電気設備工事を手掛ける株式会社セイクン(本社:名古屋市、代表取締役:上野晃氏、 以下:セイクン)は、石川県において冬季雷の被害から電子機器を保護するための共同実験設備を完成させました。2021年から続けているこの実験は、雷研究で知られる中部大学の山本教授や避雷器メーカー株式会社昭電と協力し、高さ30メートルを超える鉄塔を使用した実証実験を通じて、雷サージ対策の効果を検証するものです。
セイクンは、2021年から石川県後高山で冬季雷による誘導雷対策の実験を開始しました。日本海沿岸は世界的にも珍しい冬季雷が発生する地域であり、この雷は通常の夏季雷に比べてエネルギーが非常に大きいことから、その対策が急務とされています。セイクンは当初、コンクリート柱に避雷器(SPD)を設置し、電子機器を保護する実験を行いましたが、実際にはカメラやセンサーが雷サージにより故障し、十分なデータを取得できませんでした。この結果を受けて、より精密な実験を行うために、新たな実験設備の構築が求められました。
2023年8月、セイクンは後高山に高さ30メートルを超える鉄塔を建設しました。この鉄塔には、フランクリンロッド避雷針を設置し、より高精度な雷サージ対策の検証が可能となるように環境を整えました。加えて、独自に開発した「自動電源抜き差し装置」を導入し、雷雲接近時に自動で電子機器の電源を切る仕組みを組み込みました。これにより、雷サージからの保護を強化し、過去の実験で得られなかったデータの収集を目指します。
中部大学と昭電が共同で支える雷サージ対策実験の全貌
この新たな実験設備において、セイクンは雷研究の第一人者である中部大学の山本教授と、国内最大手の避雷器メーカーである株式会社昭電と共同で実験を進めています。山本教授は、実験の設計と施工が正確に行われているかを監修し、取得したデータの詳細な分析を担当します。また、株式会社昭電の技術者は、同社の避雷器が実験環境に正しく設置され、雷サージからの効果的な保護ができるかどうかを確認しています。
さらに、セイクンが開発した「自動電源抜き差し装置」は、鉄塔に設置された雷センサーが雷雲を検知すると、自動で電子機器の電源を切り、雷雲が去った後に再び電源を入れる仕組みを持っています。この装置により、雷サージが電源線を通じて電子機器に侵入するリスクを大幅に減少させることが期待されています。また、この装置は記録機能も備えており、雷が発生したタイミングや装置の稼働状況をデータとして保存し、今後の雷サージ対策の精度を高めるための重要な資料となります。
セイクンは、これまで避雷針工事により直撃雷からの保護を行ってきましたが、今回の実験を通じて、直撃雷と誘導雷の両方に対するトータルプロテクトを実現し、建物や電子機器を全方位的に保護する体制を整えることを目指しています。この実験が成功すれば、冬季雷の特徴を詳細に解明し、今後の雷サージ対策技術の飛躍的な向上に寄与することが期待されています。
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