1年のときに起業して、現在は4期目ですね。

若目田:起業するまでの経緯を教えてください。

松下:もともと、大学1年生のときに「最適化」という学問に出会って、世の中のためになる学問だなと感動したんですね。そして研究室に入り、研究していく中で、これは本当に世の中の役に立つのか?という疑問が生じて。研究が進む一方で、現場は進んでいないのではないかと思ったんです。

そこで、いろんな会社さんをまわって、“最適化”をしているかどうかのヒアリングをしたんです。すると、案の定されていなくて。研究が進めば、自分の学問が役に立つと思って研究室に入ったのに、全然役に立っていないという事実にすごくショックを受けました。それで、自分の力で何かしたいと思うようになったんです。

若目田:そこが始まりだったんですね。

松下:そうですね。それから、ちょうどそのタイミングでドイツに留学することになって。いろんな国の人が集まるインターナショナルスクールのようなところで、いろんな出会いがありました。40歳で絵描きを目指す人、イタリア人で起業の夢を語る人。自由な人生でいいんだと気づいたし、カッコいいなと思いましたね。

若目田:留学から戻られて、その後は?

松下:大企業に入りたいなと思っていました。でも入社して、そこで40歳の自分が何をやっているかと想像したときに、全くワクワクしないなと思って。何がやりたいんだろうと考えたとき、自分が惚れ込んだ「最適化」で、学術的な部分と現場の人の橋渡しのような存在になりたいなと思ったんですよ。人と喋ることも好きなので。お客さんから仕事を取るためには、会社を作らないといけないと思っていたので、仕事がある前に会社を立ち上げました。

若目田:それが大学院1年の頃の話ですよね。

松下:そうです。そこから1年間、物流会社さんや製造会社さん、農業などを回りました。若者1人とドクターの中国人との2人で行って、うまくいく訳もなく。1年間は利益ゼロでした。

若目田:起業当時のメンバーは、どのようにして集めたんですか?

松下:博士課程の3年生にいた中国人の人を「一緒にやろうぜ!」とハンティングして、最初は2人でやりましたね。私自身、まだ学部4年が終わったばかりだったので、専門的な知識もないし、自分でシステムが作れなかったので。

本当にやりたかったことにたどり着くまでの長い道のり

若目田:現在は4期目ですよね。1年目以降はどうなったんですか?

松下:パートナーも私も、利益がない状態にお互いイライラし始めて。会社を立ち上げてしまっているので、売り上げを立てないといけませんよね。なので、今とは全然関係ないビジネスの可能性を探り始めました。

若目田:どんな事業を考えていたんですか?

松下:学生が、授業中にスマホで“分からない”というボタン押すと、先生の方にグラフが出て、何人がわからないと思っているのかを確認できるというシステムを作ったんですよ。

若目田:……本当に関係ないですね(笑)。

松下:パートナーは結構ポジティブなので、「いいじゃん!それ世界取れるよ!」と言っていて、自分も「これマジいけるじゃん!」と思って(笑)。開発していたら半年ほどたち、ちょうどそのときに開催されたキャンパスベンチャーグランプリに出場しました。そこで、中部の2位になったんですよ。これはいける!と思いましたね。ちなみに、サービス名は『Re:act』です。“リアクションしろ”という意味で。

そのときに、今の副社長の斉東と出会ったんですよ。キャンパスベンチャーグランプリの表彰式で、隣にいたのが斉東だったんです。意気投合して、『Re:act』を一緒にやろうぜ!と誘い、チームを組みました。斉東と私にはそれぞれパートナーがいたので、4人チームでやり始めました。

若目田:そこから、『Re:act』はどうなっていったんですか?

松下:やり始めたはいいけど、売り上げが全然立たなくて。斉東のパートナーが抜けてしまい、3人になってしまいました。そこから新たに始めたのが、授業中にアプリを起動して、スマホを見なかったらポイントが貯まってビールが飲めるというサービスです。

そのほかにもありましたが、簡単に売り上げが立つ訳もなく、2年ぐらい経ってしまって。これはまずいなというタイミングで、大企業から4次下請けの開発の仕事がきたんです。3ヶ月で終わるからと言われていたのですが、かなりヘビーなものだったので、思いの外時間がかかって。結局1年以上経って、その間に私のパートナーが抜けて大学教員になり、残ったのが斉東と私です。

そのあと、現CIOの高田が入ってきました。高田は、私と同じ研究室の2つ上の先輩で、優秀なんですよ。大学に戻ってくる前は、大手企業でソフトウェア開発をしていました。

若目田:心強い存在ですね。

松下:オプティマインドに“ブレイン”が加わって、それぞれの強みが揃ったので、これからもやっぱり「最適化」をやりたい、自分たちの強みはこれだよねと。

若目田:いろんな紆余曲折があって、今に至った訳ですね。

松下:そうですね。ルート最適化をやり始めたのが、3期の夏頃なので。

若目田:これまで、地道に、貪欲にやってこられたんですね。松下さんとは結構お会いしていたんですけど、そこまでは聞けていなかったので、今回こういうお話が聞けて良かったです。

在学中に起業したことがもたらしたメリットとは?

