中部経済連合会・大学(Tongali)、愛知県・名古屋市などのスタートアップ支援を行う産学官がタッグを組んだ一大イベント「TOCKIN’ NAGOYA(トッキンナゴヤ)」が、2022年2月22日(火)・23日(水)にオンライン開催されました。そんなTOCKIN’ NAGOYAの初日に注目を集めたプログラムが、「Tongali DemoDay2022」です。Nagoya Startup News編集部では、デモを披露したイノベーターらの模様を取材しました。
取材協力:Tongali運営事務局
文:鈴木
編集:若目田
Tongali DemoDay2022とは?
東海発アントレプレナーシップ教育起業家支援プログラムのTongaliでは、東海地区の大学を中心に様々なプログラム・イベントを運営しています。Tongali DemoDay2022では、2021年度に開催された「Tongaliビジネスプランコンテスト2021」「Tongaliアイデアピッチコンテスト2021」の入賞チーム、そして産官学連携ものづくりプラットフォームである「未来マトリクス」の学生が一堂に集まり、ピッチを行いました。
コメンテーターには、新生企業投資株式会社インパクト投資チームシニアディレクターの高塚氏、一般社団法人世界経済フォーラム第四次産業革命日本センタースマートシティ プロジェクト長の平山氏、ナレッジネットワーク株式会社代表取締役森戸氏が登場。約2時間の濃密なビジネスイベントとなりました。
未来マトリクスによる発表
未来マトリクスによる発表では、計3チームがそれぞれ取り組んでいる事業について紹介されました。未来マトリクスは、学生のアイデアと企業の技術をつなぐことで、未来のモノづくりを目指しています。学生のアイデアはどのような可能性を秘めているのでしょうか。
越川さん(写真左)は、ご自身が代表を務める「エドギフト」の取り組みについて紹介。「エドギフト」は、想像を楽しみ、人とつながる社会を目指し、木製立体パズル「TEGUMII」を制作し、子どもたちに提供しています。今後の展望としては、テグミーが、子どもたちだけではなく、すべての人のコミュニケーションツールとなることと語りました。
夏目さん(写真中央)のチームが取り組む「IKIOI」は、クリエイティブな会議を支援することをミッションに掲げた、想像的会議支援システム(CMS)です。今後の展望としては、クリエイティブな会議の評価軸を再検討する必要があると語りました。
杉浦さん(写真右)のチームが推進する「Sugar」は、オンライン授業は集中できないという課題に着目。二人で授業を受けることでその課題は改善するとの仮説を立て、一人で授業を受ける人と、ペアワークを実施する人の2パターンを検証しました。結果としては、ペアワークを実施したほうが授業内容に興味が湧き、集中できることが分かったといいます。今後の展望としては、勉強自体への興味を高めるものを開発していきたいと語りました。
アイデアピッチコンテスト入賞チームによる発表
続いて、Tongaliアイデアピッチコンテスト入賞チームの発表が行われました。計6チームが、生み出したアイデアについて、それぞれ紹介されました。どのチームも全く異なる観点からアイデアを創出しており、ユーモアに溢れた内容となりました。
細川さん(写真左上)は、メンバーとして参加している「HITOSIA」の取り組みについて紹介されました。「HITOSIA」は、心の健康は何よりも大切であるという考えのもと、個人、家庭環境、経済の三つの点から、世界を良くしていくことを目指しています。今後は、自身が参加しているメンタルコンパス会社のサービスを伸ばしつつ、他のメンバーとも議論を重ねていきたいと語りました。
夏目さん(写真中央上)は、「捨てられるアートに新しい価値を!」をテーマに活動する「SODATTE」について紹介。日本でアートが身近になっていないことから、捨てられるアートがあるといいます。そこで、芸大生がアートをSODATTEに投稿、SODATTEがアートをデザインとして利用、そのデザインを商品化して販売するという流れを作っています。今後は、伝統工芸品とコラボや、仮想空間メタバースに参入することで、アートを楽しむ文化を作りたいと語りました。
渡會さん(写真右上)は、ご自身が、助産師のお母様とともに手がけている「妊婦さん・産婦さん向けの動画配信サービス」についてプレゼンを展開。アニメーション動画を使って、妊娠中や産後の不安の解決を目指しています。発表で紹介があった動画では、頻回授乳について取り上げています。今後は、少子化をなんとかしたいという思いのもと、育児にかかる時間を減らすサービスを提供したいと語りました。
杉江さん(写真左下)は、「教師のまなびば」としての3つの場について紹介しました。出会いの場となるイベントを開催し、気になる先生どうしで話すことのできるオンライン談話室を設置、つながる場として授業準備プラットフォーム「JUST10min」を提供するとのことです。小学校4年生のときの担任の先生に人生を変えてもらったという杉江さんは、ご自身も小学校の先生になることを目標とされています。今後は、教育実習でのデータを蓄積し、現場で求められていることを見極めていきたいと語りました。
