2021年9月2日、有機ミニトマトの生産と、その栽培自動化のためのシステム開発をおこなうスタートアップ企業、株式会社トクイテン(本社:名古屋市中村区)が設立されたと発表されました。今回は、有機農業とロボットの掛け合わせで、これから日本の農業分野に大きな影響を与えることが期待される同社について特集していきます。
株式会社トクイテン
株式会社トクイテンは愛知と東京を拠点として、有機ミニトマトの生産と、その栽培自動化のためのシステム開発をおこなうスタートアップ企業。特にAIとロボットの分野を強みとしており、それらで農業の自動化や有機農業の展開、美味しさと収穫量を両立させられるスマート農業を進め、「持続可能な農業の実現」に取り組んでいます。
設立の経緯
株式会社トクイテンの代表取締役である豊吉隆一郎氏は同社を設立する以前、株式会社Misocaを立ち上げています。クラウド請求管理サービス「Misoca(ミソカ)」は20万事業者以上が登録するまでに成長。同サービスの売却後、同氏は農業のシステム化に関わる機会を得たことで、農業におけるIT化の遅れを実感します。その後1年間、農業大学校の社会人研修コースに通い、農業や植物生理学の基礎を学ぶうち「今後の有機農業と農業効率化というテーマは何年かけてでも取り組みべき課題」という確信がトクイテンの創業につながったとのことです。
有機農業の意義と、実現に向けた取り組み
有機農業に代表される循環型農業に関しては、近年日本政府も具体的な取り組みに乗り出しています。農林水産省は2021年5月12日に「みどりの食料システム戦略」を策定。同戦略は将来に渡って食料の安定供給を図るため、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現しようとするものです。また、7月1日には環境バイオマス政策課が発足し、みどりの食糧システム戦略における司令塔の役割を担うなど、体制が確立されました。
このように同社の事業は、日本が本腰を入れて取り組もうとしている食料政策の観点からみても、近年の社会的ニーズを的確に捉えています。直近では無人搬送車(AGV『Automatic Guided Vehicle』)をベースとして、運搬ロボットや農薬噴霧ロボットの開発を始めており、今後に関しては愛知県知多市にて農地購入を進め、栽培施設の建設を予定しています。
前述の通り、ロボット技術に強みを持つ同社ですが、現時点ではロボットを単体で販売する計画はないとのことです。その理由は、施設やソフトウェアを含めた農業をおこなう環境全体を最適化していくことが未来の農業を実現することになる、と考えているから。決して目先の利益を追うのではなく、社会に対してポジティブなインパクトを与える姿勢を大切にする株式会社トクイテンは、名古屋において今後の動向から目が離せないベンチャー企業の一つです。
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