【特集】Tongali × 東海東京証券|東海東京証券が目指すベンチャー支援の形とは?

投稿者: | 2020-01-16

東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社は、グループ会社である東海東京証券株式会社東海東京インベストメント株式会社をはじめ、中部地区のベンチャー企業の育成から上場までのサポートをおこなっています。地域貢献の一環として、オープンイノベーションに基づく研鑽の機会を提供するための任意団体「中部オープンイノベーションカレッジ」の立ち上げや、東海地区5大学による起業家育成プロジェクト「Tongali」に初期の段階から協賛するなど、東海地区で精力的にベンチャー支援をされています。今回は、東海地区でのベンチャー支援の取り組みや今後の展望について、お話を伺いました。

阿部 剛久|プロフィール

1967年生まれ、1991年に名古屋大学卒業後、東海銀行(現在の三菱東京UFJ銀行)入行。1998年セントラルキャピタル(現在の三菱UFJキャピタル)へ業務出向後、2006年東海東京インベストメント設立メンバーとして東海東京証券へ入社。現在は、東海東京インベストメント株式会社 常務執行役員・投資部長を務める。

東海東京証券がベンチャー企業にできること

ー東海東京証券における、ベンチャー企業との接点はどのようなところにあるのでしょうか?

阿部:親会社は、東海東京フィナンシャル・ホールディングスという会社で、様々な顧客ニーズに応える金融機能を持った各会社が傘下に入っています。そして、その中で中核となるのが名古屋に本店を置いている東海東京証券です。東海東京証券では、法人・個人のお客さま向けに各種運用ニーズに応える業務をおこなっています。ベンチャー支援の分野では、名古屋企業開発部というのがありまして、未上場企業が上場するときのお手伝いをさせていただく部署になります。

上場した後も、ベンチャー企業の資金調達や事業規模拡大に必要な販路拡大支援・M&Aなどソリューションを提供する企業金融部門があります。他にも、法人の方々の運用ニーズに応える法人営業部門など、いくつかの部署に分かれています。私が所属しているのは、東海東京インベストメントという世間一般でいうベンチャーキャピタルの業務を行うグループ会社です。

成長期待が高く、社会的に意義のある事業をされている経営者を応援し、リスクを積極的にとりにいき、資金調達のお手伝いや上場まで事業をスケール化するための販路開拓、ビジネスパートナーを探すといった機能があります。その後、育っていったベンチャー企業が上場する際に、東海東京証券にバトンタッチをし、いい形で上場していただくというのが弊社グループの一つの流れになっています。

ー最初の段階から、上場までをサポートされているのですね。

阿部:そうですね。上場された企業については、法人営業部門が担当し、安定した株主作りや、ファンを作るといったIR支援の一環としてリテール営業部門も協力します。中部地区の方は、非常に堅実な投資家が多い印象です。この投資家の方々にしっかりとした資産形成ができるように、将来性の高い企業の株式を紹介し、一方で上場された企業の株主作りなどのお手伝いをさせていただきたいと思っています。

中部オープンイノベーションカレッジでの活動内容と経緯

ー中部オープンイノベーションカレッジでの活動内容や、今までの経歴を伺ってもよろしいでしょうか?

阿部:2016年に、地元のベンチャーマインドの高い、組織として大きくなろうとしている会社の経営者の方々とコアメンバー会議を立ち上げました。そして、その企業の経営者の方々にときどき集まっていただき、中部でオープンイノベーションが進むよう学びの場を作っていこうと設立したのが中部イノベーションカレッジです。カレッジの設立後、1年かけてコアメンバーの方々と方針を話し合いました。

2017年に第1回オープンイノベーションセミナーを東海東京証券オルクドールサロン名古屋で開催しました。経営者の方々や大学の産学連携の窓口の方や先生・学生さんも大勢来ていただきました。規模でいうと、6、70名くらいのイベントです。産学連携やオープンイノベーションの大切さを国立研究開発法人 科学技術振興機構 理事長 濱口 道成氏に基調講演で語っていただき、その後は、参加者の皆さんでオープンイノベーションについて議論をし、最後に懇親していただくというような内容でした。