山田さん(写真中央下)は、早朝の朝ごはん宅配事業「RooMo」について紹介しました。「RooMo」は新聞配達網を使って、朝6時に朝ごはんを置き配するサービスです。朝ごはんとして、付近の人気店舗やホテルのパンを提供し、調理時間10分と片付け5分の計15分を忙しい朝にお届けすることで、朝の時間のゆとりを創出しています。この事業は、ビジネスモデルとして構想しているもので、ご自身の修士論文となる事業計画書を提出されたとのことでした。
長谷川(写真右上)さんは、高卒就活に革命を起こす「ハイハイjob」について紹介しました。「ハイハイjob」は、高卒就活の不自由さや中小企業の人材不足解決を目的とした、高校生と企業をつなげるリクルートサービスです。また、ビジネスマッチングも行っていて、月額制でマネタイズを行うとし、実際に、中小企業へのインタビューを実施しています。ビジョンとしては、中小企業の魅力を発信し、企業の課題を繋がりによって解決することを掲げていくとのことです。
ビジネスプランコンテスト入賞チームによる発表
休憩を挟み、最後に行われたのは、Tongaliビジネスプランコンテスト入賞チームの発表です。計5チームが、生み出したビジネスプランについて、それぞれ紹介されました。先ほどのアイデアピッチに比べ、実際に、自らの考えを実現し、成果を出しているチームが多く見受けられました。これからどのようなビジネスを展開したいと考えているのでしょうか。
ワディウトさん(写真左上)は、自律走行と機械学習の融合で、ビジネスサービスを最適化する「FAINZY TECHNOLOGIES」の取り組みを発表。「FAINZY TECHNOLOGIES」では、労働人口の減少や非接触が推奨される背景と、ロボティクス市場が大きく成長していることに着目し、自動運転配膳ロボットを提供しています。名古屋大学や大名古屋ビルヂングでの実証実験を実施したとのことです。売上計画として、1年目は100台稼働、2~3年目では500台稼働を目指しています。
今井さん(写真中央上)は、「Mermaid’s wineglass 〜海に咲く一輪の海藻のビジネス転用〜」をテーマに発表しました。Mermaid’s wineglassは、大きく美しい花(傘)がつく、沖縄県に生息する海藻であるカサノリのことで、準絶滅危惧種に指定されています。自然界では人工栽培できないとされていましたが、今井さんの技術で、人工栽培と促成栽培に成功しました。カサノリの新しい活用方法として、食材としての提供を目指し、煎餅や佃煮に混ぜることを検討しています。
竹本さん(写真右上)は、フルーツ由来酵母による発酵製法「Fruit Yeast COFFEE」と味覚評価プラットフォーム「みんながバリスタ」について紹介。2つのソリューションで、これまでのコーヒー概念を覆す新しい製造・評価サービスを提供します。「Fruit Yeast COFFEE」は、コーヒー生豆にフルーツ由来酵母を合わせることで生まれる製品です。「みんながバリスタ」は、1つの商品をみんなで評価することで、味覚の近いバリスタからのおすすめを表示できるようになります。活動内容としては、「Fruit Yeast COFFEE」の販売を行い、累計500杯の売上を達成しました。今後は、大規模生産に向け、生産拠点を開業していくとのことです。
鈴村(写真左下)さんは、学生と福祉をむすぶ情報サイト「musbun」についてプレゼン。「musbun」は、新しいことに挑戦したくても行動に移せない学生と、多くの学生と繋がりたくても有効な手段がない福祉事業所に着眼して生まれたサイトです。サイトで学生が検索・応募し、福祉事業所が募集登録をすることで、両者をむすんでいます。実証実験を行い、見えた課題として、「福祉に関心の薄い学生に参加してもらうことに苦戦している」「福祉事業所の人気度に大きな差がある」「募集記事掲載料を5,000円/月にしたいが、事業性が高いとはいえない」という3点を挙げられました。
藪内さん(写真中央下)は、近くのカフェ・喫茶店で新しい出会いを簡単に見つけることが出来るサービス「Caffet」について発表しました。「Caffet」は2つのサービスを提供しています。1つは、日時と場所を自動的に決定し、交流会をセッティングし、ユーザーに自動で招待状を送るサービス、もう1つは、加盟店のコーヒー1杯と交換できるチケットを提供するサービスです。また、ラフ機能を使うと、同世代・同地域のユーザーを特定し、ランダムに抽出し、招待が届いたら、そこに参加するかを決定することができます。オンライン化によって人との出会いが減少しているなかで、主体的に動くことのできない若者を救うサービスとなっています。
編集部まとめ
TOCKIN’ NAGOYA自体が急遽オンライン開催変更になったにも関わらず、当イベントには数百人を超える多数の視聴者が集まっていました。ここ数年、Nagoya Startup News編集部でTongaliの動向を追い続けて来ている中で、Tongali発のアントレプレナーの活躍には注目が集まっています。そして今回のTongali DemoDay2022でも、次世代で活躍するアントレプレナー人材が生まれる瞬間を目の当たりにすることができました。
併せて読みたい
Nagoya Startup Newsでは、東海地区5大学のTongali運営事務局を取材します。これまで取材した運営事務局の記事もぜひご覧ください。
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