若目田:在学中に起業して良かったこと、今に繋がっているようなメリットがあれば、教えてください。

松下:学生で起業することのメリットは、まず何よりもリスクがないことと、そのうちに経験をたくさん積めること。あと、お客さんのところへヒアリングに行くとき、会社を名乗って行ったら門前払いだったのですが、大学名を名乗ったら受け入れてもらえて。「名古屋大学の学生で、市場調査をしていて」と言ったら、社長室に連れて行ってもらえたこともあって(笑)。学生というのは、すごく武器になるかなと思います。

あと、全学教養や授業も含めて、基本的に学生は受動的だと思うんです。でも、自分たちで会社をやり始めると、課題や自分たちに足りないリソースに気づいて、能動的に学ぶようになってくるんです。役に立たないと思っていた授業が、欲しい!今すぐ勉強したい!と思うようになって、学ぶ姿勢もすごく前向きになりますね。

5月に行われたイベントでの一コマ。左から橘川氏、松下氏、長江氏

若目田:松下さんは、リーディングプログラム(優秀な学生を産官学にわたりグローバルに活躍するリーダーとして養成する、博士課程前期・後期一貫の学位プログラム。松下氏は実世界データ循環学リーダー人材養成プログラムの履修生)にも参加されていましたよね。

松下:リーディングプログラムは、とてもメリットがありますね! 海外研修に行けますし、東京出張もいっぱいあるので、多くの優秀な学生と繋がれます。世の中はこう動いているんだということを、結構俯瞰的に見られるかなと。

若目田:そこで何か影響や刺激を受けたり……例えばライバル視していた人がいたりして?

松下:トライエッティングの代表で大先輩の長江さんもいらっしゃいますし、マップフォーの橘川さんもいますし、リーディングプログラムとしても武田先生がティアフォーの社長だし。そういったところで、起業やハイテクに関しての影響力はありましたね。

若目田:松下さんは、大企業に就職したいと思っていたこともありますよね。その気になれば、どこにでも就職できていたほどのエリートだと思います。そういった意味で、デメリットを感じることはなかったですか?

松下:そうですね、一度、社会人経験を積んでも良かったのかなというのは、今さらながらありますね。例えば、売るときに予算を獲得するためには、どういう部署の人に話をしたらいいのか、どういうコネクションが必要なのか。そういった“大人の世界”の構造を知らずに探り探りやっていたので、その分時間がかかってしまったのかもしれないとは思っています。

世界の最適化プラットフォーマーになり、ゆくゆくは“ポジティブの輪”を広げたい!

若目田:起業してから今まで、いろんな紆余曲折を経てきましたよね。今は、本当にやりたかった「最適化」に戻って、実際にいろんな会社さんと事業提供されたり、表彰されたりしています。うまく軌道に乗り始めた要因や理由があれば教えください。

松下:一番は、やはり日本郵便オープンイノベーションプログラムに応募して、最優秀賞をいただけたことです。でも、そこに至るまでも、いくつかネットワークづくりはしていて。キャンパスベンチャーグランプリのように、学生コンテストの小さなものでも、そういうところに意外と名古屋のドンみたいな方が集まっているじゃないですか。そういう方々と知り合っておくことが重要だったかなと思います。そこでの縁から、いくつか紹介してもらったりもして。

あとは、大学の先生に“起業しましたアピール”をしていたので、先生経由で会社を紹介してもらうこともありましたね。それで、少しずつ売り上げが立ってきたので、そこもやはり重要だったかなと。でも、大きなターニングポイントは、やはり日本郵便での受賞かなと思っています。

若目田:松下さんの強いところは、きっかけを最大化するというか、使えるものは何でも使うぞというところかもしれませんね。

松下:(笑)

若目田:そういうマインドは、どこで培ってきたんですか?

松下:わかりません(笑)。でもみんなを巻き込みたいとは思っているので。“ポジティブの輪”を広げるのは、自分の喜びの一つです。「僕ができるならみんなできるぜ!今のうちに行けー!」みたいな感じが好きですね。

若目田:そういう生き方をされてきたんですね。では、最後の質問です。今年6月に資金調達されて、9月には東京海上日動さんと事業提携されています。資金調達するということは、その領域を広げたい、事業を大きくするためにやっていると思うんですけど、これから実現したい世界観があれば、教えてください。

松下:日本だけではなく、世界にも進出したいです。その中で、あらゆるものが動くラストワンマイル現場を、自分たちのアルゴリズムで最適化したいですね。それを最大限の使命として、派手な改善ではなく、かつ派手なBtoBのビジネスじゃなくても、数%の改善でもいい。自分たちが、世の中のためになったという絆の波及効果を大きくすることが、私たちが一番目指している存在価値ですね。

自分が目指す姿はそこだし、その先はもう人が動くところの最適化プラットフォーマー、インフラ的な存在になりたいなと思っています。会社がある程度成長した10年後はどうなの?と言われると、名古屋から日本、世界に“ポジティブの輪”を広げたいですね。

編集部コメント

オプティマインドのめざましい発展の裏には、知られざる紆余曲折のエピソードがありました。現在、オプティマインドではインフラエンジニア、営業、CFOを募集中です。気になる方は、ホームページからぜひお問い合わせを!

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