静岡大学グリーン科学技術研究所の間瀬暢之教授(研究当時、現:特別栄誉教授)が率いる研究グループは、同大学で発見されたフェアリー化合物の工業的生産を目指した新しい合成法を開発しました。この研究には、河岸洋和教授(現:特別栄誉教授)も参加し、ファインバブル技術を活用することで、より効率的かつ環境に優しいグリーンものづくりが実現されました。
今回の研究では、安価な原料を使用し、フェアリー化合物の短段階合成に成功しました。従来の方法と比較して、反応時間を大幅に短縮し、通算収率を47%にまで向上させました。この成功の鍵となったのは、研究チームが独自に開発したファインバブル技術です。この技術を活用することで、ワンポット還元・環化反応が可能となり、不安定とされていた中間体4-ジアゾ-4H-イミダゾール-5-カルボキサミド(DICA)を固体として安定的に単離することができました。
さらに、ヨウ素系触媒を使用した新しい分子内環化反応手法も開発され、反応時間をわずか13分に短縮することができました。この手法により、高効率でのフェアリー化合物の合成が可能となり、実験室スケールでの研究を工業生産へと移行させる大きな一歩となりました。
環境負荷を低減しながらの効率的なフェアリー化合物合成
静岡大学で発見されたフェアリー化合物は、植物のストレス耐性を向上させることで農作物の増収に寄与することが知られています。この化合物の社会実用化は、持続可能な農業への大きな貢献が期待されています。今回の研究では、従来の多段階工程や高毒性物質を使用する方法から脱却し、短段階で効率的な合成手法を確立しました。これにより、環境負荷を低減しながら、実用化に向けた大きな進展が見込まれます。
研究成果は、2024年5月7日にRoyal Society of Chemistryが発行する「Organic & Biomolecular Chemistry」に掲載され、表紙を飾りました。間瀬教授は「静岡で見つかった化合物を、静岡で構築した合成手法で世界に貢献することを夢見ています」とコメントしています。今後、静岡大学はこの研究成果を基に、実用化と産業界への技術移転を積極的に行い、持続可能な農業の推進に寄与することを目指しています。
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