Tongaliの河野先生や未来マトリクスの宇治原先生にも中部オープンイノベーションカレッジのコアメンバーに入っていただき、産学連携やオープンイノベーションに関わる様々なアドバイスをしていただきました。名大農学部発ベンチャーとしてグランドグリーンを起業された野田口先生や、名古屋大学発学生ベンチャーとしてトライエッティングを起業された長江さんにもプレゼンをしていただきました。このような大学の研究シーズをベースに新しく起業された方々を、いち早くオープンイノベーションに関心がある企業の皆さんにご紹介をさせていただくのも中部オープンイノーベーションカレッジの活動の1つなんです。

プロモーションという言い方が正しいか分かりませんが、大学発ベンチャー創出など大学でのこのような取り組みを、オープンイノベーションに興味のある企業の皆さんにご紹介できる場を作ってきたことが、中部オープンイノーベーションカレッジの最初の活動でしたね。

ー現在に到るまで、どのように中部イノベーションカレッジは変化してきましたか?

阿部:最初に立ち上げたときは、企業経営者の方々が多いイメージでした。2018年に月例の勉強会形式に変えてからは、各企業でオープンイノーベーションに携わっている現場の方々に声をかけたところ関心を持っていただけましたので、それからは新規事業やオープンイノーベーションに携われている方々も来られるようになり、テーマによっては1社から何人も来られるなど、参加者の顔ぶれは幅広く変わっていきましたね。

最近では、Tongaliさんや名古屋大学など大学発のベンチャー企業といった、若い起業家の方も来られるので、かなり参加者の年齢層にも幅がでてきました。

ーTongaliに初期の段階で協賛していた背景を伺ってよろしいですか?

阿部:中部地区でイノベーションが生まれるためにも、名古屋大学ほか技術系の学部学科を持っている教育研究機関を応援していかなければならないと思っています。東海東京フィナンシャル・グループは金融機能だけでなく財団組織があるので、地元地域経済基盤の活性化という観点だけでなく、社会貢献や地域貢献という観点でもTongaliの活動初期の段階から支援させていただきました。

現状の課題とベンチャー界隈で実際に感じること

ーありがとうございます。現状の課題や、感じていることがあれば教えてください。

阿部:1つの例として、学生のアントレプレナーシップ教育を目的とするTongaliの取組ですが、初期の頃は「学生の自分達でも事業を起こせるんだぞ」という、比較的熱量の高い人達がTongaliに集まっていました。相談を受けてアドバイスをすると、次会うまでにPDCAを回して来る熱意のある学生さんも居ました。実際に、当時起業された方々を見てみると、一般の起業家と同等に目線をあげて取り組んできた学生はリアルなビジネスとして世の中にちゃんと出て来ています。そして、我々もそのお手伝いができると思っています。

しかし、最近少し気になっているのは、参加する学生は増えて、活動自体も広がっている中で起業に対する熱量、リアル感は幾分薄まってきているのではないかと感じます。それは違うと思われる方も居ると思います。私も、ビジネスプランを組み立てる道筋を学ぶアントレプレナーシップ教育という意味では現在も十分に目的を果たしていると思います。ただ、社会の課題を解決するために、私自身が取り組まなければ誰がやるんだ、みたいなリアルなビジネスを立ち上げる学生さんが最近のTongaliには少なくなったような気がするという点で、以前より少し熱量が下がっていると感じます。大学に居るうちに自分で事業を起こし、卒業してからもその事業を続けるという学生さんが減っているのか、Tongaliの活動に関心を持つ学生の数が増えたために、リアルな起業を志す学生さんが薄まって見えるのかは分かりませんが。

社会の課題解決にやりがいを感じてTongaliなどの活動に取り組んでいる人達を引き上げ、また、そのような人たちが増えていくような試みを仕掛けていきたいと思っています。どこの企業に勤めても十分に活躍できるような優秀な学生さんに闇雲にリスクを取らせて、ベンチャーの世界に飛び込めと無理に背中を押すことはできないので、そこは我々も大人として責任を持ち、よく状況を見ながら応援していきたいです。

ー大企業の中でオープンイノベーションを推進していこうとしている方々についてはどう思われますか?

