【特集】技術をもとにチームで起業する|Tongali運営事務局 東海地区5大学をインタビュー #名古屋工業大学編

投稿者: | 2022-03-15
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これまでNagoyaStartupNewsでは東海地区の大学による起業家育成プロジェクト「Tongali」に携わる経営者・起業家の方々をインタビューさせていただきました。今年度は、「Tongali」を運営している方々に焦点を当て、東海地区5大学のTongali運営事務局を取材します。最後となる第5弾は名古屋工業大学です。名古屋工業大学でTongaliプロジェクトを担当する矢野 卓真(やの たくま)氏、藤岡 正剛(ふじおか まさたけ)氏にお話を伺いました。

Tongaliプロジェクトとは

Tongaliプロジェクトとは、学部生・大学院生を中心に次世代の起業家を育成・支援する多面的なプログラムを提供する団体です。東海地区の大学による協働で運営されており、プロジェクトを通して東海地区の産業の活性化、雇用の創出に貢献するとともに、グローバルなイノベーションエコシステムの構築に取り組んでいます。

TongaliプロジェクトHP:https://tongali.net/

名古屋工業大学について

名古屋工業大学は中部地域発の官立高等教育機関として設立され、国内の主要産業の集積地にある工科系国立大学です。基本使命「ものづくり」「ひとづくり」「未来づくり」を掲げており、「生命・応用化学科」「物理工学科」「電気・機械工学科」「情報工学科」「社会工学科」の5つの学科と6年一貫教育の「創造工学教育課程」を持つ工学部、大学院・工学研究科から構成されます。2022年4月からは新たに夜間教育を主とした「基幹工学教育課程」を設置するなど、革新的な学術・技術の創造、個性豊かな人材育成、未来社会の実現に向けて取り組んでいます。

名古屋工業大学 HP:https://www.nitech.ac.jp/

プロフィール

矢野 卓真(やの たくま)(写真右)
名古屋工業大学 准教授・博士(工学)
産学官金連携機構

藤岡 正剛(ふじおか まさたけ)(写真左)
名古屋工業大学 研究支援課

インタビュアー
齋藤 剛(さいとう つよし)

学生たちに選択肢の幅を増やす経験を

齋藤:矢野さん、藤岡さんは名古屋工業大学でTongaliプロジェクトが発足された当時から携わられていたとお聞きしましたが、当時はどのような思いで取り組まれていたのでしょうか。

藤岡:学生に将来の選択肢を増やしてあげることが始めた理由の一つでした。いわゆる既定路線の将来以外を知る機会を増やしてあげたいと思ったんです。

私自身、社会経験の中でよくある進路選択が全てではないことや働いている会社に何かあった時に自分はどうしたらいいのか、考えさせられることがありました。自分が今まで培ってきたことが今後も本当に活かされるのか、正しいのかということをその時に見直さなければならなくなります。

したがって、学生のうちに多様なことを学ぶと同時に視野を広げてから社会に出ることは、社会の荒波のなかで生き残る人間になれるかどうかを左右すると思います。一度会社に入ってしまうと、どうしても視野が狭まってしまいます。会社にはミッションがあり、その使命のもと、仕事に注力することになりますが、自由で柔軟な学生のうちに起業に関する知識や経験を持っておくことは非常に価値があると思います。


矢野:Tongaliプロジェクトに取り組み始める時に感じていた課題は、大学の研究技術の実用化がなかなかされていないことでした。大学では共同研究という形で企業に大学の研究技術を使ってもらうというパターンが多くあります。ただ、共同研究していてもなかなか大学の技術が組み込まれた製品は世の中に出ていかないんですよ。

その理由は大学側の研究と実用化までのギャップが大きいことや、研究成果と市場ニーズのギャップによる方針転換などが考えられます。途中で共同研究が終わってしまうケースも結構あります。世の中に名工大の技術を取り入れた製品をたくさん出していこうと思うと、共同研究を推進するだけでは難しいことも多いです。

しかし、このTongaliプロジェクトで大学の技術を価値に繋げる学生が育つことで、思い入れがある自身の研究成果を活用し、名古屋工業大学の研究技術が取り入れられた製品を世の中に出してくれるような学生がたくさん出てくると嬉しいなと思います。

学生と起業家を繋ぐ

齋藤:お二人それぞれの思いに非常に共感いたしました。こうした思いで続けられ、現在のTongaliプロジェクトで取り組まれていることについて教えてください。

トークイベントの様子

矢野:主に二つの活動をしています。一つ目は名工大出身で起業した方をお招きした起業家と学生の対談形式のトークイベントです。”起業家育成”と言いつつ起業家をあまり身近に感じる環境ではなかったので、まずは名工大の先輩で起業して成功している人と会ってもらい、「先輩が成功しているんだったら自分にも何かできるかな」と思ってもらうことや、”起業”ってそもそもどういうものかわかるように直接学生が質問して答えてもらうトークイベントをしています。

2017年から現在までで18回、大体年間で5回くらい開催しています。

参加するのは名工大の学生だけではなく、他の大学の学生や企業の方、また、どこから情報を得たのかわかりませんが高校生の参加が増えてきています。

最近はコロナウイルス感染症対策もありWeb形式で開催する頻度が高いです。そのため東海地域以外の学生、例えば関西の大学、関東の大学といった学生も参加してくれています。

齋藤:現場の臨場感も大事ですが、参加のしやすさという点で学生が知るきっかけになりますね。

矢野:トークイベントの良いところは起業家と学生が出会えることに限らず、学生と学生が出会う場にもなるところです。直接会って、話して、感じるところは間違いなくありますが、今まで参加できなかった人たちがWebを通じて参加するということもできるので、今まで会わなかった学生同士が繋がりを作る良い機会となっています。