阿部:中部地区の方は、東京や大阪の方と比べて少し大人しく、慎重すぎるように感じます。なごのキャンパスやナゴヤイノベーターズガレージなど新しい試みによるビジネスの交流の場はできてきていますが、そこに集う方々の外と繋がろうとする積極性が幾分弱いように感じています。他の企業の同じようにオープンイノベーションを推進する立場の人が、業界の垣根を越えて積極的に連携するような意識がないと、オープンイノベーションはなかなか進まず、いいものは生まれないと考えます。

この地区には、私どもの中部オープンイノベーションカレッジだけでなく、産学連携やオープンイノベーションの推進、企業間マッチングを目的とするイベントがそこかしこで開催されるようになってきました。もっと外に視野を広げる意識を持ち、もっと知識やネットワークを求める意識を持てば、中部地区のイノベーションは様々な分野で加速していくと思います。

今後の展望について

ー最後に、今後の展望について教えてください。

阿部:ベンチャーの観点で言えば、この中部地区の経済基盤の活性化につながるような事業に挑戦し、やる気がある人を応援していきたいと思っています。オープンイノベーションというのは、大学やベンチャーと大企業側の双方にメリットがあります。

金融というのはビジネスを繋いで、そこで必要となるファイナンス活動を通して商売をしているので、ビジネスが動かないと商売にならないという下心は勿論ありますが、中部地区のオープンイノベーションの推進によりイノベーションが起こり、新しい価値を生むビジネスが育まれるように、これからも活動していきたいと思っています。

ベンチャーのエコシステムという観点で言えば、私が中部オープンイノベーションカレッジでやりたいことは、大企業で新規事業をやっている人達と、新しく出てきたベンチャーの技術を結びつけ、事業として成り立たせることです。それが、私達の課題であり責任だと思っています。

これは見落としがちですが、中部地区においてスタートアップ支援やアクセラレータプログラムが充実し、起業したい方にとって良い環境が整っていますが、起業した後の支援がまだまだ十分ではないということです。事業であるからには、モノやサービスが売れて初めて事業と言えるわけで、売り上げがない状態では、いくら会社にお金を入れても次から次へと溶けていってしまいます。それでは事業は育たないので、まずはファーストユーザーを作り、信用力になるような企業と提携していくことで、ベンチャー企業の商売のサイクルを回していきたいと思っています。

ー確かに、ベンチャーのアーリー&エクスパンション・ステージのサポートの部分が弱いと感じることは多いですね。

阿部:そうなんですよね。中部地区において相応の販売先を確保できないと、名古屋で育ったベンチャーが東京に行ってしまうという、現状の課題を解決できません。マーケットは東京の方が巨大なので、どうしても効率よく売り上げを立てようとすると東京に出て行ってしまう。中部地区でファーストユーザーがつき、ユーザーを複数獲得できれば、ある程度の規模まで名古屋で活動してもらえると考えています。

地元で経営基盤ができると、名古屋に本社を置いたまま東京に営業を出すという形になるので、本社を東京に持って行かれることはなくなると信じています。なので今後は、中部で経営基盤を作るためにユーザーを獲得して売り上げを作る支援を行っていきたいです。我々だけでできることではないので、ベンチャーをサポートする皆さんと協力して中部地区を盛り上げていきたいと思います。

ーありがとうございました。

編集部コメント

東海地区では近年、ベンチャー企業の数が増え、環境も整ってきています。しかし、事業が育ち上場するまでの間に多くの課題が存在するのだと、この記事を通して感じました。地元にベンチャーの経営基盤を作り、多岐にわたり活動されている東海東京証券に今後も注目です。