アイデア事業化合宿の様子

齋藤:二つ目の活動はなんでしょう。

矢野:ビジネスプランを書き上げるような合宿形式のイベントを開催しています。3日間の合宿を通じてアイデアを練り上げてビジネスプランを仕上げ、最終日にピッチコンテストのような形で発表を行います。

藤岡:アイデアソンを拡張したような形式です。面白いアイデアを持っている人を募集し、そのアイデアをいかにビジネスとして成り立たせるかを3日間ぐらいの合宿で、ひたすら考え抜くイベントです。

アイデアがある学生が参加することはもちろんですが、それに加えて、アイデアはないけれど興味がある学生、単純に何かに挑戦・体験をしてみたい学生も募集しており学生のハードルは下げています。この人たちはアイデアを持っている学生とチームを組み、そのアイデアをどうしたらビジネスとして上手くいくかを考えていきます。

合宿で初めて会う学生もいれば、前述のトークイベントで出会いを作りチームを組んで参加する学生もいます。二つの活動を通じて、着実に学生同士の輪が広がってきている感覚がありますね。

メンターのアドバイスをもらいながら、チームビルディングやアイデアのブラッシュアップ、プレゼンの場を体験してもらいます。合宿なので本当に夜遅くまでひたすら考え抜いていて最終日にはみんなクタクタになっていますが、その経験も含めて成長の糧として欲しいと思っています。

齋藤:メンターはどのような方が行っていますか。

藤岡:名古屋工業大学で常日頃から学生のメンタリングをされてる企業サポーターの方たちがいます。いつもイベントでは審査員をしてくださいます。周辺で起業されている方が多いですね。

実はこの起業家の方々も元は名工大卒の人もいます。実際にTongaliプロジェクト初期の頃の参加メンバーだった学生も何人かいて、先輩として学生のサポートをしてくれています。

今の学生を応援してくれて、質問に答えたり、相談にのったり、学生と起業家でいい関係が構築されていると思います。

学生と社会の循環を整えたい

名古屋工業大学シェアスペース「NaSH」

齋藤:先ほどのお話にもありましたが、Tongaliで様々な経験をされ起業された方が今度は教育側として名工大と関わるという素敵な循環が生まれていますね。

矢野:そうですね。大学内に”起業同好会”といわれる集まりもあり学生が上手く循環していて、卒業した学生が今度はサポートする立場になっています。学生たちだけで次の世代、次の世代へと繋がっています。

サポートしてくれる方は東海地区にアントレプレナーシップ・ベンチャーの枠組みを作りたいという思いが強いです。こうしたコミュニティが形成されることでもっといい環境が整備されるのではないかと思っています。

齋藤:環境が整備されれば名古屋工業大学の技術がより世の中に活用されていきますね。

藤岡:名古屋工業大学の特徴として、工学全ての分野を持っていますので、基本的にはものづくりに関心を持つ学生が多いです。ただ経営に興味ある人が少ないことが課題です。一方で、自分たちが技術を使って、ある技術の最高責任者になることにはみんな興味を持っています。

実際に起業している学生たちを見ても名工大の学生は自分が代表になるというよりかは、誰かに経営を任せて自分は技術責任者として携わるケースがよくあります。そういう意味ではTongaliプロジェクトで5大学と組んでいることは非常によく、他大学の学生と出会うことで、お互いの得意分野を生かす形で、共同で起業することができます

名古屋工業大学内の循環とTongaliプロジェクトを通じた循環、二つがうまく組み合わさって学生支援ができると嬉しいです。

齋藤:最後に、Tongaliプロジェクトに興味を持っている学生に向けてメッセージをお願いいたします。

矢野:世の中を変えるようなことは一人ではなかなかできないと思います。Tongaliプロジェクトやそのほかにある様々なイベントで、「新しいことをしたい」「世の中を変えるようなことをしたい」と思っている大学の学生に出会うことがあると思います。

一緒に実現する仲間を見つけるために、ぜひ今後、一度、Tongaliのイベントに参加して欲しいと思っています。他大学の学生でも大歓迎です。

藤岡:まずは、一歩歩み寄って欲しい、一歩進んでほしい、と思います。「興味がある」「興味がない」は関係なしに一度体験してみてください。

おそらく参加すること自体にハードルがあると思いますが、そこを一歩乗り越えて、一度参加してみて欲しいです。

勿論、合う合わないはあるので、判断はそのあとしていただければと思います。
こんな機会があるよ、と伝えたいです。

編集部コメント

起業家というと経営者になるイメージが強いですが、技術責任者(いわゆるCTO)として、代表とタッグを組んだ起業という考え方に気付かされました。起業家は「世の中に何かをしたい」と思う人々がそれぞれの強みを活かし、ある人は経営を、ある人は技術力をうまく揃えてチームとなることが大切なんだなとインタビューを通じて感じました。今回記事にさせていただいた他にも、矢野さん、藤岡さんがTongali発足当初の苦労話などお聞きしましたが、今その思いが紡がれて学生に伝わっていることと思います。

▼名古屋工業大学ホームページ

▼Tongaliプロジェクトホームページ

併せて読みたい

今年度のNagoya Startup Newsでは、東海地区5大学のTongali運営事務局を取材します。これまで取材した運営事務局の記事もぜひご覧ください。

▼名古屋大学編

▼岐阜大学編

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